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第11話(R15)

「ううっ……」  直腸を押し広げられ、前立腺を責められて気を失っていたライルが目を覚ます。身体中が何種類もの液体で汚され、美しい体裁で施されていた呪いは乱れていた。 「とにかく、1階へ……」  ライルは野宿用に携帯している布で自身の身体を包み、大剣を杖代わりにして進む。 「こんな時、エスカぺの魔術が使えたらな」  エスカペというのはダンジョンの入口へ戻れる魔術で、魔術士でなくても訓練次第では取得できる為、戦いを不得手とするハンターには必須の魔術だ。 『あいつ、今年で12なのに、5歳の子が使える魔術も使えないんだろう』 『いくら、剣ができても、リグウトも使えないんじゃあシユの洞窟やタボカの森にも行けそうにないわね』 『何でも魔力耐性も殆どないらしい。この間も……』  ブマの町は北をシユの洞窟とシユの山々に囲まれ、他の方角を何万本ともいう大木や樹々で埋め尽くすタボカの森に阻まれた小さな町だった。それ故に、古い2つの武術系と魔導系の小集落が肩を寄せ合うようにして発展してきた閉鎖的な町だったが、優れた武術家と魔導師を輩出する町として世界でも指折りのメッカだった。  しかし、ライルはスグルとは違い、剣士としてはともかく、魔力と名のつくものは適性が無に等しかった。 『双子なのに、スグルはもう大人でもたまに失敗する魔術をいとも簡単にやってのけるらしい』 『おまけに、そこら辺の剣士と同じくらい剣も奮って、タボカの森よりも奥のクタアの森の先にある塔を根城にしていたバケモノも退治したとか』 『ああ、知ってる。ハタコの塔でしょ。帰りはあっさりとエスカぺの魔術を使いこなして帰ってきたみたい』  ライルはあまり思い出したくない過去の記憶を思い出すも、足を止めずに歩く。本当は情けなくて、足を止めて蹲りたいくらい心の折れる記憶だが、一刻も早くスグルと塔を出て、体制を立て直さなければならない。  小さいながら安定した故郷の町での生活を捨てて、トレジャーハンターなんて不安定な職業に就いてくれたスグルの為にも。 「あ、梯子だ」  ライルは暗がりに薄らと見える梯子を発見する。どうやら、縄梯子のようで、縄梯子が続く上階は僅かにだが、明るく光っている。 「もしかすると、スグルがいるかも知れない」  正直、先程の陵辱もあり、ライルは縄梯子に触るのも躊躇われた。  だが、恐れていてはこの変異ダンジョンの中で死を待つ他ない。ライルは慎重に縄梯子を掴むと、足をかけ、体重を乗せた。

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