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第16話(R15)
白く光る淡い茶色の長髪。
ライルのブラウンとグリーンの目にはフィリップの顔が飛び込んでくる。
「フィ、リッ……さん……」
ライルは力の入らなくなった身体をフィリップが抱き抱えて、支えてくれているのに気がつく。
スリメの塔に入った時に着ていた衣服は謎の物体の粘液でドロドロになり、野宿用に携帯していた布を途中で身を包んでみたが、先程、縄梯子を登っていた時に再び、謎の物体に襲われ、その布さえもドロドロになってしまっている筈だ。
普通とは言えない今のライルの思考力でちょっと考えてみても、とても綺麗な姿とは言えない。
しかも、ライルの身体はまだ媚薬に冒されたみたいに熱くなってきていて、いつまた、イッてしまうか分からない状態だった。
「フィリップさんが、助けてくださったんですよね。ありがとう……ござい、ます。もう、大丈ぶ、大丈夫、です……」
何とか、ライルはそう口にすると、フィリップから離れようとする。身体の状態、衣服の状態、あと、今もスリメの塔に取り残されているだろうスグルも助け出さなければならない。
だが、フィリップはライルを更に強く抱きしめる。
「大丈夫、なんてそんな訳ないだろ」
いつも比較的穏やかで、昨晩、盗賊・アーサラから助けてくれた時のように助けてくれたり、ダンジョンの攻略時の話や町で起こったちょっとした出来事も面白おかしく話してくれるフィリップは口調はともかく、その言葉に静かな怒りを滲ませていた。
あと、それ以上に静かで深い悲しみも。
「フィリップ、さん……」
ライルはそれ以上、何て声をかけたら良いか分からない。剣士やハンターとしてはともかく、魔法耐性もなく、魔法も殆ど使えない自分の為に、こんなに強い思いを向けてくれる。
そんな人間はこの世界ではスグルしかいなかったし、いない筈だった。
「スグル君……あの子はクィルに任せてある。大丈夫だ。ただ、君は大丈夫ではない。君は俺とディシーにある拠点へこれから行く」
フィリップはスグルの安否とこれからの行動を最低限に言うと、ライルはそれに頷く。
フィリップにこれ以上、迷惑をかけたくはなかったが、スグルの安全が保証された。それが何より大事なことで、ライルはフィリップに一切を任せた。
「テレポルト」
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