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第15話

割れ目を作ってくれた隙間に、想いと一緒に舌を差し込んだ。喉の奥で笑った気がしたけど、そんなことはどうでもいい。悠人の舌が迎えてくれたのがただ嬉しかった。 口内を追いかけ合うように悠人の舌の感触が欲しくて垂れていく唾液も無視して戯れる。 「どうした?」 優しく髪を撫でてくれる手が堪らなくて目の奥が熱くなる。もう一度、ちゃんと気持ちを伝えたい。 「悠人・・・愛してる」 「岳?」 「これからずっと一緒にいたい。ずっと一緒に居て?いっぱい思ってること話して仲良くやっていこ?」 じっと視線を合わせたまま、髪を撫でてくれる手も止まった。 「どうしよう・・・岳」 何が? 「嬉しすぎて小躍りしそうだ」 小躍り? 「茶化さないでよ。真剣に告ってるのに」 嘘・・・悠人?頬も耳もほんのり赤くなってる?身体を引き寄せられて悠人の胸にぴったり収まる。 「嬉しいよ。ありがとう。ずっと一緒にいような。岳、愛してるよ」 ぎゅーと抱きしめ返す。密着した俺の下腹に硬いものが当たる。・・・今って幸せで感動でって場面じゃない? なのに・・・仕方なく悠人の股間に手を這わせた・・・・完勃ちじゃん。まあ、こんなしっとり甘いのは・・・違うか。 「雰囲気台無し」 ワサワサを股間を揉む。びくっと身体を震わせて、大きく溜息をついた。 「しょうがないじゃん。岳を抱きしめてるんだよ?勃たないほうがおかしい」 開き直るし、まあいっか。これが俺達だもんな。 「暴走しそうな気持ちは治った?」 「可愛いな、岳」 「どこが?」 「全部」 まあ、悠人がそう思ってくれるならそれでいい。 次の日。 午前中の講義で終わった俺達はバイトのために、その前に寄り道しようと、学校を後にしようとしてた。 呼び止める声がなかったら。 「渡辺君〜」 2人して振り返ると笠井がニヤニヤと笑いながら歩いてくる。 その後ろに石井も。 「一昨日はどうも。媚薬が効いてる身体で楽しめた?」 初見は綺麗な顔してると思ったけど、なんか残念な人だよな・・性格が。いくら容姿が良くても。 選ぶセンスがない。と、隣にいる選んだやつを睨んだ。俺の視線に気がついたのか顔を向けると苦笑いをする。 「あいつとのセックスは良かった?」 「え?」 「良かったかって聞いてるの」 近付いてくる笠井を見ながら尋ねる。 「酔ってたからあんまり覚えてない」 「酔った勢い?最低・・」 「ごめん」 「まあいい。覚えてないのは好都合」 もう悠人に絡んでこないようにしないと。 そう思った矢先、笠井は縋るように悠人の腕に腕を絡め、そして指を絡め恋人繋ぎをした。 「それで?話はついた?俺に渡辺君くれるんでしょう?」 口元は笑ってるくせに目が笑ってない。あんなことして・・・まだ悠人に言い寄るとか・・・ まあ、自分が手を出したわけじゃないからな・・・それにしても図太い神経だな。 「誰が?誰に?」 同じように腕を組んで、指を絡ませた。どんな図柄だよ・・・悠人を挟んで男が2人腕を組んで指を絡めて・・・ 男3人で何やってるんだか。心の中でぼやきながら目の前の笠井を見る。 今日の俺は黙ってるわけにはいかないんだ。 「赤井君が渡辺君を俺にだよ」 ね〜って悠人の顔を覗き込む。・・・・いつまで手を繋いでんだよ。 笠井が腕を絡ませたまま悠人は俺の顔を見て優しく微笑んだ。 あ・・・悠人・・・絡んだ指に力が入ると吸い寄せられるように悠人の後頭部に手を這わせて唇を合わせた。 絡めた手は俺の腰に回されて深くキスを仕掛けてくる。ここは校門前の桜の木の横。 そんなことはどうでもいい。俺は悠人を愛してて、もう誰にもあげない。 笠井の手が緩んだのか、左手が腰に回って抱きしめてくれる。その手が嬉しくて、悠人をキツく抱きしめた。 唇を離すと蕩けそうな顔が飛び込んでくる。悠人は俺の腰をぎゅっと引き寄せた。 「笠井、酷いことをしてごめん。俺は笠井と付き合えない。俺にはこいつだけだから。笠井を傷つけたけど、俺も傷ついたよ、岳にあんなこと・・・もう、つきまとわないでくれないか」 悠人・・・ 笠井の表情がみるみる変わる。 「男同士でこいつだけとかキモいんだけど!そんなヤツいらない!」 捨て台詞を吐いて踵を返した。石井のそばを無視して通り過ぎる。その後を追わず俺達に近づいて来た。 「赤井、渡辺、酷いことをしてごめん。赤井ごめんな・・・」 申し訳なさそうに頭を下げた。 「大丈夫だよ。石井優しくしてくれたし。それに、石井も傷ついてるだろ?・・・気持ち、ちゃんと伝えた方がいいよ。今がそのタイミングじゃない?」 そう言うと石井は辛そうに「ありがとう」とまた頭を下げた。後を追うように走り出して右手を軽く上げた。

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