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第6話

「静かだ」 「ああ、何の気配もしないし、匂いなんかもない」  塔の中はブマの町の近くにある白雪のできたシユの洞窟を思わせるように、冷気は感じるものの、獣の気配や死骸や埃、カビといった悪臭も感じない。  スグルのリグウトの魔術によって照らされる塔の内部は一言で言えば、「無」の空間だ。 「とりあえず、塔の最上階を目指す。気を抜くなよ」 「ああ、スグルも気をつけて」  長い長い廊下を進み、ライルとスグルは2階へと続く階段を見つけた。特にここまでは魔物が襲ってきたり、大岩が転がってきたり、左右の壁が狭まってきたりするようなことはなかった。  一応、見つけた階段を通り過ぎて、その先に進んではみたが、行き止まりとなっていて、これといった仕掛けも見当たらない。それどころか、宝箱どころか、木箱の1つ、頭蓋骨の1つもなかった。 「どうやら、あの階段が正規のルートだったみたいだな」 「いよいよ、2階だ」  ライル達は階段まで引き返し、階段を登っていく。勿論、階段も念入りに調べて、登っていく。  そして、スグルの足が2階部分に着いた時だった。 「ああっ!!」 「ライルー!」  僅か半歩遅れたライルの足に何かが巻きつき、ライルはなんと階段の中へと連れ去れてしまわれそうになる。スグルは咄嗟に2階部分からライルの足に巻きついた何かとは距離をとり、ライルの手を掴もうとする。  だが、ライルの足のみではなく、スグルの足にも何かが巻きついていくのを感じた。 「うっ」 「スグル!!」  必死に抵抗するも、2人はとうとう引き剥がされる形で、ライルは地下に、スグルは2階の壁の奥へ引き摺り込まれてしまった。

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