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「お前、俺に喧嘩売ってんのか?あ?」
立ち上がった岳の顎を鷲掴みにする。凄みを効かせて顔を近づけ、鼻先まで突き合わせて岳の瞳の中を覗いた。ゆらゆら揺れている瞳と食いしばった唇が、ヤバイくらい色っぽい。
岳は追い詰められるととんでもない程、色香を放つんだ。我慢してイライラしてる岳はほんとに綺麗でさ。
誰かに言い寄られて拒みきれなかった時とか、妙な潔癖症を遺憾なく発揮した時とか、ああ、もう。思い浮かべただけで相手は落ちる。必ず落としにかかる。岳の魅力にノック、アウトだ。
「悠人は凄くモテたって・・・俺の悠人が俺の知らないところで、どんな風にモテててたの?俺がもし口説かれて言い寄られるならそれ、見ててよ。悠人も俺と同じ思いをしてよ。俺の知らない奴が悠人のことを知ってるのは我慢出来ない。どれだけ節操なしで遊んでたんだよ・・・ムカつくんだよ」
このくだりだと、バイト先に誰かにが来て、岳に何かを吹き込んだんだな。
節操なしか。
確かに俺は普段からモテる。大学では女、そういう場所では男。だけど、どんな奴を抱いても岳じゃないんだから、虚しさと後悔が残った。
あの時、中学3年のあの日に高校生に絡まれ無我夢中で岳を抱いていたことに後悔したんだ。
ただでさえ、綺麗な顔立ちと、中性的な魅力のあった岳が大好きで俺のものにした気でいたんだ。
高校生に肩をいやらしく抱き込まれて、身体を弄られた岳を見た時、守らなきゃと思った気持ちと同時に俺の中で生まれた感情。岳を他の誰かが抱くなんて俺の手から離れて誰かのものになる、そんなことを思いもしなかった。
嫌悪感丸出しで、高校生を見上げた岳の色香に煽られて煽られて高校生が本気で落としにかかった。
魅惑の色気とでも言うのか。取り込まれる高校生と岳が怖かった。そう、俺は岳が怖かった。
岳をそんな風にしたのは紛れもなく俺だ。色香を持たせたのは俺なんだって。岳を女にしたいわけじゃない。誰かれ構わず、虜にする岳の色気に恐れた。
だったら抱かなければいい。それでも岳の隣は俺の場所だって勝手に決めて陣取った。
勝手な話だし横暴だともわかってた。歪んでいても岳から離れられなかったし、他の奴を抱いでも虚しいだけだってわかってても止めることが出来なかった。
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