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今度は右隣に座っていた奴が岳に近寄る。
イライラと愛おしさは募るけど、自分の恋人がモテるってのは気分はいいんだ。あくまで気分だけど。
こんなに俺って感情豊かだったんだって戸惑う発見だよ。まあ岳に関して限定だろうけど。
それより俺の出番は今じゃないのか?チャンス到来だよな。そう思う前に体が勝手に動いていた。
岳の背中に近づいてそっと右肩に手を置く。
「と、隣いい?」
なんで吃るのか、なんだか知らないけど、岳に近づくと心臓がドキドキバクバクと跳ねた。
大好きな岳に触れて更に速度を増した心臓。さっきまで一緒にいて、何年も何十年もずっと一緒に生きてきたのに、今更初めてあったような感覚はなんなんだろう。触れた肩も、ふんわり香る嗅ぎ慣れた香りもインプットされたように俺に馴染んでるはずなのに。
それでも、この雰囲気はドキドキさせて岳に取り入ってこっちを見て欲しくて仕方がない。
チラリと見上げた岳は平然と『どうぞ』と視線を戻した。興味ないふりがかなり傷つくんだけど。やっぱり俺が声をかけちゃいけなかったんだよな。
でも、もう無理。誰かが岳に触れるなんて我慢出来ないんだ。
「待ち合わせって言ってるの聞こえたけど、そいつが来るまで楽しく話せると嬉しいんだけど」
そう言って、岳の好きなカクテルと俺の好きなカクテルをマスターを呼び寄せて頼む。
それより誰と待ち合わせなのかが気になって仕方がない。俺を連れてここに来て更に俺と鉢合わせさせたい相手だと思うとイライラが勝る。
「来るかな・・・来てくれると嬉しいんだけど。彼は俺より欲を取る人だし。いい人が見つかれば来ないかもしれない」
誰だよ、そいつ。初耳なんだけど。どこでどうやって出会って恋人の俺にそいつを合わせる理由は?
まさか、俺よりそいつと付き合いたくて・・・別れ話、とか?そんなの絶対に許さないから。
「何そいつ、君みたいな可愛い相手がいるのに他で遊んでるの?最低じゃん。そんな奴ほっといて俺と遊ばない?」
軽そうな向かいの奴はいやらしく笑って戦闘体勢に入った。と思う。俺を見向きもせず岳はグラスのに話しかけるように呟きを続けた。
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