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第3話

「ああ、食ったな」 「そうですね。明日は我々は街で買い出しをして、休息をとって、明後日に町を立つつもりですが、ライル君達は明日はどうするんですか?」  空っぽに平らげた皿や木製のジョッキの山が机を埋め尽くしてきた頃、そろそろお開きにしようかという流れになる。  クィルは何気なく、ライルとスグルの予定を聞いてきた。 「明日は……スリメの塔を攻略しようかと」  ライルは何でもなく答えたが、ライル以外の顔色と語気の感じが変わる。 「おい、バカ!」 「「スリメの塔!」」  スグルは額に手を添え首を降り、フィリップとクィルは信じられないものを目にしたような顔。 「あの、スグル君。私が口を挟むべきではないとは思うのですが、あの塔はやめておいた方が良いと思います。魔術士殺しのフロアもあるようですし、魔力耐性がないとまず助からないような罠もあるようです」  クィルはスグルと同じく魔術士からトレジャーハンターなった者として、スグルが優秀な魔術士であり、トレジャーハンターであることは知っている。  というのも、セフミヒ神殿を共に攻略した時、魔法で世界一深いとされる湖の底へ行ったのだ。そして、開かずの扉を世界的に見ても高度な魔術とされる古代魔術で開けて、これまでどんなハンターにもなしえなかった秘宝を手にし、生還してきたのだ。  魔力も技能もあり、若いが、当然、さぞベテランのハンターだとクィルは思った。  だが、実のところ、彼らにはハンター歴は全くなく、なんとハンターとしての初仕事だったようだ。  おまけに、上級ハンターの業界では若手とされる自分達よりも2歳も下だった。 「ご忠告、ありがとうございます。でも、ハンター方針は俺とライルで決めていますし、同業者の方針に口を挟むのはクィルさんでも無粋かと」  トレジャーハンターのギルドが定める第6箇条目にも同業者への方針には口を出さないのが望ましいとあり、掟を極力守るよう心掛けているクィルとしてもそれ以上、何も言えなくなる。 「……」 「まぁ、ライルの魔力耐性のことなんかも策なしで攻略しようなんて思わないですし、幸い、スリメの塔で死者が出たという話もありません。攻略できないからと言って、攻略しなかったら、永遠にできませんよ」  スグルはフィリップと違い、極めて紳士的な口調で言うと、ライルと共にとった部屋へと帰っていく。それをライルが引き止めながら、クィルやフィリップに詫びを入れつつ、スグルを追いかけていった。

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