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「どこ行く気?」 大通りに出て流してたタクシーを拾う。俺の問いかけには答えず行き先を告げた。 『大鳥橋』とだけ伝えた。その橋は俺にも馴染みがある。中学も高校も、そして岳が隣に住む実家に行くのもその橋を通る。 大鳥橋・・・なんかあるのか?こんなまだ真夜中と明け方の合間の時間。そこで何をしようっていうんだ。 隣に座る岳はシートに身体を預け目を閉じている。手はしっかり繋いだまま。小指を絡めるように頼りなく触れた指先を俺は絡めとり、隙間なく手のひらと指先を繋いだ。それを見てはにかむように微笑む岳の顔が見たかったんだ。 胸が跳ねて、鼓動が早くなる。嬉しそうに俯く岳を抱きしめたくなる。その感情が堪らなく好きで、お互いの気持ちを言葉にしなくても愛し合ってるんだって伝わってたんだ。なのに、今の岳は目も合わせてくれない。 苦しい、嫌だって泣く岳を抱き締めるのが好きで、求められてる感覚が堪らなかった。俺を愛して泣く岳が堪らなく好きで愛おしいかった。 自分勝手な行動や言動に振り回して、岳が離れていきそうになれば必死で追いかける。わがままな俺を呆れててもちゃんとこうやって手を離さないでいてくれることに安堵してる。 どうしようもないな、俺ってやつは。 外を見ながら溜息を吐いた。そこに着けば俺は何かを言われるんだろう。それまでは何も話さないつもりなんだってのがわかる。口数の少ない岳がどういう行動に出るかなんて長い付き合いで嫌でもわかる。 ここは腹をくくって聞かなきゃだよな。

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