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第25話 (12月) (1)
12月に入り、東京の街は一気にクリスマスモードに彩られている。
この日、紅葉は友人のユキ(LiT JボーカルAoiの恋人)を誘ってクリスマスマーケットへ行く約束をしていた。
ユキのバイト(池波邸での家事や雑用)が終わってから、隣の凪と紅葉の家に来てもらった。
すぐに出掛ける予定だったが、紅葉は実習先の幼稚園のクリスマス会で使う紙飾りを持ち帰りで作っていて、ユキに手伝ってもらっていた。
「ごめんね、手伝わせて…!」
「いーよ。
…はい、1つ出来たよ。」
「わぁー! 上手っ! ユキくんって器用なんだね。」
並べてみるとユキが作った紙飾りやおりがみの方が形が良くて紅葉は少ししょんぼりする…。
そんな2人の前を横切る愛犬たち…
「あーっ! 梅ちゃんダメーっ!
平ちゃんも!それ返しなさい!」
早速愛犬のオモチャにされてしまい、紙飾りやクリスマスツリーの装飾で遊ぶ2匹を笑いながら追いかけた。
そして夕方…
「わぁーい! 着いたー!」
祖国ドイツの雰囲気漂うマーケットは見ているだけでもわくわくしてくる。
「……キレイだね。
ドイツの伝統なの?」
「うん! 可愛いマグでしょ!
これ買ったらグリューワイン飲めるの?
えー、どれにしよー!
ユキくん一緒に飲もうよー。」
紅葉はテンション高く、マーケットを見ている。
普段引きこもりがちのユキは久しぶりの外出に少し緊張しているようだ。
「僕お酒飲めない…。」
「甘いホットワインだからアルコールは抜けてるよ?
んー、じゃあズッペにする?
ドイツのスープ! 温まるよー。」
紅葉の提案にユキはそれならと頷いた。
「うん。」
「ソーセージと、サラミ、ライプクーヘンも欠かせないよね。あー、お腹すいたっ!
よし、いろいろ買って向こうで食べよう!」
「でも…!」
人混みの苦手なユキを気遣って、紅葉はそう提案した。しかし、短時間のバイトしかしていないユキにとってはマーケットの食事でも高価に感じているようだ。
「…大丈夫。 ユキくんがバイト代からミルク(猫)を譲った時のグッズ代ってお金…いらないよって言ったのに返してくれたでしょ? それで買おう?」
「…いーの?」
「さっきもお花作るの手伝ってくれたし、僕、ユキくんとお出かけ出来て嬉しいよ。
せっかくだから楽しもう!」
「…うん。 ありがとう…。
あ、ねぇ、あれは何?
デコレーションクッキー?」
「ケーキだよ。
硬いけど…あれは昔は高級お菓子だったの。
おばあちゃんが言ってた!」
「そうなんだー。」
「マグとシュトーレン凪くんにお土産に買って帰ろうかなー。」
「可愛いよね、マグ。
このくらいなら…僕も買おうかな。
あ、スノーボールもキレイ…!」
和やかに2人でクリスマスマーケットを楽しんでいたはずだったが…
夜になり、何故か今2人がいるのは都内のホストクラブ…
「全部がバカ高い……」
ふかふかのソファーに遠慮がちに座ったユキが小声でそう呟いた。
「こんばんは、
キレイなお兄さん!
何飲みますかー?」
「えっと…お水…ってありますか?
僕お酒も飲めないし、貧乏だから…ご馳走出来ないんです。…ごめんなさい。」
「いや、むしろお兄さんなら俺がご馳走してあげたいくらいだねー。ノンアルコールのカクテルもあるよ? フルーツとか好き?」
「…好き。でも…!」
「…じゃあキス1つでどう?」
「えっ?!
ホント?
んと…別にいいよ…?」
「ダメダメダメダメっ!」
慌てたのは紅葉で、ユキの隣に座るホストは冗談だったのか笑っている。
「お金は私が出すから好きなの飲んでー!」
「真実ちゃん…!」
あわあわとする紅葉とユキの前には真実という女性。実は凪の後輩のRyuの彼女なのだ。
どうやらRyuは先日のキャバクラ行きがバレたらしく、ご立腹の彼女は自分だって!と、ホストクラブへ行くと意気込んでいたところにたまたま紅葉が連絡をしたところから始まり…。
一先ず彼女の話を聞こう、落ち着かせようとして何故か一緒に入店してしまった紅葉とユキ…。
因みにLiT Jはレコーディング中…Aoiも凪も昨日からカンヅメだ。
「…Linksの紅葉くんが来てるって聞いて…!
俺もお邪魔していーですか?
…こんばんは。柚羽です。
最近海外ブランドのモデルもしてるよね?」
「俺もCM見ましたよー!
ワイヤレスイヤホンのやつー!」
紅葉の隣にも何やらキラキラとしたホストがやってきて、許可を得る前に座り、紅葉に話し掛けてきた。
「こんばんは…。
えっと…すぐ帰るので…。
真実ちゃんー!」
「えー?
せっかく来たから楽しんでくっ!」
女の子1人を残して帰れないと、でもホストクラブなんて凪に怒られてしまう…。
紅葉はとりあえず連絡を…と、ホストからもらった名刺の写メと簡単な説明文を急いで凪にLINEした。
真実には大学の男の娘コンテストの衣装を作ってもらった恩があるし、彼女の恋人は凪の大事な後輩だし…放ってはおけない…。
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