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「擦れてなないと行けない所なんだ。じゃ、どこかで擦れてくるしかないよね」
見上げた顔には表情がなく、端正な顔が冷たく見えた。
「俺も、悠人の知らないところで、経験積めば良いんだよね?」
今更どうしたって言うんだよ。一緒に暮らす前から俺はもう浮気はしてないし、遊びもしてない。
岳だけを見て、岳だけを愛してる。いや、愛してるのはずっと前からだ。
一瞬躊躇った俺を見逃してくれない岳は口角を上げた。
「これからの一生、俺は悠人だけなのに、悠人は沢山の人と経験してるって不公平だと思わない?俺だけ我慢してきた3年半があるのに、悠人はいい思いしか残ってない」
岳の中で割り切れてないのはわかってる。折り合いをつけてくれてるのも知ってる。
大学で、バイト先で、街角で。岳の知らない悪友とでも呼んだらいいのか、まやかしの仲間だった奴に合えば、岳の顔から表情はなくなる。
なるべく端的に話しても内容が内容なだけに俺も気まずいんだ。
「俺の知らないところで何しようとしてる?許すわけないだろ」
「だから、悠人の知ってる所に連れてってって言ってんじゃん」
岳に指一本触れるなんて許すわけないだろうが。
そんな俺の言葉に唇を噛み締めた岳は
「ちゃんと言ったから!俺にだって思うことは沢山あるんだよ。悠人の思い通りにはならないから!悠人が連れて行ってくれないなら1人で行くから!」
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