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第5話

「そろそろ行くか」 「ああ、そうだな……」  スグルがライルに魔力耐性なしを補強する施術をし終えて、2時間程、仮眠をとると、2人は朝食をとる。ライルの下半身は少し違和感があるが、性感を煽られなければ、食事をとったり、用を足したり、剣を振るには支障はない。  そして、フィリップやクィルに挨拶することなく、バルレルを出た。 「やっぱり、フィリップさんやクィルさんに挨拶ぐらいして行くのが良かったんじゃ……」  などと、律儀な性格のライルは言うが、スグルは考え込んでいるようだった。  言うまでもなく、スリメの塔はこの世界に突如現れた変異ダンジョンの1つだ。変異ダンジョンはまだ各地からのデータが揃っていなくて、傾向が掴めないばかりか、前人未到であったり、侵入する者を寄せつけない罠や仕掛け等が無数にあると言われている。  若いながら、熟練されたハンターであり、西域系の魔術士としても一定の尊敬もしているクィルの意見も分からなくはないが、昨日、スグルの意思はクィルに答えた言葉通りだった。 「いつかは越えなければいけない。クィルさんも大賢者・ヴァージルも世界中に出現したという変異ダンジョンも」  ライルの言葉を無視する形で、2人は宿屋・バルレルからさほど離れていないスリメの塔まで平坦な道を歩くと、聳え立つ塔の前に立つ。  塔の高さは昨夜、ライル兄弟が宿をとったバルレルの3倍弱と言ったところで、ダンジョン的に見ると、5階以下の塔のようだ。 「これがスリメの塔」 「あまり高さのない塔だな」  確かに、スグルが言うようにこれなら、スリメの塔を目指す道中で野宿する目的で入ったヒグウの塔の方が遥かに高いだろう。 「特筆すべきなのは色の違う入口が2つに、双塔式の塔。剣士向けの入口に……魔術士向けの入口か」  白っぽく淡く光る色の石で作られた入口には剣とオノがクロスした紋様が刻まれている。一方、黒っぽい深みのある石で作られた入口には五芒星にルネと呼ばれる古代文字の紋様が刻まれている。  そして、どちらにも封印がしてあり、封印を破って侵入するしかない。 「普段ならそれぞれの入口から攻略していくか、剣士向けの入口に2人で入って攻略していくが、今回は魔術士向けの入口から入る」  スグルは魔力耐性の術を施したライルを気遣うと、魔術士向けの入口に封印解除の術をかける。  すると、封印は呆気なく破れ、スグルとライルはスリメの塔に入った。

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