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第9話 (7月) (1)

※NL表現、妊娠の話を含みます。 ※メインの凪と紅葉の話は後半からになります。 7月… メジャーレーベルとの契約を打ち切りにして、再び自主活動を始めたLinks 既に決まっていた夏のイベントLIVE出演など、スケジュールをこなしながら今後の予定を組み立てているところだ。 自由は手に入ったが、幅の広がった仕事をこなすのはなかなか大変だ。 社長でLinksのリーダーの光輝は自身のバンドだけでなく先輩バンドのLiT Jに後輩バンドも2組所属に抱えていてプロデュースや仕事の確保に忙しい。 「どっか大手のスポンサーとかつかないかな…」 音楽活動にはお金がかかる…。 頭を悩ませがちの資金繰りも大事な仕事だった。ここ半年程、光輝は胃薬が欠かせない。 その時スマホが鳴り、通話をスライドすると… 「もしもし…? ミナミ先生…? あぁ! 大雨の時の! ご無沙汰しています。 えぇ…、うちはまたマイペースにやっていくことになりました(笑) その後、先生方や保育園のみんなは元気にしていますか? えっ?! 演奏会と…CM?!」 話を聞けば仕事の依頼で、秋にやる保育園の演奏会にみなのピアノの紅葉のヴァイオリンでゲスト出演して欲しい旨と、ミナミ先生の祖父が大手スピーカーメーカーの社長らしく、CMのオファーが入ってきた。 メジャーレーベルになったタイミングで連絡したが、取り次いで貰えずに、今回改めて連絡をくれたらしい…。 思わぬ繋がりに驚きながらも、一先ず演奏会の方はボランティアで引き受け、CMの方も話を進めることになった。 その後… 都内音楽スタジオ 「おはよ…っ ごめんね、遅くなっちゃった。」 みなは先にスタジオ入りしていた誠一に謝罪したが、他のメンバーの姿が見えなかった。 「おはよう。 まだ僕らだけだよー。 とりあえず…ここの部屋エアコンの効きが悪いから向こうでなんか飲まない? ジュースくらい奢るよ。」 誠一の提案で廊下にある自販機へと向かう2人。 「みんなは?」 「光輝は前の仕事が押してて、凪たちは梅ちゃんがなんか誤飲…?紅葉くんのぬいぐるみを壊して部品を食べちゃったみたいで病院寄ってから来るって。」 「またかぁ…(苦笑)」 「それが…紅葉くんが大事にしてる犬のぬいぐるみだったみたいで、凪がジムから帰ったら紅葉くんが号泣してたって…(苦笑)」 「もう、バカだなぁー(笑) なんか紅葉が倒れてから凪が更にも増して甘やかしてるよねー。 見た?あの気合いの入った朝食!」 「あー、あれスゴいよね。 今まで以上に恋人の体調管理を徹底するつもりなんだね。」 メジャーレーベルと契約していた時はバンド内結婚やバンド内恋愛について公言しないようにとうるさく言われていたが、光輝は自らカミングアウトしてしまったし(これも後々レーベル側と揉めた) 自主に戻ってからは節度を守れるなら、凪と紅葉に任せると光輝が許可した。 以前はピリピリしていた凪もご機嫌で紅葉も嬉しそうにしている。 凪作のお家ご飯の写真を載せたり、平九郎と梅とドッグランで遊んでいる写真を載せたり…真剣な自宅での練習風景を載せたり… ファンの子たちも2人の仲の良い様子を見られるのが嬉しいようで、一時低迷していたファンクラブ会員も再び増え初めている。 雑談をしている中で、顔色の優れないみなに気付いた誠一… 「…みなちゃん…大丈夫? 顔色悪いよ?」 先日、野外LIVEのあと過呼吸を起こしたみな。 誠一も春先に倒れ、紅葉もつい先日復帰したばかりだ。 「僕も一番最初に倒れた手前、大きなことは言えないけど、無理しないでね」と告げる彼に笑顔を向けるみな。 いつもツラさを表に出さない彼女だが、やはり調子はとても悪そうで… その証拠にいつもは背筋を伸ばして立っているが、廊下の壁に寄り掛かって俯いていた。 「…違ってたら本当にごめんね? もしかしてだけど…妊娠、してたりする?」 誠一の指摘にみなは一瞬固まった。 その変化を見逃さずに、肯定と受け取った誠一は「えっ、本当に…っ?!」と、驚きを隠せなかった。 「誠ちゃん…鋭すぎ…! !!もしかして経験者? 誰か妊娠させたことあったり…」 「ないから(苦笑) 親の反面教師ってやつでそこは気をつけてます。 …そっかー!おめでとうー! あれ?…光輝はことこと…知らないよね? 知ってたら猛暑の中、LIVEなんてさせないだろうし…! え、何で言ってないの…?」 「なんかタイミングがさ…。 ここんとこずっとピリピリしてるし…! みんなに迷惑かけるし…!」 「そんなことないよ。 僕らは自由を手に入れたんだし、仕事は何とでもなるよ。 大丈夫、光輝、絶対喜ぶから!」 光輝と一番付き合いの長い誠一にそう言われてホッとした表情を見せるみな。 せっかくジュースを奢ってもらったが、身体が受け付けなくて、出来れば氷だけが欲しいというみなに、誠一はカップの自販機の前で悩んで、氷が投入され、ジュースが出てくる直前に無理やりカップを取り出して彼女に差し出した。 「ははっ! 誠ちゃんって時々やることが極端で面白いよね。」 「そう? コンビニ行くより早いかと思って(笑) それより…ご飯も水分も取れないって心配だよ。暑いしさ…脱水状態になってない? とりあえず病院に行った方がいいんじゃないかな?」 「…正直…、歌うどころか立ってるのもキツくて… 全くコントロールの効かない自分の不調にビックリしてるとこ。」 「いや、冷静に言ってる場合じゃないよ…。 …何かあったら困るでしょ? 身体大事にしないと…! 今、タクシー呼ぶから…!」 誠一に説得されて、みなはそのままタクシーで病院へと向かった。

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