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第19話 (9月②) (1)
※前作からの続きです。
「おっ!
今日も同伴出勤?」
「ホストみたいな言い方やめてよ(苦笑)」
「お、お邪魔します…。」
LiT JのLIVEを観に来た紅葉は楽屋に顔を出すとメンバーとスタッフに挨拶をしに行った。
今日は土曜日で紅葉はオフ。
昨夜、凪と甘い夜を過ごして、摂りすぎたカロリーを無事に(?)消費した紅葉は空腹で目を覚ました。
凪も疲れているはずだが、紅葉の大好物である和風ハンバーグと茶碗蒸し、発芽玄米ご飯、根菜の味噌汁に海藻サラダという豪華で手の込んだ完璧なブランチを用意してくれていて、しかもちゃんと出来上がる頃にベッドまで迎えにきてくれたのだ。
存分に甘やかされてご機嫌な紅葉は課題を済ませると凪のLIVEを見たいと言い、早めに愛犬たちの散歩を済ませると彼に付いてきたのだ。
離れがたいのは互いに同じで凪も快諾してくれた。
荷物を置いて支度をする凪の首もとを見たゆーじはギョッとしていた。
「ちょっ…!!(苦笑)
何その首ー!…ヤバイよ?(苦笑)」
昨夜の生放送の時にはなかった赤紫色の歯型に苦笑するゆーじ。
盛り上がる2人にマツも寄ってきて眉を寄せた。
「そんな目立つ?
まぁ、ここステージ低いし、暗いし、客席から見えないよな?」
「…え…、どんだけ激しいの?」
「秘密ー…(笑)」
凪は八重歯を見せながらイタズラにそう答えた。
「はよー…。
凪ー?
…もみっちが絡まれてたから回収してきたよ。
ほれ…。」
Aoiからひょい、と恋人を差し出されて受け取った凪は紅葉の顔色を確認した。
「へーき? ここにいて?」
「うん…。 ごめんね、お茶買いたかっただけなんだー。」
廊下を歩いてたら変なのに掴まったらしい。
凪が近くにいたスタッフに飲み物を頼み、紅葉を椅子に座らせた。
「何、誰?」
一段と低い声でAoiを振り返って聞く凪。
「知らなーい。今日の前座の誰かじゃね?」
「うん、知らない人。
言ってることが良く分からなかった…。」
「…何もされてない?」
「大丈夫だよ。…Aoiくんありがとう。」
「いーえ。
なんか合コンがどうとか言ってたよ。
ゲイパ行こー?って誘われてたけど…うん、もみっち分かってないっぽかった。」
「あ、そ。」
「僕…失礼なことしちゃった??
日本語、どんどん新しい言葉増えるから難しいねー。」
「大丈夫。
俺があとでアイサツしとくから。
気にすんな。
あ、飲み物来たよ。好きなの飲みな?」
「わぁー!
ありがとうーっ!」
紅葉に向かって優しい笑顔でそう告げる凪は表面上は優しいカレシだが、真意を理解したLiT Jのメンバーは皆引いていた。
翔の恋人、珊瑚が遊びに来ている時も溺愛振りを間近で見てきたメンバーたちは慣れたもので、凪と紅葉がくっついていても平然としている。
「ごめんね。…すっごい痕になってる…!
どうしよ…っ!」
「コンシーラーとファンデ重ねたら隠れるからへーき。汗で落ちるかもだけど…(苦笑)
紅葉は? 身体辛くない?」
「ハンバーグのおかげで元気だよ…!
ん…、足…触っちゃだめ…!」
「あー、ごめんね?」
紅葉は凪のセクハラに動揺しつつも、手を繋ぐことで落ち着いた2人。
「…ちょい確認いい?
昨日の感じだと今日の流れ…ここビミョーかな?って思って…」
マツが進行表兼セットリストを手にメンバーに話し掛けた。
「あー、そうだね。」
「スゴい…。曲いっぱい!
…これは後半キツくない?」
「そうなんだよな…。」
珊瑚とは違い紅葉は音楽の専門的な話に参加出来る。LiT Jの曲も熟知しているので、見せられたセットリストの過酷さに驚いていた。
もちろん先輩バンドたちのLIVEなのであまり口は出さないが…
それでも紅葉の一言をきっかけにメンバーたちは真剣に曲順とLIVEの流れを考え始める。
「こことここチェンジして…、暗転、カウントから仕切り直す?」
「うん、いーと思う。」
「俺もその方が助かるけど…。」
Aoiも同意して、変更点が加えられた。
「頑張ってね…っ!」
本番直前、紅葉は人目を盗んでそっと凪の頬にキスをした。
「ん。シマの隣にいて。
ナンパされてもついてかないでよ?」
「はぁい。」
信頼のおけるスタッフに紅葉を託してステージへ向かう凪。
小さなLIVE Houseだが、熱気は十分。
紅葉は関係者エリアからそっと彼を見守った。
ステージも天井も低いので、最奥にいる凪の姿はあまり見えないが、奏でられている力強いドラムのリズムは間違いなく彼のものだ。
身体の芯にまで響く低い音は紅葉の鼓動と重なっていく…。
「カッコいい…っ!」
紅葉は時折見える凪の演奏に夢中になった。
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