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第28話 (12月) (4)

「お疲れ。 テストどうだった?」 「…課題増えたけどなんとか…!」 「そう…。 じゃあちょっと出掛けるけど、いーよな?」 「えっ? 今から? うん…。もちろんいいよ。」 「ところで…さっきのナンパ?」 …あの…えっと…。 僕、女の子みたい?」 「どーかな…? 可愛いけどね。 そのコート似合うじゃん。 仕事で着たのを買い取ったやつだろ?」 「…へへ…っ!」 凪から可愛いと言ってもらえてご機嫌の紅葉。 ナンパ男性から言われても違和感しかなかったが、凪が可愛いと思ってくれるならそれで良かった。 少し時間がかかるから寝ててもいいと言われ、紅葉は寝るつもりはなかったのだが、テストの疲れと、凪に逢えたことでホッとしたせいか気がついたら眠ってしまっていたようで…! ふと、目を覚ますと雪景色が覗いていた。 「えっ?! 雪…っ?!」 「起きた? もう少しで着くよ。」 ちょうど休憩中だったようで、車の隣で軽くストレッチをする凪と目が合った。 「…ここどこ?」 「せっかくだから…着いてからのお楽しみ。 因みに泊まりの用意してきてるから。 「えぇっ?! ホントにっ?! …平ちゃんたちは?」 「心配しなくてもみなのとこ。 預けてきた。」 何かを企んでいるのか、凪は楽しそうにそう言いながら再び雪道を走らせた。 「チェーンしなくて平気?」 「ちゃんとスタッドレスに変えてある。」 「いつの間に?!」 「…秘密。」 そして着いた先は一軒の古民家。 「わぁ…!」 車を降りた紅葉は昔ながらの日本の家に目を奪われていた。 「それじゃあ寒いだろ? ほら…!」 凪が紅葉の背にダウンコートをかける。 細かなところまで気を配りいろいろと準備してくれているところが凪らしい。 一方紅葉は感動しているのか、しばらく古民家を眺めながら立ち止まっていた。 「…紅葉、泊まってみたいって言ってただろ? キャンセル待ち取れたからさ…!」 「ホントにっ?! ここ? 今日…ここに泊まれるのっ?!」 「そうだよ…(笑)」 驚きと喜びが入り交じったようで、興奮した様子の紅葉はまるで子どもみたいにそう聞いてきた。 「なんでっ?!」 「ん? とりあえず早く中入ろーよ。 さみぃ…(苦笑)」 「待って。 …だって…! これじゃあお仕置きじゃなくてご褒美だよっ?!」 パニックの紅葉の手を引いて、古民家の玄関を潜る。 「どう…? 気に入った?」 「すごい…! 夢みたい…っ! ……凪くん! …もうキスしてもいいっ?」 「…いーよ(笑)」 嬉しそうに微笑む恋人の手を取ってゆっくりと口付ける凪。 「…ありがとう。 サプライズ…!すごく嬉しいっ。」 その顔が見たかったのだと、凪は満足そうに微笑んだ。 「…はら、早く中入るぞ。」 「うん…っ! わぁ…! 素敵…! 木のいい香り…! あ!これ囲炉裏? 囲炉裏がある…っ!」 過度なリノベーションではなく、昔ながらの雰囲気をなるべく残したままの古民家に大喜びの紅葉。 凪も物珍しそうに一緒に部屋を見て回った。 「お風呂ー! すごーい! あっちが寝室? お布団かなー?」 「ローベッドだって。 和モダンってやつ? 実家に似てるな。」 「素敵だね。」 「…良かった。 紅葉ー、夜…期待していーよな?(笑)」 「もう…っ!」 冗談混じりに笑い合いながら、部屋を見て回り、2人は庭の雪景色を眺めた。 そのうちに紅葉が雪だるまを作りたい!と言い出して、ダウンコートにマフラー、雪用の手袋(これも凪が準備してくれていた)の完全防備で庭に出る。 夕暮れとなり、吐く息と白く、かなり冷え込んできたが、紅葉は集中していて気にならないようだ。 夕食は囲炉裏を利用して、鍋だった。 食材だけ用意してもらい、2人で慣れない囲炉裏に悪戦苦闘しながらも作った。 「日本って最高ーっ! こんな素敵な文化があるなんて!」 食後、お酒を飲みながら広い部屋でくつろぐ2人。 紅葉は大の字に寝そべりながらそんなことを口にした。 「…あれ?この前は折り紙に苦戦してこんな難しい日本文化嫌いだとか言ってなかった?(苦笑)」 「そーだっけ?(笑) いーの! 今幸せ…っ! 見て、天井…梁っていうんだっけ? …美しいね。」 「ドイツの色鮮やかな街並みも美しいけど…、なんかここは落ち着くよな。」 「うん。 凪くん…っ! 連れてきてくれてありがとう。」 身を起こして改めてお礼を言う恋人を優しく抱き締めて、穏やかなキスをした。

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