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勇敢な子豚──09.*

「ぁ、ぁ、ひ、ぐ……ぁ」 「ねー、そろそろ代わってよぉ、長いんだよレオは」 「待てって、もうちょい……あ、ぁ……やべー」  目の前でレオと呼ばれた男が、激しく揺れていた。正確には、トイの身体に覆いかぶさって腰を振っていた。  腹の中を抉られる鈍痛が増して、ぅ、と小さく唸ったレオに腰を押し付けられる。  びたびたと身体の奥に吐き出された冷たい熱にトイは震えながら目を強く閉じた。そうすることでしか衝撃を受け止めきれなかった。 「は、こいつ最ッッ高だな……たまんねえわ」  ぐちぐちぐちぐち、興奮した面持ちのレオに激しく中を小刻みに穿たれ、一滴も残さぬように絞り出される。限界にまで開かされた腿ががくがくと痙攣した。  体の中に、他人の体液を無遠慮に注ぎ込まれるのは何度経験しても慣れやしない。いっそのこと何も感じなくなってしまいたいのに、犯されれば犯されるだけ苦しみは増すばかりだった。  気が遠くなるような痛苦は泥のように重く蓄積し、トイの思考は既にうまく働かずただ与えられる恐怖に翻弄されていた。 「は、やべ……全部出た」 「あんまり出さないでよーレオ、ソンリェンまだそこ一回しか使ってないから怒られるよ?」 「無茶いうなって、こんなん、中に出すなっつーほーが無理だろ」 「はいはい、喧嘩しないで……あとちょっと皆静かにしてくださいねえ、集中したいんで」 「、……ゥ、く゛」  荒い呼吸を抑えるため必死に息をしていたのだが、仰け反った首を逆さまに押さえつけられ口の中に異物を突き入れられて仰け反る。  だが体を押さえつけられて逃げる事は叶わず、トイはゴツゴツと喉奥を突いてくる男性器に息を詰めた。 「ロイズ、また口ぃ? ほんっとしつこいよね、蛇みたいだよ」 「んー、だって、せっかくなんですからうまく使えるようにしてあげたいじゃないですかあ」 「初心者にはキツいだろ」 「容赦なく口にぶち込んでた貴方に言われたくはありませんねえ、レオ」  口の中いっぱいに突き入れられた男茎から苦い汁が溢れてきて気持ち悪かった。しかも逆さまになっているためそれが鼻の奥に流れてきてつんと痛い。  口の端から唾液や体液がどんどん溢れていく。  激しく抜かれては入れるたび、ゆらゆら揺れるとロイズの淫嚢が瞼にあたってそれも痛かった。目を開けていることさえままならない。 「まだ歯も立てちゃいますねえ、調教のしがいがあると言えばあるんですけど」 「…ッ、ゥ、う……んッ、かは!!」 「ああほらほら、逃げちゃダメですよお?大丈夫、鼻で息してください」  ずずっと喉奥に膨張した肉を入れられ、あまりの息苦しさに盛大にえずいて顔を背けようとしたが、再度固定されまた口の中に無理矢理突き入れられる。 「ん、んんぅ……ぅ、ぐぅ」  ロイズと呼ばれた男が動きを止めてくれる気配はない。えづいては突き入れられまたえずいては突き入れられを繰り返され、瞼の裏が白く点滅した。 「ぇ、は……ん、んーっ」 「頑張りましょうねえ、トイ。ちゃんと喉広げないから苦しいんですよ?」 「はは、無茶なこと言うねえお前」 「ほら、あんまりちゃんとしないと猿轡噛ませちゃいますよ、しっかり口開いて」  さるぐつわ、というものが何なのかはわからなかったが、きっとろくなものじゃないはずだ。  息ができないのも新しい責め苦を味合わされることも苦しくてトイは必死に口を開いた。抵抗しても続けられるのならばはやく終わらせて欲しかった。  ロイズは従順になったトイに薄く笑み、今まで以上に好き勝手に腰を打ち付けてきた。 「あ、この角度一番いいですねえ。うまく擦れそうです……ラストスパートいきますよ」 「ふ、ん……ん゛ッ」  顎が外れるのではないかと思うくらい、極限まで開かされた口の中に深く侵入してくる太い棒に嘔吐感が増す。けれども胃の中が空っぽなので吐くこともできない。  ここに連れてこられて一番最初にされたことは、喉の奥に何度も指を突っ込まれて胃の中の内容物を全て吐き出されたことだ。あとは腹の中によくわからない液体を挿入されて全て下させられ、汚れているからと体に傷がつくほど洗われた。  処理をしないと上手に使えませんからね、と薄く笑ったロイズという男の言葉の意味が初めは理解できなかったが今ならわかる。  トイを使うということは全て、こういうことだったのだ。 「トイ、もうちょっと奥を締めて下さい……そうその調子、いい子ですねえ」 「ん、んぐ、ん、ぅう」  何をされても抗う術もなくて、トイは人形のようにただロイズの動きに合わせて揺れるしかない。 「ねえねえロイズ、その子聞こえてないんじゃない?」 「そんなことないですよ、褒めて伸ばすのが僕の子育て術なんです」 「なーにが子育てだよこの鬼畜野郎が」 「レオに言われたくないんですけどねえ」 「ん──」  がんと激しい突き上げに圧迫された身体がずり上がるが、残りの男たちに手足を押さえつけられているためまた定位置に戻されてしまう。  首を、上から体重を乗せるようにより一層強く絞められる。ロイズの律動が更に早くなった。 「ッ、あ、そろそろ……」 「ん、ふ゛、っ……ん……ぅッ!」  もう肺の奥まで突き入れられたのではと錯覚してしまうほど深くねじ込まれる。  ロイズが低く呻いて、腰をぶつけてきた。  口内で小刻みに痙攣した肉の塊から、青臭い体液がダイレクトに喉に流し込まれていく。 「ん──ッ、んん、ぐ、んぅ──……」  ぐりぐりと腰を回す男に口の中をかき回され、飲み込めなかった精液が口や鼻から零れて視界が霞んできた。酸素が足りない。  それなのにさらにの首をぐっと絞められ小刻みに腰を穿ち続けられるものだから、もっと苦しくなった。 「あー、いいですね……ここ」  ずっぽりと切っ先が引っかかるのがいいのか、ロイズが恍惚とした表情でトイの喉の奥に先端を擦りつけてきた。勢いは落ちたが、再び口内に苦い精液が吐き出される。 「……結構、絞られましたね。かなりよくなりましたし」 「ほんとに?じゃあ俺、次は口使いたいな」 「お前はやり過ぎなんだよ、エミー」 「レオに言われたくないもん、っていうか、はやくどいてってば!いつまで突っ込んでんだよ!もう出し終わっただろ!」 「だってあったけえんだもーん」  霞む視界の中、耳に流れてくる言葉は至って普通の会話に聞こえた。気心しれた友人同士の軽い掛け合いだ。とてもこんな残酷な行為を子どもに強いている人間の声だとは思えなかった。  ずるりと、口の中から異物が引き抜かれる。やっと与えられた解放にひゅわっと肺が膨らんだ。 「か、ひゅ……ひ、ㇶッ」 「頑張りましたねトイ。次は僕以外の人をここで気持ちよくしてやってくださいねえ」 「俺のはロイズより長いから、しっかり喉開いといてね!トイ」 「失礼なこと言わないでくださいよエミー、貴方のよりは長いです」 「失礼って失礼じゃない?」 「ぉ、え……ぁ、はぅ」  首を振って咳込むたび口の端から気泡の混じった唾液が零れる。もう誰のものかもわからない生臭い白濁液で、顔全体が汚れていた。 「お前らまだやってんのかよ」 「あ、ソンリェン! おかえりなさい」 「くんな」  誰かが扉を開ける音が聞こえた。助けであってほしいというトイの願いは直ぐに打ち砕かれた。  視界の隅で金色の髪が揺らぐ。エミーという青年に抱き着かれそうになった男がそれを躱している所だった。 見覚えのある顔だ。確か、呼び出されたか何かで一度部屋を後にしたソンリェンという青年だ。

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