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頬に寄せた手をキュっと握りしめて、摘んで離していく。瞳はずっと潤んでキラキラと揺れる。けっして女っぽくないのに、岳は本当に綺麗だ。 「今日の岳はいつもに増して綺麗だよね」 横顔しか見せてくれなくても岳は綺麗。すっと伸びる背筋も綺麗な襟足もどこをどうとっても岳は本当に綺麗だ。 「悠人もかっこいいよ・・・惚れ直してるとか・・・どうしようもないよ」 グラスの氷を揺らして呟く。惚れ直して、心揺れてる奴なんか忘れてしまえばいい。それにしても岳のことになるとこんなに臆病で弱くなる自分に驚いてる。自分以上に大切な存在があるだけで、人はこんな想いをするんだってことを岳に教えてもらった。 「俺はいつも、岳のことを考えてるし、想ってる。知らない間に気になる奴が出来てるなんて思わなかったけど、岳以上に好きになれる奴はいないから、俺は待つ。俺が離れなかったように岳も・・・誰かに・・・身体許しても・・・俺のそばからは離れないって・・・誓って?」 目の奥が軋む。言葉にすると結構クるもんなんだな。声は震えるし胸が締め付けられる。溢れてくる何かを目頭を抑えて堪えた。 「悠人?」 俺を見る視線が怖くて顔を背けた。こんな弱い俺は見られたくないし、こんなの俺じゃない。 岳で喜んで、岳で泣く。岳でいっぱいになって、身体全部細胞の一つ一つまでもが岳を愛してるって叫ぶ。 こんな俺、知らない。何かを無くすことなんて今までなかったから、何かが離れて無くしてしまう恐怖が襲いかかるみたいだ。 「・・・帰ろうか、悠人。もう気が済んだから・・・」 「そいつ・・・待たなくていいのか?」 チェックを頼むのか俺の問いかけを無視してマスターを呼んだ。 「聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」 いきなり質問を投げかける岳にマスターは優しく微笑む。 「悠人はここで相手を探して漁ってました?」 いきなり何ストレートに聞いてんだよ。そりゃマスターには全部お見通しだろうけど。酔ってるのか?普段の岳からは聞けそうにない言葉。確信を突く物言いは、いつも飲み込んで心に溜めているもののなずなのに岳の口からこぼれ落ちる。 「悠人君はいつも待ってただけですよ。相手から誘われて応えてたみたいですけど。漁ることはなかったですよ」 俺から声をかけたことは一度もない。相手からすり寄ってきた中から選んでいただけ。それがどうしたって言うんだよ。 「ありがとうございます。いい社会勉強になりました。今度は悠人と2人で来ます」 岳に微笑んでいたマスターが俺に視線を移し優しく笑った。 「悠人君、君が探してた人見つかって良かったですね。大切にしなきゃダメですよ」

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