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第16話 (9月) (1) ※微R18
「おい…、紅葉っ?!」
「…んっ?
…あれ? 凪くん…?
…おはよー…?」
「…良かった。寝てただけか。
LINEも電話も出ないから心配した。」
以前紅葉が倒れた時のことがトラウマになっている凪は、顔色も良く寝ぼけ眼の紅葉を見てホッとしたようだ。
「……?
ごめんね?
えっ?! もしかして夜なのっ?!
凪くん…LIVEは?」
「もう終わった。
このあとネットの生配信あるからさ、今日はツーマンの早番だったし、早く帰ってきたんだ。
もしかしてずっと寝てた?(苦笑)」
「えーっ?! 21時過ぎてるっ?!
ウソーっ!
確か…平ちゃんたちのお散歩とご飯あげて、ちょっと夕寝しようと思って…。
…どーしよ!3時間くらい寝ちゃった。」
「はは…っ!
実習と練習で疲れてたんじゃね?
いーじゃん、明日は休みだろ?」
バンド活動が就職先?で予定はもう決まっている紅葉は、就活も進学もしないと大学側に告げるとコンクールに出るように言われてしまい、教育実習と演奏の練習で忙しいのだ。
疲れが溜まっているのでは?と心配する凪…。
「そーだけど…でも課題やらないと…。
あーっ!!」
紅葉は何か大事なことを思い出したようで声をあげた。
「ビックリした…。
今度は何?(苦笑)」
「大変っ!!
凪くんごめんなさい!
…まだご飯作ってないんだった…っ!!」
「いーよ、別に…(笑)
たまには外に食べに行く?
で、少しデートする?
まぁ、時間そんなないから適当にどっか開いてる店覗くくらいになるけど…
そのまま俺の仕事終わるまでスタジオで待っててもいーし。…昼寝たっぷりしたならどーせ寝れないだろ?」
寝過ごしてご飯も作っていないというのに、一言も怒らない優しい凪に感激する紅葉。
「…っ!!
すーっごいLOVEっ!
大好きっ!」
愛が溢れた紅葉はそう叫ぶと凪に抱き付いた。
「寝起きのせいか言葉変だな…(笑)
で? 何食べたい?」
「かつ丼っ!!」
「…だいぶガッツリだな…相当腹減ってる?(苦笑)」
「うん。
でもおやつにドーナツ3個食べたんだよ。
あ、これでかつ丼食べたらカロリーヤバイよね…?!なんかヘルシーなやつにしないと…。」
「若いし、食べてすぐ寝るわけじゃないし、あとで消費すれば大丈夫じゃない?
俺、手伝うよ。」
「…そうかな?…ありがと?
凪くん疲れてるのにごめんね?」
笑顔で話す凪の言葉の含みが分からず、とりあえずお礼を告げる紅葉。
「結果オーライだからいーよ。
…じゃあ行くかー。
うん、お前たちは寝てていいからな。
おやすみ。」
平九郎と梅におやすみと告げて、2人は街へ出掛けた。
車をパーキングへ入れて散歩がてら歩いてあると、美味しそうな和食の居酒屋を見付けたので、そこで夕食を食べた。
紅葉はざる蕎麦とミニサイズのかつ丼、凪は鴨南蛮を頼み大満足。
その後は深夜営業しているドンキホーテへ行き、買い物デート。
キャンプで使えそうな物を2人で選び、紅葉はキャラクター物の靴下と犬用のおやつをカゴに入れると、カートを取ってきた。
そして珍しくお酒コーナーへと向かった。
「何、ビール買うの?」
「うん。
今日のお詫びに…プレゼントするね。
これでいい?」
凪がよく飲んでいるメーカーの物を指差して訊ねる。今日だってLIVE後の一杯を飲みたいはずだが、まだ仕事もあるため家でゆっくり飲めるようにと考えた紅葉。
「ありがと。
でも別にいーのに(苦笑)
あ、自分で乗せるから…。
え、ってか、1ケース買うの?(笑)」
「さっきご飯もご馳走になったから…ほんの気持ちです。あ、凪くん、他に買うものある?」
紅葉が聞くと凪は「…ちょっと待ってて、持ってくる」とその場を離れた。
ついでだからとおつまみとお菓子もプラスして、レジの近くで凪を待つ紅葉。
「お待たせ。
これもよろしく。」
ふと、凪がカゴに入れた物を見てギョッとする紅葉。
「…これはダメなの…。」
「何で?
あ、なんか増えてんね?(笑)
俺も金出すよ?」
「お金じゃなくて…っ!
え、まだお家にあるよねっ?
いつもネットで買ってるって言ってたのに何でここで買うのっ?」
紅葉は小声で凪に抗議した。
高い物や無駄な物をねだられた方がまだ良かった。
凪がカゴに入れたのはコンドームで…。
パッケージで商品が分かった紅葉は赤面している。
「忙しくて切らしちゃってさー。
フツーに買えるから大丈夫だよ。」
「恥ずかしいから買えない…っ!
…なくていいもん…。
ねぇ、お願い。返してきて?」
「ダメ、いるし(苦笑)
時間もったいないじゃん。
…いいからレジ並ぼう。
お前どうせビールで年齢確認引っ掛かるから俺も一緒に行くよ。」
「無理ぃ…っ!」
「ゴム1箱で動揺し過ぎ(苦笑)
ほら、早くー。
…大人のオモチャも追加しちゃうよ?」
「っ!!」
耳元で小声でそう脅されて…もちろん、笑っている凪を見て、冗談なのは分かっているが、紅葉はビックリして固まり、恥ずかしさで俯きながらなんとかレジへ向かった。
レジのお兄さん(アルバイト)に変に思われませんようにと緊張しながら会計を待つ。
紅葉が終始パニクっていると、会計でもたついてしまい、結局凪が多めに払ってくれたようだ。
「ね、フツーに買えただろ?」
「…もうっ!」
凪にからかわれて頬を膨らませた紅葉は、荷物を車に乗せて助手席へ座るとイタズラな笑顔を見せる恋人の腕をつねった。
「痛…っ!(苦笑)
え、怒ってるの?」
ぷいっと窓の外を眺める紅葉を見て、凪は一度締めたシートベルトを外した。
身体ごと紅葉の方を向いて、長い指先で彼の顎をすいく、顔を寄せるとそっと口付けた。
「…っ?!
ん、んっ!」
「…もう帰る?
それとも一緒にいる?」
「…ズルい…!」
「ふ…っ!
じゃあちょっとドライブしてからスタジオ行こうか…。」
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