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第13話

「信じてくれって言っても、岳は俺の気持ち疑う?」 「そんな言い方・・・」 好きだから、いつだって信じていたいよ・・・でも・・ 「信じて」 「悠人・・・」 「昨日、来るって言ったのに来ないし。飲みに行った店、叔父さんの店にしたのってなんかありそうだったからだろ?電話もらって石井の家かたっぱしから聞いて・・・俺の所為で岳に・・・って思ったら、居ても立っても居られなくて・・・」 そう、石井に誘われた時、悠人の叔父さんの店にしたんだ。警戒してたわけじゃないけど、石井と笠井は仲良いことは知ってたし。 笠井が悠人のことで躍起になってたのも知ってる。 急に俺に絡んできた石井を警戒していたと思う。 「こんなに岳が好きなのに、なんで他の奴なんて・・馬鹿だったよ、本当にごめん。こんな目に合わせて・・・どのツラ下げてって思うかもしれないけど・・・岳・・・俺といて?どこにも行かないで」 跪いて縋りついてくる悠人を見つめた。 こんな弱気な悠人を見るのは始めてだ。 いつも俺様なのに。 でも、いつも俺を一番に考えてくれること。 悠人が俺を大切に思ってくれてることはわかってる。 でも・・・ 「いいの?俺・・・他の人とシたんだよ。嫌じゃないの?」 腰に擦りつく悠人の髪を撫でる。少し硬くて癖のない髪。この髪を掻き上げる悠人の仕草が好きなんだ。 グイっと力任せに引っ張られ、バランスを崩して元いたベッドに座り込んだ。痛いほど肩を掴まれた。向かい合う目の前には見た事もない焦り顔の悠人。 「もう一度、始めないか?俺のことも岳のことも・・・リセットして初めから」 「リセット?」 「うん、純粋に岳が告ってくれた頃と同じ気持ちになってやり直したい」 「悠人?・・・」 「あの時に戻ってまた大好きな岳と始めたい。始めさせて?」 何言ってるの?今までのことをなかったことにするの? そんなこと・・・出来るわけないじゃない・・・自分のしたことをなかったことにしてまた俺とやり直す?・・・・そんな風にしか聞こえないよ? プチン・・・っと、俺の中の何かが弾けた・・・ 「俺が・・・どれだけ苦しんだか・・・それをリセットなんて出来ないよ」 さっきまで抱いてくれなかったことが悲しかったのに・・・今は悔しくて涙が伝う。 こんなにも悠人のことで翻弄されてるのに、まだ、俺・・・ 「俺は岳がいいんだ!お願いだから俺といてよ!」 「じゃあ、悠人はあの下手なセックスをしてた時に戻れるの?・・・・都合のいいこと言うなよ! 俺は悠人しか見てこなかったんだよずっとそばに居たんだよ?こんなことがあったって悠人を恨んでなんかいない!単に運が悪かっただけだし!石井は優しく抱いてくれた!レイプ紛いだったかもしれないけど、俺はレイプなんかされてないし!」 悔しくて・・・軽率な言葉に腹を立ててるのに・・・ 「違うよ!岳!岳が俺以外のヤツとシて、俺が嫌がってるって思ったんだろ? だったら、リセットしてもう一度やり直そうって言ってるんだ!」 そんな簡単に・・・・・ 「悠人の言ってることは、都合よく聞こえる。 自分がしてきたことをなかったことにして、一度の石井とのことと天秤にかけてる。 俺がずっと我慢してきたことは消えないんだよ。 それでも、悠人が俺のところに帰ってきてくれるなら・・・ 帰ってきた悠人は俺のものだから・・・ 他の誰かを抱いても・・・我慢出来たんだ・・・笠井とヤったって聞いた時、羨ましかった・・・悠人に抱いてもらえて・・・でも、悠人は俺を大事にしてくれるから、辛くても、好きだから・・・我慢出来たんだ。 忘れるなんて出来ない!そんなのずるい・・・」 「岳・・・」 「岳、おまえ・・笠井を羨ましいって思ったの?」 あ・・・勢いで言ってしまった・・・ 「なんで・・・・笠井を羨ましがるんだよ! あいつも他のヤツらもヤるだけの相手だって言っただろ?岳とは全然違う!・・・」 「それでも!・・・ヤるだけでも、この腕に誰かを抱いて・・・俺はっ・・・こんなに悠人が好きなのにっ・・抱いても・・・もらえない・・・っ・・・そいつら以下じゃんって・・・!」 嗚咽と重なってうまく話せなくて。大きく息を吸って深呼吸を何度かした。涙が次々溢れてくるのと同じように想いが溢れてくる。 「ごめん・・・岳がそんなこと思ってたなんて思わなかった・・・いつもなら『悠人はどうしようもないな』って呆れて・・・でも、そばに居てくれるから・・・」 そうでもしなきゃ・・・ 「そうでもしなきゃ・・・諦めなきゃ・・・一緒には居られないじゃん。俺が呆れて離れたら・・・悠人の隣に違うヤツが・・・そんなの絶対嫌だ!・・・悠人の隣は・・・俺の場所なんだから・・・っ!」 痛いくらい掴まれた肩から悠人の腕が背中に回った。 「岳!ごめんな・・・俺ら、もっと思ってること話さなきゃな?ごめん!!」 こんなヤツなのに・・・でも、好きで好きで・・・悠人がいないと生きていけない・・・・ 悠人の肩に額を乗せて腰に腕を回した。 悠人・・・悠人・・・ 「岳・・・好きだよ・・・誰と寝たって満たされやしないし、気持ちだって移ったことなんてない。いつも、こいつが岳だったらって思ってた。他のヤツとヤったらもう・・・岳に触っちゃいけない気がしてた。だから、抜いてやるのも・・・躊躇ってた・・・その反面、岳に触れるのが嬉しくて・・・」 悠人の腕に力がこもる。 「馬鹿悠人・・・」 「ごめん・・・」 ゆっくりと身体が離される。悠人のぬくもりが消えて寂しい。涙腺が壊れた俺はそれさえも涙を誘う。 胸の奥がギュとなって、身体が悠人を欲しがってるのがわかる。親指で涙を拭ってくれる優しい指にも嬉しくて涙が溢れる。 悠人が欲しい。 悠人・・・悠人・・・ 「そんなもの欲しそうな顔するなよ・・・」 抱き締められた悠人の腕の中でいつもにないくらい動悸がする。なのに、冷めていくような言葉が返ってくる。 だって悠人がほしんだよ。欲しがったらダメなの?また・・・我慢しなくちゃいけない? やだよ・・・もう・・・ 「なんて顔してんの?俺を煽るなって言ってんだよ。俺が岳を欲しくないわけないじゃん」 「じゃ、なんで我慢してんだよ!」 抱き締めてるくせにになんで?悠人が大きく溜息を吐いた。・・・なんなんだよ、もう。 「岳が欲しいよ。でも、ちょっと落ち着かないと暴走しそうなんだよ」 首筋に顔を埋めてキツく抱き締める。 「悠人・・・」 「昨日さ、岳ん中指入れた時・・・蕩けてて・・誘うように絡みついてきてさ・・・これを石井にしてたかと思うと・・乱暴にしてしまいそうで・・・岳を傷付そうで・・・怖い」 そんな・・・そうか・・・入れっぱなしで何時間もいたような気がする。 最初の違和感はすぐになくなって・・・ 「じゃ、悠人がもっと蕩けさせてよ。悠人だけ・・・俺が身体開いて受け入れるの・・・悠人が欲しいのに・・・乱暴にしてもいいよ?悠人ならなんでもいい・・・もう、文句言わないから・・・」 悠人の躊躇いに待っていられなくて・・・・頬を掴んで強引にキスをした。

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