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第35話(2月) (3) ※微R18
食後…そのままお喋りをしていると、程なくして凪が到着。
紅葉は彼の顔を見ると心から安心した表情を見せた。
「キャー!やっぱりイケメン…っ!」
「ねー、こっちで一緒に飲みましょうー?」
「わっ、すごい鍛えてるのね?
触っちゃおーうっ!」
凪はオネェさんたちの勢いに顔をひきつらせながらなんとか作り笑顔を張り付けてお礼を告げる。
「…お世話になりました。
えっと、車なんで…また今度…
紅葉、途中でカナと会って鞄預かったから。
…帰るよ。」
「ありがと…。うん…っ!
恵津子ママ、皆さん、本当にありがとうございました。」
「いいえー!
またいつでも遊びに来てね。
ダーリンと仲良くね。」
恵津子の言葉に紅葉は笑顔を見せて凪の隣に並んだ。恋人と目を合わせた凪はしっかりと手を繋いだ。
「…これ食事代、少しだけど。
いろいろありがとうございました。」
凪はそう言ってカウンターにお金を置いた。
「あら…お金はいいのよ。
若い子とお喋り出来て楽しかったから…!」
「でもCloseになってた。
売上止めて悪りぃから…。」
「もう!さすがね!
それより可愛い恋人にキスでもしたら?」
「いや…! え、ここで?(苦笑)」
凪が困惑していると友人たちがむちゃくちゃなことを求めてきた。
「むしろお金払うからイケメンが濃厚なキスするとこ見せなさいよ!」
「そうよ!」
「何でだよ(笑)」
みんなで笑い、改めてお礼を言って店を後にした。
車内…
少し気まずくて紅葉は凪の顔色をチラリと伺いながら謝罪した。
「あの、凪くん…!
今日は忘れ物してまた迷子になって…いっぱい迷惑かけてごめんなさい。」
「無事だったから良かったけど…知らない人について行くなよ?
ある意味ホストクラブよりヤベーよ…(苦笑)」
思ったより怒ってはいない凪の様子にホッとする紅葉。
「スマホのバッテリーは最近すぐ減るって言ってたからもう寿命かもなー。
春に新しい機種出るらしいけど、一緒に変えに行く?」
「うんっ!」
帰宅後はすっかり遅くなってしまったが、2人で愛犬たちの散歩へ出掛けた。
2月の深夜
外はとても寒いが、手袋越しに繋いだ手は温かい。
「梅ちゃんもう帰りたそうにしてるね。」
「寒いからなぁ…。
平九郎も眠い?
次の角まで行ったら戻ろうか。」
凪は自販機を見付けるとココアを買ってくれた。
「紅葉も…風邪ひくなよ?」
鼻先の赤い紅葉にそう告げると、再び大きな手を差し出してくれた。
「凪くん!
いつも本当にごめんね…。
僕失敗ばっかりだけど、もうちょっときちんと出来るようになるね。凪くんに迷惑かけないようにこれからはもっともっと気をつけるって約束する…。」
"だから嫌いになったりしないで…"
そう願いを込め、紅葉は凪に告げた。
「…いーよ。無理しなくて。」
「でも…!」
「…俺が側にいるから。
だから大丈夫。
もし仕事で失敗したら一緒に謝るし、失敗しないようにフォローもする。
また迷子になっても、必ず迎えに行くから。
今回みたいにいっぱいいっぱいになったらちゃんと俺に言って、ちゃんと頼ること。」
「凪くん…っ!」
凪からの言葉に胸を詰まらせる紅葉。
「…俺も余裕なくて言い過ぎた。ごめんな…。」
すぐ後ろに立ち止まった紅葉を振り返って凪も謝罪した。
2人は真冬の街灯の下でぎゅっと抱き合った。
その様子を見守っていた愛犬たちは欠伸を交互にすると"早く帰ろう!"と2人を急かす。
「あ…、ごめんね。
帰ろうね。」
「寒ぃな…。
…よし、走るか!」
「えぇっ?!」
追いかけっこをしながら帰宅し、寒いのか暑いのかよく分からなくなったが、疲れたから早くお風呂に入ろうと2人は笑った。
すれ違いの生活が続いていたので、一緒に入浴するのも久々だった。
「あの…、凪くん…?
えっとその…!」
「あ、ごめんね。当たってた?(笑)」
背後に少し主張している凪のモノを感じて赤面した紅葉は、彼に背中を預けた状態から向かい合わせになって距離を取り、膝を抱えて湯船に浸かった。
「最近誰かさんに振られてばっかでご無沙汰だからさー。」
「…??
なんのこと?」
「はっ?
俺が寝る時、お前にとっては寝起きの時、けっこう誘ったけど、"無理ー"とか"疲れてるから…"って言ってたじゃん?」
「…?
え、ホントに?
んと、全く記憶にないんだけど…!」
まるでどこかの政治家のような返事をする紅葉。
凪は驚いた。
「マジでっ?!
……さっき無理しなくていいって言ったけどさ、寝ながら会話すんのは止めて?
本気で倦怠期入ったかと思ってモヤモヤしてたっつーのに…(苦笑)」
そこもイライラの原因の1つだったと凪は白状した。
「ご、ごめんねっ?
あれ?そんなにしてなかったっけ?」
紅葉は忙しくて気にしていなかったようだが…
「12日…」
「数えて…?(笑)
えっと…! する?」
紅葉は照れながらも聞いてみる。
「…学校は?」
「午後イチ、演奏があるけど…
でも僕も、その…したい、から…っ!」
「そっか。」
紅葉のお許しにご機嫌の凪。
「じゃあ朝までコースでいい?」
「えぇっ?!」
驚き、固まる紅葉を膝上に乗せた凪は力強い手で恋人の細い腰を抱き、獲物を見つけた猛禽類のように瞳の奥に光るものがあった…。
「えっと…!
ご、ご奉仕…頑張るから…っ!
お手柔らかにお願いします…っ!!」
「へぇー…?
それは楽しみだな。
よし、上がろっか?」
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