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「あの頃、あの店にいた時も?俺のこと考えてた?」 「考えてたさ。罪悪感の塊だった。しようもなくてどうにも出来ないことが堪らなく嫌だった。それでも岳を愛してたし、キスだけは岳としかしたくなかった。溜まってぶつける所もわからないものを吐き出したようで吐き出せなくて、辛くてどんどん泥沼に嵌っていく。それでももがいて岳を抱きしめてた。キスしてしがみついてた」 情けない自分を晒したくなうて隠して。カッコつけて弱い自分に目を背けて岳を傷付て・・・どうしようもない最低な奴だった。 「馬鹿悠人。ちゃんと話してくれれば良かったのに」 「ごめん・・・言えなかった。弱い所は見せたくなかった。1番カッコ悪いのにカッコ付けて傷つけた。その・・・あのな、岳?・・・待ち合わせの相手ってのは・・・俺だよな?」 話をすり替えた俺をじっと見つめ合って数秒・・・岳が大きく溜息を吐いた。 「ここでまだ聞くの?俺には悠人しかいないのに。イケメンでソコソコ頭も良いのに鈍いって残念だよね・・・でも、完璧じゃない悠人だから良いのか・・・俺も大概だね」 返事になってない言葉が返ってくる。ちゃんと聞きたいのに。言葉にして欲しいのに。 抱き締めた手を緩めることが出来なくて離れようとすれ岳を引き寄せる。 「悠人?」 駄々をこねるように左右に首を振った。言葉を聞くまでは離さない。大きく溜息を吐いて元いた胸に顔を埋める。 「あの頃の悠人に会いたかった。どんな風だったのか、どんな風に誘われてたのか誘ってたのか・・・見たかった」 「それだけ?」 なんとなく腑に落ちなくて不信感を持つ。真意は?

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