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スマホを取り出してその番号にかけてみることにした。マスターが知ってる事情がこの電話番号にあって俺に手を貸してくれるんだと信じたからだ。信用出来なければかけなければいい。選ぶのは俺だってことだろうから。 マスターには昔から色んな意味で助けてもらった。ヤバイ奴に手を出さないようにアドバイスをしてくれた人だし、ここは信用してかけてみる。 『ここは出会いの場でもあるけど、楽しくお酒が飲める場所だから、客を減らすようなことはしないよ』 そう言っていたことを思い出した。 何度かの呼び出し音が鳴り『誰?』と低い声が耳に届く。マスターの指示通りの言葉を並べた。 『彼がヤバイよ。いつものところで』 そう言い放って相手の言葉を待たず終話を押した。さて、どうなるんだろう。電話の奴が早いか岳を落とすのが早いか。 それまでイライラを押し込んで隣の奴と話す。 「ところでさ、お前なんて名前?」 そう聞けば怪訝そうな言葉がかえってくる。 「今更?要らない情報は消去するのかよ。覚えててよ、透吾。と・う・ご、だから」 透吾。聞いたよな気がする。ここで出会った奴の名前なんて覚えちゃいない。外で会ってもお互い声もかけないし、俺に至っては顔さえ忘れてる。いや、覚えないんだ。要らない情報なんだよ。

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