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第20話
俺のベッドで、俺と誰かがセックスしたのが気持ち悪くて.....
布団干してシーツ洗って消臭スプレー振ったんだ...
想像して嫉妬してこんなに泣いて...岳は俺を喜ばす天才だな...
喜んでるってわかったら怒るだろうけど。嬉しいだろ...
嫉妬して泣くなんて。こうやって感情を出して俺に向かってきてくれてる。
それが嬉しい。今まで我慢と諦めさせてきたんだと後悔してるんだ。
俺がチキンなばっかりに回り道して、もう少しで岳を失っていたかもしれないと怖くなる。諦めないでいてくれたことがとてつもなく嬉しかった。
にやけそうな顔を隠して抱きしめた岳の髪を優しく梳いた。
「岳、聞きたいんだけど...なんで石井?」
勘違いしてると思うけど、ちゃんと言葉で聞きたい。
「今朝、電話があって...笠井に告ってフラれたって....それで、俺もダメかもって思ってたから...
石井に聞いてもらってた」
おいおい、お前を犯した相手に何相談してんだよ。
「石井は、あんなことがあっても...憎めないし...友達だから....悠人が言いたいことはわかってるけど...」
歯切れの悪いもの言いが何か引っかかる。
岳?
俺の胸をグッと押して、離れようとする。
なんで?
その手に逆らって引き寄せ、強く抱きしめた。
「岳?石井となんか合った?」
「あの時、石井が・・」
あの時って石井にレイプされた時か?
「何も考えず、目を閉じて悠人のことでも考えてろって言ってくれてさ・・・」
犯してる相手を気遣ったのか?
「あいつも笠井が好きなのに・・・目の前で他の奴とヤんなきゃいけなくて・・・なんか似てると思ったんだ」
岳と石井が似てるってか?どこが!?口を挟もうと開けたと同時に岳が話す。
「好きなのにどうにもならないとことか・・・俺はわかるんだ。石井の気持ち」
話してる岳を抱きしめながら、岳が俺のことでどれだけ悩んで苦しんでいたのか胸を締め付けた。
好きでいてくれて嬉しがっている俺は呑気で呆れる。岳は好きでいるために、どれだけの思いを殺してきてくれてたんだろう。それだけ思われる価値が俺にあるんだろうか。
ただ、岳に触れるのが怖くなって他の奴とヤってまあ、楽しんでたのは確かだよ。
それをしている間、岳はどんな思いでいた?俺を見てどう思ってた?俺がその立場なら?
我慢なんてできねーよ。3年。どんな思いで俺のそばにいたんだろう。
「ごめん、岳!俺、岳、いっぱい傷つけた」
「今頃かよ・・・もう終わったことはいいよ。ここに悠人がいるんだから」
「ごめん・・・」
「だからさ、石井が次の恋愛が出来るまで応援したいし、今は慰めたいんだ」
岳は同じ思いを石井に重ねて、上手くいった自分と上手くいかなかった石井と。慰めたいのはわかるけど、おまえをいいようにした奴なんだよ?
「悠人の言いたいことはわかる、でも、しばらくは俺のやりたいようにやらせて?」
顔を上げた岳と目が合う。
「石井に気持ち移ったりしない?」
「今更だろ・・何年待って手に入れたと思ってるんだ。馬鹿悠人」
それからの岳と石井は目を見張るほどのものがあった。
大学への行き来も一緒。校内でもずっと一緒。
だけどベタベタする風でもなく、友達の距離感を保っていた。仲のいい友達って感じだ。
時折、石井が岳の腕に触れたり、岳が優しく微笑んだりしてるのは・・まあ、友達の範囲なんだろう。
何でこんなに詳しいかって・・・
そりゃ・・・俺は岳といるから。
岳といるってことは、石井ともいる訳で・・否応無しにその状況が飛び込んで来るって訳だ。
隣にいる岳を横目で見る。穏やかな顔を見せていて、きっと気持ちも安定してるんだろう。
俺とのことも順調だし?ただ、石井を受け入れている感覚はよくわかんねーけど。
それでも岳の気持ちを尊重したい。
散々、苦しめたしな・・・俺の視線に気がついたのか振り向くと優しく笑いかける。
綺麗だよな・・・モテるだろうに・・・まあ、女抱けねーしな・・
普通なら女と付き合って、結婚して。理不尽な行為が岳の一生を変えた。
俺が衝動でした行為で、違う道を開いてしまったし。何だか、運命に翻弄されてるよな・・
微笑み返してやると安心したように石井に視線を戻す。
あれから笠井は遠巻きに俺達を見ているようだった。視界に入る所にいるのは何でだ?
意外と石井のことが気になっているのかもな・・
高校からの友達らしいし。
先日、岳がそれとなく聞くと、ポツリポツリと話始めた。
高校の頃から笠井とつるんでいたらしいが石井は笠井に一目惚れでその気持ちを隠して友達を続けてきたらしい。
大学に入り、カミングアウトをして男漁りをし始めた笠井をそばでずっと見て。初めての男も、その次も、ご丁寧に報告してくれたらしい。
その頃、岳を知って俺とのことに感づいたらしい。岳が俺を見る目で。両思いなのに、俺が違う奴と寝てることを知って岳が苦しんでるのも見破ったらしい。
まあ、自分と同じ境遇ならな・・・そこで、俺が笠井に手を出したと。
それも酔った勢いで。それをまた邪険に扱ったと。
・・・最低だな・・・俺・・・笠井だけでなく、間接的に石井も傷つけたんだな・・・
まあ、そんなこと気にしてちゃぁ、恋愛は出来ないけどな。いや、恋愛じゃないな・・・
俺に惚れた笠井が岳の存在を知って、逆上して、レイプに至ったと。
でも、石井はそんな岳の気持ちを知って優しく抱いたと・・・・少なからずチョロチョロ視界に入る笠井の行動は石井のことが気になるんだろ。
「俺が渡辺に振られたから、同情で好きだなんて、友達だと思ってたのに最低!」
そんな言葉を石井に浴びせた笠井は冷静になってきっかけを伺ってるように見えるんだよな・・・
さて、どうすっかな・・・この石井の岳にべったりもそろそろ限界。
岳もなんか考えてるっぽいし・・・バイト前でも聞いてみるかな・・
そんな呑気なことを考えていた。
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