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15分・・・ この時間がこれ程長く感じたことがなかった。店の中が気になるし、この15分で誰かに声をかけられてどうにかなってるんじゃないかって気が気じゃなかった。気持ちは焦るし、自分の過去にイラつく。 今までどうにかしちゃってたのは自分だから。目星い奴を見つけたら必ず1度は強く見つめておく。 そして向こうから仕掛けてくるのを待っていた。そんな俺みたいな奴がいないとは限らない、いや、限っている。わんさかいる。 時計とにらめっこ。そんな可愛いもんじゃない。早く進めよ!ってガン飛ばして睨みつけていた。 律儀な俺は15分きっかりに早足で駆けてく。わずか数メートルに焦らされて、狭い階段にイラついて、重いドアにキレそうになった。 でも、飄々とした雰囲気を作り纏って戦闘体制を無意識に作ってしまう。 自分を作ろうとする様に溜息を吐いた。こんな時まで繕う自分に。 重いドア押しやって薄暗い店内に入る。急いで岳の姿を探して見回した。 カウンターでニコニコ笑う岳を発見、がしかし、ハイエナが身を乗り出すように両脇を固めている。 その姿を目で追いながら壁際のソファに座った。できるだけ、岳と彼奴らの会話が聞こえそうな場所に。 「悠人、久しぶりじゃん、新しい男出来たって聞いたよ?」 擦り寄るように隣に座る奴。こいつとはよく会ってたし、タチのくせに俺には抱かれたいって言ってた男。結局、そんなことは起こらなかったけど。 「新入り君にみんな食いつきすぎだよね」 顎で指す岳への視線に興味なさそうにタバコに火をつけた。マスターまでいつもにない笑顔で岳をみる。イライラをフィルターを噛み締めてやり過ごす。 「最近ご無沙汰だからメンツ変わったな」 紛らわす為に吐いた言葉をそいつが笑う。 「良い子いるよ、紹介しようか?」 返事を待つこともなく手招きをする。それを合図に、待ってましたと言うようにいそいそと小柄な男が近寄って俺のそばに座った。

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