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可愛い。岳が可愛くて、そんな岳を知らなくて戸惑ってしまう。
思い当たる辺り、こんな岳は見たことがない。ってことは酔ってるとしか思えない。
岳と飲み明かすなんてことは長い付き合いでもなかったしな。どんな酔い方するなんてわからない。
俺達って、まだまだ知らないことかま沢山あるんだってちょっと嬉しい。
そんな甘えてくる学を抱きしめて頷く。
「惚れてて何が悪い?惚れて離したくない相手がいるってことは幸せだと思ってる。岳と出会えて幸せだってことを今ひしひしと感じてる。思い合える奴がいるって最高だろ?」
それが当たり前にあったことに気付かなかった馬鹿な俺は今のこの状態が本当に幸せだと心から思ってる。待っていてくれた岳をこの先何があってもずっと愛していきたい。
「浮気はしない。何があってもね」
透吾を証人にするかのようにおれは言葉にして誓う。
「でもさ、この若さで1人のは人に決めていいの?まだ出会いがあるかもしれないのに。それに悠人って女も好きになれるじゃん。男でいいわけ?」
確かに透吾とは俺がこの店に来てからの顔馴染みだ。ここだけじゃなく女を連れてホテル街でも出くわしたこともある。
それがなんだ。岳と比べれば、いや、比べるレベルじゃない。
「俺は岳がいんだよ。もう、遊びは終わりだ」
岳の手を握り締めて出口へと向かう。引きずられるように歩き出した岳の手に力がこもった。
「悠人は俺の~、誰にもあげないから~」
聞いたことのない口調に酔っ払いの戯言のように店内に向かって叫んだ。
でも、手にこもる力は酔いを感じさせる力じゃなかった。
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