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第23話 (11月) (2)

「紅葉くんって女の子慣れしてないよねー? ドーテー? ネコ専門なの?」 「おい、コラ! セクハラだぞ、Aoi! お姉さんたちも…こいつに触んないでね?」 「…ダメっ! …凪くんに触っちゃダメ…っ!」 「「キャーっ!」」 凪は隣に座る紅葉の身体を引き寄せたのと、紅葉が凪の隣に座るホステスにストップをかけたのは同時だった。 ホステスたちから黄色い声が響く。 2人は顔を見合わせて少し笑うと、凪は斜め向かい側に座るRyuに話し掛けた。 紅葉はドキドキしながら赤くなった顔を両手でパタパタと仰いでいた。 「サスケ潰れてんの? Ryu、そのまま帰っていーからこいつもタクシーで送って行ける?」 凪の質問に後輩のRyuが疲れ気味の表情で答えた。彼は20と若いが、男気のあるドラマーで、凪もそのセンスをかっている。 アメリカ帰りの帰国子女でもあり、年齢的にも紅葉の友人になればと紹介もしたが、何故か英会話が通じなくて(紅葉は日本語に慣れすぎて英語が苦手になっているよう…)結局2人は日本語で会話しているようだ。 「いいっスよ。方向同じなんで…。 ってか、凪くん来るの遅い…(苦笑)」 「ごめん、ごめん。 彼女は? 大丈夫?」 「普通に打ち上げとしか言ってないっス…。せっかく同棲始めたのに…バレたらヤバイって…!」 泣き付くRyuにゆーじが付け加えた。 「聞いた? こいつ今の彼女と5年目らしいよ?」 「えっ! すごーい! いくつから?」 「帰国して、中2の冬から。 タクシー呼ぶんで電話してきていーっスか?」 「いーよ。 え? じゃあ…14、15から? …お前、結婚するの?」 凪の質問にRyuは頷く。 「…しますよ? ってか、5年付き合って結婚しなかったら詐欺じゃないっスか! 今年彼女が専門卒業するんで、そしたらプロポーズする予定です。 マジで、今日のコレで破局んなったら一生恨みますからねっ!」 Ryuは男らしくそう告げるとスマホを手に静かな外へと向かった。 「だって。若いのに偉いな、Ryuは…。」 ゆーじはしみじみとそう呟いた。 凪はマツと顔を合わせて苦笑する。 「マツくん、耳が痛いんじゃない?(苦笑)」 「そーだよ。 マツんとこはもう7年くらいでしょー?」 「そんなに長いんだぁー。」 ゆーじと紅葉も関心を寄せる。 「うん…。え、詐欺かな…?」 マツがそわそわとすると、女の子たちはアドバイスをくれた。 「適齢期の女子の7年は男の人の7年とは違うよねー?」 「うん。」 「事実婚状態と婚姻関係は全く別物だよね?」 ホステスの女の子たちの意見にマツはその通りだと苦笑した。 「…だってー!(笑)」 「善処します…(苦笑)」 「早急にね?(笑)」 「…そんな大事? 1人と真剣に付き合うのって…しかもそんな長く?なんかめんどくさくない?」 その様子を見ていたAoiがそんなことを呟いた。 「……めんどくさくないよ。 Aoiくんは自分が傷付きたくなくて…勇気がないだけでしょ? 相手とちゃんと向き合ったらすごく大事なことが見えてくるんだよ…!」 「…っ! 偉そーにっ!」 「Aoiー! 図星なんだろー!(笑)」 「紅葉くんは良いこと言うねー。 紅葉くんもRyuも若いのに…しっかりしてるよー。」 紅葉の発言にカッとなったAoiを見て、険悪な雰囲気にならないようにゆーじとマツがフォローしてくれる。 「うるせーよ。 てめぇに関係ねーだろ!」 「関係ないかもだけど…! でも、お願いだから…ユキくんのこと、もっと大事にして…!」 「何なんだよっ! さっきから!」 「…ストップ!」 声を荒げるAoiをマツが止める。 凪もそれに続いた。 「…紅葉もそこまで。 あとはAoiが自分で気付かないと…! あ、タクシー来た? マツくんごめん…俺らも帰るわ。」 「うん。ありがとう、お疲れ様ー。 Aoi、飲み過ぎだよ。」 「ほっとけっ! …いーよ、もう! あー、このままホスクラで飲み直そうかなぁー。 一緒に行きたい子ー?」 「えー? 凪くんと飲みたーい!」 「私ももっと2人のラブラブなとこ見たかったなー。」 「いや、見せもんじゃないんで(苦笑) …帰るぞ、紅葉。 ほら、サスケっ!Ryuそっち肩持って?」 「了解っ…!」 「お邪魔しましたっ! お姉さん…お茶ありがとう。 そっちのお姉さんもさっきはごめんなさいっ! マツくん、Aoiくん、ゆーじくん、お疲れ様ですっ! それでは、失礼します。」 ペコリとお辞儀をして凪の後を追う紅葉。 その姿に皆が癒された。

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