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思春期特有の不安だったんだろうか。 今になっては俺自身のことなのに何をどう考えて暴走したのかさえわからない。ただ、岳と一緒にいる為に選んだことだったのに。男ってどうしようもないと、いや、俺って奴はどうしようもないのか、残念な奴だよまったく。 岳の思うままにしてやれば俺は償えるんだろうか。苦しめて悲しがらせた岳の思いを浄化させることが出来て、岳は対等になれるのか? 「いいよ、連れてく」 掴んだ顎を離して寝室へと向かう。クローゼットから、もう着ることはないと思ってた俺の勝負服を手に取った。 「悠人?」 寝室のドアに立ちすくむ岳を見れば、さっきの勢いはどこにやったのか不安そうに俺を見てる。 「連れてくよ、俺が見境なく節操なしに遊んでた場所に」 「いいの?」 「行きたいんだろ?その代わり相手はちゃんと選べよ。とんでもないプレイしたがる奴もいるから」 「それって・・・俺が他の奴とスるってこと?」 その為に行きたいんだろ?俺と同じ立場になれば俺は岳に許しを請うことが出来るんだろ?なら、我慢する。岳は俺のモノで誰にもやらないことが絶対条件だけど。 「岳には俺がいることを忘れるな。俺は遊んでても岳を大切にしてきた。何があっても優先順位は絶対に岳だったからな。相手に惚れることは許さないから」 ジャケットに袖を通し鏡を見る。情けない顔の俺がいて頬をパンっと叩いた。 「その代わり俺も相手探すよ。一晩の遊びだからな」 相手を探す気なんてサラサラない。もう岳しか抱きたくないし、岳以上の奴がいるとも思えないしな。 最後の悪あがきのつもりで言った。誰が許せる?岳は俺のモノなんだ。岳の気持ちを図るつもりの言葉だったのに。 「行くよ。連れてって」 そんな絶望的な言葉が返ってきた。

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