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綺麗な誰か。覚えてもいない奴を選んだ様子を見て、羨ましくてこうやって告白のように俺に言い寄って願ってるのか。
加減な代償はここにもあったってわけか。
知らない奴を抱いた後、そんな俺を見て辛くて泣いた顔を何度も見てきた。なんで俺じゃダメなのかって縋って泣く岳を何度も何度も抱きしめてキスをしてきた。
もう後戻りは出来なくて、それでも岳を愛していて。それを耐えさせた3年半。
何を意固地になっていたのか自分自身がわからないでいる。岳を抱けば何かが壊れていきそうで怖かった。そう、怖かったんだ。
腕の中で泣く岳を抱き締めるとこの上なく幸せで満ち足りた高揚感を得られて、こいつは俺のモノだから何してもいいって傲慢な自分がいた。
それは岳が俺を愛していてくれたから成り立っていたんだって今ならわかる。岳が誰かに抱かれて、石井の時とは違う同意の行為がこの先起こる怖さが身体全部を覆ってくる。
遊びの代償はこんな形で俺を苦しめてくる。
「ごめん、君とはどうこうしようって気にはなれない。ここにきたのもちょっとした理由があるんだ。だから諦めて。もっと君を想ってくれる人と初めてはシたほうがいい。俺は相応しくないよ」
俺の横顔を見つめてくる瞳から溢れる涙を袖口で拭った。
「今日は他の誰かと遊ぶ為にきたんですよね?だったら俺にしてください。ずっと待ってたんです。一度だけでい いです。抱いてもらえませんか?」
他の誰かと遊ぶ為に来たわけじゃないんだけど。岳が来たいから連れて来ただけで・・・あ・・
その時、俺は岳に仕掛けられたこの状況にピン!っと思いついたんだ。
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