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今の状況って、他から見れば俺と岳は知り合いでも何もない。ってことは、俺が岳に声をかけてもいいってことじゃないのか? 俺の目の前で楽しそうに会話を楽しんでる彼奴を俺がナンパしてもいいってわけだよな。 そんなことをしたら岳は怒るかもしれない。ここに来たのは俺にナンパされに来たわけじゃないだろうし。 でも、岳が誰かとどうかなると思うだけで、俺がどうにかなりそうだ。 「悠人君、遊んでやりなよ。それとも、気になる奴いるわけ?」 俺の視線で何かを感じたのか耳元で話しかける。気になる奴と来たんだけどな。気になる奴は公然の浮気寸前なんだけど。 誰に声をかけようが俺の自由だし、気になる奴は彼奴しかいない。 隣に座る棗とやらが腕を絡めてきたって肩先に頭を乗せて甘える素ぶりでも君には靡かないよ、俺は。どうしても岳がいんだよ。岳じゃなきゃダメだ。ずっと俺を待っててくれた。だから、岳に声をかけるチャンスを伺うことにする。待つよ。岳には比べものにならない時間と我慢だけど。 「棗君、ごめん。俺さ、気になる奴がいるから」 絡みつける手をポンポンと撫で離すように促した。見上げて俺を見つめてくれる瞳をまっすぐ見つめて ごめんと呟き頷いた。 「前までの悠人さんじゃないの?可愛くて綺麗な子なら誘ってたのに・・・」 自分に自信があるんだろうな。心が空っぽで、虚しいだけ付き合いはしたくないんだ。君には何も感じない。 「ごめん」 スルリと腕を解いて席を立つ。振り返らずに元いたテーブルに戻っていった。 「あーあ、勿体無い。あの子人気あるんだよー」 隣でタバコに火を付けながらわらう。どうせならお前が相手してやれよ。 「俺は無理だから。バージンはめんどくさいんだよね、それならあの子がいいなぁ、男知ってるよ、あの子」 顎で指す視線の先には男にやんわり肩を抱かれた岳がいた。

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