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第2話(R15)
「スグル。それに、クィルさんも」
ライルに名前を呼ばれると、クィルは角ばった魔術士がよく被っている山高帽をすっと手にとり、年下のライルに会釈する。
「お久しぶりですね、ライル君。4人でブマの町の近くのセフミヒ神殿を攻略した時以来でしょうか」
「ええ、その時は罠にかかったところを助けていただいたり、怪我を癒やしていただいてありがとうございました」
穏やかに繰り広げられようとするトレジャーハンター達の会話に、スグルはクィルに気を遣い、ライルに小さく耳打ちする。
「おい、服が汚れている。飯は注文してやるから着替えてこい」
とスグルの唇は動くと、太腿辺りの布地を軽く引っ張る。
先程、娼婦紛いの盗っ人・アーサラに接触された時に謀らずも勃起してしまい、ライルの股間は僅かにではあるが、膨らみかけていた。
「あ……すまん。すぐ戻る。フィリップさん、クィルさん、ちょっと失礼します」
切迫した状態にも関わらず、ライルはフィリップ達にも丁寧に断りを入れると、宿として借りた2階の部屋へと向かう。かつて多くの剣士と魔術士を輩出するブマの町でも剣士として1000年に1人の逸材と言わしめたライルも闘いの場から離れると、非常に温和な男だった。
それに対して、スグルもブマの町では魔術士として世界で最も偉大な大賢者・ヴァージルの再来とも謳われた逸材だが、良くも悪くも自信家だった。おまけに交戦的な態度も相まって、腕は良いのだが、口が悪い感じが否めない男だ。
「俺達も双子で、それなりに似ていると思っていたけど、君達はさらに似ているよね。本当に目を瞑って、装備品を変えたらさ。でも、見た目だけで全然違うよね。君達」
ライルもスグルも毛の太い真っ黒な髪色を持ち、フィリップ達とは対照的だ。
そして、ライルもスグルもブラウンとグリーンのヘテロクロミアなのだが、ライルの左目がブラウンで右目がグリーンなのに対し、スグルの左目はグリーンで、右目はブラウンだった。
「クィルは君のことが好きみたいだけど、俺はライル君の方が好きだな。戦士や剣士系のハンターは無骨な感じがするけど、そんなことはないし、剣技も荒々しくない上に無駄がなくて、美しい。さっきだって、1人で処理するくらいなら俺が良くしてあげたのに」
ライルが勃起していたのをフィリップも見逃さなかったということなのだろう。
スグルはつくづく、フィリップを憎らしく思ったが、余裕がある風を装い言った。
「ふん、クィルさんならいざ知らず、あんたにライルは相応しくない」
「うわ、はっきり言うね。これでも、俺、ハンターとしても剣士としても世界ランキング上位なんだけど」
「ライルは将来、あんたを抜いて、世界で最も強い剣士になり、世界で最も優れたハンターになる器の男だ。そして、このスグル様はハンターとしては勿論、クィルさんや大賢者・ヴァージルを超える唯一無二の魔術士になる男だ」
ライルもスグルもおおよそ、熱血とはかけ離れた涼やかな容姿の男らだが、スグルはかなり熱い気持ちを持っているらしい。
一方、立ち上がった陰茎を鎮めて、人前に出られるように身なりを整え、ヘラヘラと笑って酒場へ降りてくるライルは物腰が柔らかく、冷静なところがあった。
「お待たせしました。って、先にやっててくれたら良かったのに」
ライルは椅子にも掛けずに話を続けていたスグルやフィリップ、クィルに席を勧めると、スグルには麦酒と若鶏の唐揚げ、フィリップとクィルには葡萄酒と川魚のポワレというように、テキパキとそれぞれの好みに合った酒や料理を適当に注文する。
トレジャーハンターだけにライル兄弟もフィリップ兄弟も標準よりもややスリムな体型なのだが、それに似合わず大食漢だ。
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