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第15話

『あいつ、まだ12なのに、もう大人でも手を焼くバケモノを退治するらしい』 『剣も魔法も凄い才能よね、天は二物を与えずとは言うけど』 『ただ、態度も凄いがな……』  ブマの町は北をシユの洞窟とシユの山々に囲まれ、他の方角を何万本ともいう大木や樹々で埋め尽くすタボカの森に阻まれた小さな町だった。それ故に、古い2つの小集落から肩を寄せ合うようにして発展してきた閉鎖的な町だったが、優れた武術家と魔導師を輩出する町として世界でも指折りのメッカだった。  そんな町の中でも、スグルはライルとは違い、魔力と名のつくものは適性が大人と比べても半端なくあり、魔術の取得はあの大賢者・ヴァージルを凌ぐという。またスグルには劣るものの、剣の腕前もなかなかだった。 『双子なのに、ライルは素直だし、意外と気も利くし、パーティーにいると安心するっていうか』 『分かる。1パーティーに1ライル、いるでしょ! スグルは……何か、いつも命令してそうかな?』 『うん、あとはお前ら、俺がエスカペの魔法、使えなかったら、死んでたかもなって……。俺達のこと、コマくらいにしか思ってないぜ。ありゃ』  そんな言葉をスグルはいちいち受け止めず、傷ついたり、気を揉んだりすることすらしなかった。  そんな言葉よりも魔法耐性はないが、それ以外は全てにおいて優れた、片割れとも言える兄であり、パートナーであるライルの言葉を信じていた。 『スグルは凄いな』 「(凄いな、か……)」  何かあることに言われるライルの賞賛のように本当に凄い魔術士ならこんな変異ダンジョンも難なく攻略して、あんな風にパートナーであるライルを危険に晒すこともない筈だ。  他の人、おそらくライルにとっても些細な日々、過ぎ去りし過去の記憶だが、スグルにとっては辛い時に何度となく思い出す記憶だ。多分、スグルが生涯を終えるであろうその時にも。 「(悪い……な。もうダメかも、知れない……)」  スグルが目を閉じた時、ミルロルの魔術は消える。すると、微かな眩しさにスグルは閉じる目を開ける。  周りの壁も天井も光り輝いていたが、明らかに違う光。炎のようなものが何かの文字を形作り、スグルに命じていた。 「(エスカペ……と唱えろ)」  と唱えろ、と心で思う時にはスグルはスリメの塔から抜け出していた。

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