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「大事にしますよ。もう彷徨ったりしませんから」
もう他に岳を求めて彷徨わなくても、岳だけを愛して岳だけを抱けばいい。何も怖がる必要もなくて何かに怯える必要もない。それだけ俺達は大人になってそれだけの力が備わったと思ってる。
「良かったですね。悠人君も岳君も」
「俺の待ってた奴はもう来ないみたいなのでそろそろ。ありがとうございました」
「そのようですね。もうここには来ないでしょう。来たら追い返してやります」
笑い会う岳とマスターの言ってる意味がわからないんだけど。でも、岳の気になる奴が来ないならそれはそれでいい。岳は俺のモンだしな。
席を立つ俺につられて岳も立ち上がる。その腕をいつの間に後ろに立っていた透吾が掴んだ。
「君って悠人の恋人なの?」
突然捕まれた岳は優しく笑った。
「悠人は俺の恋人ですよ。ここには遊びに来てただけ。悠人を好きにできるのは俺だけ」
これがまた、酒の力を借りて饒舌になる岳。普段見れない岳の酒癖が覗き始める。
そんな岳は俺に振り向きにっこり笑ってしな垂れるように色っぽくもたれかかった。腰に回った手にドキンっと心臓が跳ねる。外で、それもこんなに人のいる場所でありえない岳の絡み具合。いつもより数十倍色香を放って俺を見つめてくる。
「岳?」
見つめてくる潤んだ瞳は誘ってるようにしか見えない。どうしたんだよ。外で手を繋ぐのさえ嫌がるくせに。酒なのか?酒がそうさせてるのか?
呑気に酒癖を疑う俺に仕掛けてきたのは、熱くて甘い岳の唇だった。
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