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第4話 4月~5月 (2)

そこから時間をかけて聞き出せたのは、新しいマネージャーの佐伯に時々キツいことを言われているということ。 主に凪との関係を解消するべきだとか、同居(同棲だが)を止めて一人暮らしして自立しろとか。 メジャーでやっていくなら学校を辞めて専念するべきだという内容らしい。 たまに意地悪なことも言われるらしいが、紅葉が否定や反論をすると冗談だと言って逃げられるそうだ。因みにその内容は教えてもらえなかった。 人の良い紅葉は他人の悪口を言うのが躊躇われるらしい。 凪は紅葉を慰めて、自分は絶対に見方だからと何度も伝えた。 当然佐伯マネージャーやレーベルの幹部にも抗議もしたが、口が上手くて、言った言わないの話にされてしまう。どうやら佐伯にはコネがあるらしい。 凪は納得せず、光輝にも相談していた。 「やっぱり問題ありだよね、あの人…。 みなもウザい言ってたし…。 うちは親いないとか、親がプロだったとか、絶対音感もってるイトコ同士とか、凪や誠一の経歴も珍しいから話題性があるのは重々承知で… でもそんなことに負けないだけの実力はあると思うし! ちゃんと実績も出してきてるし! なのにバンド内でメンバー同士が結婚してるとか、男同士のカップルとか言わないで下さいってさー!何でっ?! 今更だし! それを売りにしてるわけじゃないし! 誠一の忠告通り、プライベートはシークレットにしておけば良かった…。 音源にまで余計な口出してきてるしー!」 「おー… …荒れてんね?(苦笑)」 凪以上にリーダーの光輝はブチギレていた。 5/14 都内TV局 ある日の音楽番組の生放送インタビューで… 「えっと、ここ(みな)とここ(紅葉)がイトコ同士なんだって?」 「確かに似てるなぁー。 みんなイケメンのバンドって珍しいね。 君(紅葉)はハーフ? ヴァイオリンも弾けるって本当?」 「凪くんが、元調理師? 誠一くんが某有名大の大学院生?? 天文物理学部…? え、君ら何してんの? 何のバンド?」 もう何度も繰り返された質問に答えていくLinksのメンバー。 「リーダーは普通の人?(笑) またどっか兄弟?親戚?」 振られた話題に光輝は笑顔で答える。 「僕だけ凡人ですみません。 肩書きとしてはLinksのリーダーでギター、そして彼女の夫です。」 「夫…?」 「結婚してるのっ?! 付き合ってるんじゃなくて?」 「付き合ってないよね?」 一応みなが補足するが、続く光輝の台詞に余計にややこしくなった。 「うちバンド内恋愛禁止だったので、付き合ってはないんですよ。 2年片想いして一昨年やっと結婚してもらえたんです。先日ようやく式も挙げました。」 他のメンバーは"あーあ。言っちゃったよ"と顔を見合わせてこっそり笑った。 「濃いバンドがきたねー!(苦笑)」 その夜、Linksの検索数が羽上がって話題性は十分だったようだ。 5/15 18:00 「お疲れ様でしたっ! ありがとうございました。」 紅葉は音楽雑誌のインタビューを受け、今日の分の仕事を終えた。 「お疲れ様です。 ご自宅までお送りします。」 マネージャーの佐伯は仏頂面でそう言うとさっさと歩き始めた。 「あ! 今日は大丈夫です。 ちょっと…寄りたいところがあって…!」 「…もしかしてLiT JのLIVEを観に行くつもりですか?」 「えっ? あ、うん…、はい! なので、あとは自分で…!」 最愛の恋人は同じバンドのメンバーでもあるので、凪のLIVE演奏を生で観られる機会は貴重だ。紅葉は仕事が早めに終わったので、途中からにはなるが、LiT JのLIVEを観に行こうと思っているのだ。 ウキウキ気分の紅葉とは対照的に佐伯は険しい顔で溜め息をついた。 紅葉はまた叱られてしまうと身体をすくませた。 「あなたのそういう無責任な行動が、バンド全体の迷惑になるんですよ? バンド内恋愛を公言しない約束でしょう?」 「えっと…… ちゃんと向こうのスタッフさんに連絡して、目立たないように…」 「あなたのその容姿はどうしたって人目につきます。ファンの子たちは目ざとく、鋭いです。 "匂わせ行動"と思われますよ? 先方にもご迷惑でしょう?」 「えっと……!」 「遊んでないで自主練でもして下さい。 技術的にもあなたが一番未熟なんですから…。 先日提出いただいた曲もロックバンドの曲とは思えません。幼すぎます。」 「…ごめんなさい…。 分かりました…。 帰ります…。」

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