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第9話
「お前しつこいよな」
いくらなじってもへこたれない笠井にうんざりしていた。あれから1カ月。纏わりつくようについてくる。まともに岳にも触れられず、イライラMAXだってーの。
「だってどうしても君を俺のものにしたいから」
ニコニコ笑ってるけど、目が笑ってないんだよ。
こえーよ・・・
厄介な奴に手を出してしまったと思い切り後悔した。
それより1カ月もメッセージだけでやりとりしている岳が気になる。やっと岳の気持ちがわかって、通じ合えたのに。呆れられて離れていかないか内心は心配で心配で仕方がない。
俺から岳が離れていくなんて・・・他の奴を好きになって、あの綺麗な身体を独り占めする奴がいると思ったら・・・気が狂いそうだ。
メッセージを知らせるバイブが震える。慌ててスマホを取り出して周りを確認した。
笠井はいない・・・な。妙に岳に絡みたがるから、気が気じゃない。
画面をタップする。
『石井と飯食ってくる。遅くなっても行くから』
石井と出かける?あいつは笠井のダチだろうが!要注意だって言ったのに。
でも・・・
『遅くなっても行くから』
遅くなってもくる・・・遅くなってもくる!!
岳が!
うわぁ・・・
テンション上がったぁ〜ってガッツポーズに気が付いた笠井が駆け寄ってくる。
「なんかいいことあったの?」
「いや、別に」
「・・・ふーん」
含みのある感じだったけど、深く突っ込んでこなかった。
しかしその夜、何度も何度もスマホを確認していたが、岳からの連絡はなかった。
「大丈夫?赤井君」
頬をペチペチと叩かれてる。ぼんやり目を開けると覗き込んでる石井と目が合った。
「い・・・しい?」
「そうだよ、赤井君酔い潰れちゃったから俺の部屋に連れてきたんだ。」
結局、石井の部屋に来てしまったのか・・・
そんなに飲んだ覚えがない。俺は・・ザルなんだけどな・・・
それにしては思考が戻らない・・・どうしたもんかとぼんやりと考えた。
「あれ?赤井君、酔っ払いさんなんだ?」
石井の横から顔を覗かせたのは・・・笠井・・・
俺・・・ヤバイんじゃないの?
よろよろと壁際に這うように逃げる。行き止まりに逃げてどうするんだと考えながら、それでも逃げた。
「まだ動かないほうがいんじゃない?あ!動けないの間違いだった」
ニタニタと気味悪く笑う笠井。ベッドに膝を掛け、逃げた俺にすり寄ってくる。顎をガシっと掴まれて至近距離で目を合わせた。
「俺さ、どうしても悠人が欲しいんだ?・・でもさ、悠人は赤井君が好きでしょう?君を粉々にしたいくらい消したいんだよね?・・・そんなことをしたら俺は犯罪者になっちゃうし?・・だから赤井君の心を粉々にしちゃおうと思って。2度と悠人が近付かないように、君も近付けないようにね」
笑顔なのに目が笑ってない・・・怖いんだけど。
「俺さ、悠人と寝たじゃん、もうすごいテクだし、気持ちいいし、俺好みのイケメンだしね?、それなのに、エッチしたことさえ覚えてなくて、足蹴にとっとと帰れ!って言いやがったんだよ、俺にだよ?あり得ない・・・あり得ないんだよ!!」
俺の上に跨って更に壁へと追い詰める。
「君さ、悠人が他の奴と遊んでても何も言わない寛大な恋人なんだってね。自分が一番だとか思って図に乗ってるんでしょう?いけ好かない奴だよね?、何だか、すごーくムカつくんだよね?」
長い指が首に添えられてグッと力がこもる。
「殺したいわ、君。俺に負けずと綺麗な顔しちゃって、ぐちゃぐちゃにしたいわぁ」
更に手に力がこもり首が締まる。
ケホッケホッと咳き込んだ。こいつ、ヤバイ奴だよ・・・どうしてこういう奴に手を出すかな・・・バカ悠人!
「石井にさ、いっぱい可愛がってもらいな。君のエロ動画もいっぱい撮ってあげるからね?」
テーブルに置いてあったビデオカメラを持ち上げて見せびらかすように見せた。
悠人の奴・・・
最低だな。そのとばっちりが俺に向いてるし。
手首をベッドに繋がれ。シャツを引き裂かれジーンズとパンツを一緒に脱がされて、両膝を折って縛られた。下半身丸出しになるようにガバッと開かれる。
「これが噂のお母様に切られたっていうチンポ?可愛い〜」
俺のペニスを掴んで引っ張った。
「これじゃ女の子には使えないよね〜、だからここで咥えこんじゃってるんだ〜」
手にしているローションのチューブの先を後孔の入り口をグリグリと押し込もうとする。
何も濡らされてないところに押し込めようたって入るわけがない。違和感と痛みが走って顔を歪めた。
「ごめんね〜、痛かった?悠人には優しくほぐしてもらって入れてもらってるのにね〜俺、そんなに優しくないからさーごめんね〜」
上から見下ろして嫌味な顔で言い放つ。綺麗な顔してるのに勿体無いな・・・
カチッと蓋を開けて高い位置からタラーっとローションを落とした。ひんやり冷たくてビクっと身体が揺れる。
「赤井君、さっきから何も言わないけど・・・怒ってるの?怖い?大丈夫?」
おちゃらけた言い方で俺を煽ってくる。そんなことで逆上したりなんかしない。
そう俺は意外にも冷静だった。確かにヤられるんだろうとは・・わかってる。
この状況だし。でも、初めてなわけでもないし。
それに、悠人の馬鹿さ加減と笠井に対しての哀れみしかなかった。そう、哀れんでる。
こいつ歪みきっちゃってかわいそうに。
それと。
俺を傷つけて悠人への恨みを晴らせるならそれはそれでいいかと思った。
悠人が傷つかないならどんなことだって・・・受けて立つよ。
だから、何だって受け入れる。
親に性器を切られてしまった痛みより、痛いものなんてないだろう。
なんて、痛かった記憶なんてないけど。悠人に手を出して傷つけないなら・・・なんだっていい。
俺はまっすぐに笠井を見て煽るようににっこりと笑った。
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