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第21話 (9月②) (3)
翌日…
LinksのファンクラブLIVEは和やかに進められた。
初めての試みだったアコースティックバージョンの曲をファンのみんなは静かに聴き入ってくれて、感動で涙を流す人もいた。
普段とはまた違った雰囲気のLinksを見られて新鮮だったとなかなかの好評だった。
LIVEの中盤、みなと紅葉はピアノとヴァイオリンの演奏も披露した。
曲数は少なかったのだが、どれも完成度の高い演奏に普段クラシックとは馴染みのないファンの子からの反応も良かった。
休憩を挟んでのトークショーでは、衣装からスーツに着替えたメンバーにファンの子たちも大喜び。
カシャッ…
「こら、紅葉!
本番中だよ。凪を隠し撮りしない!
後にしなさい。」
「ごめんなさい…。」
「みなさんも撮影はご遠慮下さいね?(苦笑)」
笑いを挟みつつも、
光輝に怒られた紅葉はシュンとしていた。
でも隣に座る凪が長い腕を伸ばしてテーブルの下で手を握ってくれるとたちまち笑顔になる紅葉。
光輝に睨まれているが、凪はしばらくそのままでいてくれた。
光輝のMCでイベントは進んでいく。
「じゃあアンケートの質問に答えていくね。
えっと…理想のデートは?だって。
これは付き合う前なのか、付き合いたてなのかとかで変わってくるのもあると思うけど…。
まぁ、それぞれお任せで回答お願いします。」
「んー、僕は付き合いたてなら、ベタに映画と食事かなー。
同じ映画を見たらその後の食事でも会話の話題にも困らないし。移動と映画は横並び、食事は向かい合うことが多いから、なんていうか…距離感も掴みやすいし。」
誠一の答えにファンの子たちも頷く。
「女の子も映画なら付き合う前でも誘われたら行きやすいよね?」
みなに同意を求める誠一だが、彼女は一般女性とは少し違う個性を持っている。
「どうかな?
映画の内容にもよるんじゃない?
恋愛映画で失恋パターンとか、逆にラブシーン多いとかならビミョーだと思うよ。
それなら話題のコメディとかアニメの方が良いんだろうね。
私はホラーがいいけど…
結局何見ても寝ちゃうから行かないけどね。」
「ホラーでも寝ちゃうの?(笑)
映画デートで寝られたらショック…」
「暗くて大きな音がして、椅子に座ってたら寝るよね?」
「みなはLIVE慣れし過ぎて爆音にリラックスして眠くなるんだよね。
まぁ、そういう子もいるよ(苦笑)」
覚えがあるのか光輝はそんなフォローをした。
「みなちゃんはデートいくならどこがいいの?」
「山とか崖…?なんか登りたいかな。
別にデートじゃなくて一人でもいいけど。
ほら、過酷な場面だとその人の本性が見えるでしょ?それが許せるかどうかで今後が変わると思うから、早めに見極めたい感じ。」
「なるほど…
だいぶあれだね、スパルタ?だね(苦笑)」
「…結果、最近は割りと家にいるかなぁ?」
「そうだね。」
みなの呟きに光輝が頷いた。
夫婦のデートはなかなか一筋縄ではいかないようで、みんなで笑った。
「凪たちは?
…あ、ごめん。うっかりセットにして聞いちゃった(笑)
デートする暇ある?」
「別にいーけど…(苦笑)
ファンクラブだからねー。
デート…。LIVE漬けだから遠出は無理だけど…やっぱ2人の共通の趣味っていうか、好きなことに焦点を当てたらいいと思うよ?
俺は食。…作るのも食べるのも好きだから、この前…調理器具の専門店に行ってみたらけっこうハマっちゃって…。
フライパン1つ買い替えるつもりが、見てたら食器とか…結局いろいろ買っちゃって…(苦笑)
でも面白かったかなー。」
もちろん紅葉と一緒に行ったのだが、そこはうまく濁して、紅葉もニコニコと話を聞いているだけだ。
因みに結構な金額になってしまったのだが、紅葉が家計費の中からこっそり貯めていたというへそくりを出して使っていいよと言ってくれて、ほとんどを賄うことが出来たのだ。
これは予想外だったが、凪的にも嬉しかった出来事だ。
「へぇー。これ買ったらこんな料理出来るなぁ、食わせたいなぁって感じ?」
「そんな感じ。好きな子が自分の作った料理を美味しそうに食べてるの見てるの好き。」
「凪って付き合うと、とことん甘やかすタイプだよね(笑)」
「意外って言われるけど、そうなんだよなぁ…。
けっこー…尽くすよ?(笑)」
「だよねー。
で、一通り何でも出来ちゃうから、今までだと私がいなくても一人で生きていけるでしょ?ってフラれるパターン?」
みなの問い掛けに凪は苦笑しながらも同意する。
「本当にそんな感じ…(苦笑)
あー…、今は何やっても"すごーいっ!嬉しいー!"って言ってもらってるから幸せだよ?」
凪のノロケに会場が沸いた。
「…うん、ここで話せるのはこれくらい…(苦笑)」
「紅葉は?」
凪の回答を聞いて少し照れながら、紅葉がマイクを手にした。
「僕は猫カフェに行ってみたくて…。
でも猫アレルギーだから無理かなぁって…思いながら調べてたら…なんと、うさぎカフェがあったのっ!もふもふしに行きたいなぁ…。」
「行きなよ。 …残念ながら紅葉のカレシにうさぎ似合わないけど…(笑)」
「…うさぎ逃げそう(笑)」
みなと誠一の突っ込みにメンバーも吹き出した。
「えー?そうかな?
あとね、山とか川にキャンプ行くのも好き。
あ、でも女の子はあんまりかなー?
都会ではあまり見えない星空が綺麗だからオススメだよー!」
「星空といえば誠ちゃんだね。
誠ちゃんは夜景デートは定番?
解説とかしてくれる感じ?」
「それね…。
だんだん観測メインになって喋らなくなるからダメなんだよね…(苦笑)」
「あぁ…。女の子放置して振られるパターン?(苦笑)」
「えぇ…。
光輝は? デートどこが理想なの?」
「LIVE House巡りとか、楽器店巡りとか?
たまに友人を交えて食事したり…?」
「…それデートじゃなくて全部仕事絡みだろ…(苦笑)」
凪の鋭いツッコミに苦笑する光輝。
「よくお分かりで…(苦笑)」
程好く笑いもあり、楽しい時間はあっという間に過ぎ、イベントLIVEは大成功に終わった。
帰宅後…
「楽しかったねっ!
LIVEも上手くいって良かった。」
「そうだな。」
「んー!
また明日から頑張ろうっ!
…くっついて寝ていい?」
「いーよ…。
お休み紅葉。」
「お休みなさい、凪くん。」
大きなベッドを買っても結局くっついて寝ているの2人…。
いつも通りの小さな幸せを感じながら眠りについた。
End
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