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第11話
ドアを閉めエレベーターへと向かって歩き出す。
俺を抱えたまま。
ズルっと・・・石井が中で出したものが降りてくる。
「悠人・・・降ろして・・・」
チラリと見て、でも降ろす気配はなくエレベーターのボタンを押した。
服が汚れるから・・・降ろして欲しい。口に出してしまえばすんなり降ろしてくれるだろう。
でも、もっと嫌な思いをさせてしまう。
笠井と石井を殺さないだけ、悠人に理性があって良かった。レイプされた同性の恋人の、犯人を殺したなんて・・・ワイドショーを賑わしてしまう内容じゃないか。
そんな馬鹿げたことを考えてる最中に“チン”っと階を伝える音が鳴り響いた。
何も話さない悠人の思ってることが手に取るようにわかる。だってそれだけ俺達は一緒に生きてきたんだ。
最初の一言目は俺から話したほうがいんだろうな・・・そんなことより中から流れ出てくるものが気持ち悪くてしかたがない。
首に回した手に力を込めた。
「悠人、中から・・・気持ち悪いから・・・降ろして」
最初の言葉がこんなんでゴメン。ストンと足を降ろして立たせてくれた。
「が、我慢出来る?」
「うん、とりあえずうちに帰りたい」
早く帰ってシャワーを浴びて、中のものをかき出して、身体中洗ってスッキリしたい。
それに・・・今日は悠人といたくない。他の人に抱かれてすぐに・・・なんてどんな顔していいのかわからないし、何を話していいかわからない。
大通りまで出てタクシーを捕まえる。右手を上げて止める悠人の左手は俺の手をしっかり握り締めている。離す気は・・・ないよな・・・
ドアの開いたタクシーに悠人が先に乗り込み着ていたジャケットをシートに敷いてくれた。
躊躇いながらその上に座る。少し身体をずらして。
場所を告げたのは悠人のマンション。
「俺、家に帰りたいんだけど」
繋がれた手に力が篭って一瞬目を合わせて、逸らす。
「このまま家には返せないよ・・・そばにいたい」
最後のほうは消えてしまいそうな声で息を漏らすように囁いた。悠人の膝に置かれた手の甲にポタポタと雫が落ちてくる。
見上げると見たこともないクシャクシャの顔で声を殺して泣いていた。
「悠人・・・・・・」
「ゴメン・・・ゴメンな・・・岳・・・」
俺、間違ってた?
悠人が傷つかないなら、なんだって受け入れようと思った。俺が傷つけば悠人も傷つくんだってこと深く考えていなかったかも・・・
「俺こそ、ゴメン・・・」
「なんで、岳が謝んの?俺が笠井なんかに手を出さなければ岳はこんな目に合わなかった・・・」
確かにそうだけど・・・
でも、本当のレイプならもっとすざまじいと思う。笠井も石井も、本気で俺をレイプしようとしたわけじゃない。だから、石井は優しく俺を抱いたんだ。
笠井も、方向性を間違えただけで暴行ってほどのことはしていない。
ただ、俺と悠人を離したかっただけだ。
告げた行き先にタクシーが止まった。金を払い、先に降りた悠人が俺の方に回った。
俺の手を取り、敷いたジャケットを取った。また、手を取って悠人のマンションに入ってく。
いつもとは全然違うゆっくりな歩幅で歩いてくれて、それがまた胸を締め付けた。
カードを差し込み、ドア開くとチラッと俺の顔を見て引っ張るようにして俺を押し込んだ。
靴も脱ぎ散らかしたままズンズンと洗面所に行き風呂の扉を開く。
栓を開け、振り返ると俺を脱がし始めた。
「ゆ、悠人!いいから!自分でするから!」
目は合わせ、口をパクつかせるくせに話そうとはしない。
結局、全裸にさせられ自分も全裸なって・・・手を繋いで風呂に入った。立ったまま勢いよくシャワーをかけられ、頭から洗われていく。
されるがまま俺は目を閉じた。今の悠人はきっとやりきれない思いで歪んだ顔をしてる。
でも、俺の瞼の裏にはいつも笑ってる悠人の顔が浮かんでくるんだ。
首筋で止まる悠人の手。指先が何かをなぞってる。
跡か何かだあるんだと想像出来る。再び再開されたスポンジが円を描くように体を滑っていく。
「岳・・・ちょっとだけ我慢してな」
スポンジからの泡を絞って後孔に指が触れた。ビクっと身体が揺れる。
少し前まで咥えこんでたところにまた入ってこようとするものを取り込もうとしてヒクついてるのがわかる。
媚薬・・まだ残ってるのかな・・・
「岳・・・俺に身体洗ってもらって感じてる?それとも石井に抱かれて感じてた余韻?」
後ろから抱き込まれて前を擦られる。ゆっくり立ち上がってるのもわかってた。
「乳首だってぷっくり立ってるし・・・」
さっきまでレイプ紛いの行為をされてたのに触られて感じてる。
「び、媚薬を嗅がされてて・・・まだ効いてるっぽい」
もたれかかり悠人の肩に頭を預けた。きつくきつく抱きしめてくれるその力と悠人の気持ちが伝わってきて胸が詰まった。
「媚薬?」
「なんか嗅がされて・・・・身体まだ熱っぽい」
「岳・・・岳っ・・・!」
肩に顎を乗せた悠人の髪が頬に当たる。小刻みに震えている髪をそっと撫でた。
「俺さ・・・初めて悠人が他の奴とヤッたって知った時、結構泣いたんだよ・・・もう俺の悠人じゃないって思った。もう悠人の隣にいるのは俺じゃないんだって」
髪に唇を寄せる。悠人の匂いを思いっきり吸い込んだ。身体いっぱいに悠人が広がっていく。満たされていく・・・染み込んでいくのを感じてた。
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