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第61話 (7月) (7)

「ミルク……ッ!」 葵のマンションに着くとユキは真っ先に愛猫のもとへ駆け寄って行った。 久々の再会に涙を浮かべながらミルクを撫でるユキ。 「こいつはまた太ったけど、ユキは痩せたな…。」 すぐ側に歩み寄る葵… ユキは恐る恐る聞いた。 「…髪に……、触ってもいい?」 「いーよ。」 ユキは左手でミルクを、右手で葵の髪を撫でて微笑んだ。 ずっと同じ色だと気付いていて、撫でてみたかったのだと嬉しそうなユキの表情が言っていた。 メンバーに引かれまくっていた葵の作戦は成功したらしい…。 葵はユキと目を合わせると改めて言った。 「おかえり、ユキ。」 「…ミルクに会いに来ただけだよ。」 「そんなこと言うなって…!」 「……病院でも言ったけど、葵に迷惑かけられない。」 「ユキの言う迷惑がどういうものかよく分からねーけど…俺も変わるからさ。 あ! 口だけじゃねーよ? メシも自炊出来るように練習してるんだ。 家事も俺がやる。 バイトもキツイならやらなくていいし…! あのじーさんはまた話相手になってくれって何回も連絡してきたけど… あ、今までニートとか言ってごめん…。 あの…だから… また2人で…ミルクと暮らそう?」 葵の優しい申し出に目を潤ませながらもユキは首を横に振った。 これが初めての説得ではない…。 …ほんとに頑固だ。 「僕じゃあ…葵を支えられない…。 葵だって、いつか負担に思う日が来るよ。」 両親さえ、疲れきっていた時があったのだ。 ユキは葵にそんな思いをさせたくなかった。 そして葵にそんな風に思われたくないのだ。 「 ユキも手術受けたら今よりラクになるんだろ? 受けようよ。 」 この提案にも首を振るユキ。 「何で? 大変な手術だけどさ…、成功率も高いって先生言ってたし、ユキなら大丈夫だよ。 紅葉くんの妹も元気になって学校行けるようになったって言うし。 そりゃあ無理なことも出来ないこともあると思うよ? でもユキもきっと出来ることが増えるよ。 …2人で出掛けたりしよーよ。」 「…でも…! 痕が……!」 「痕って…傷痕のこと? そんなの気にしなくていーのに…! 俺は気になんないよ? でもユキが気になるとかキレイに治したいなら整形とか? 俺金出すよ。 え、まさかそれが手術受けたくない理由っ?!」 葵は驚いていた。 「だって…! 只でさえ釣り合わないのに… SEXだって…葵の満足するように出来ないし…!もう何人も他人に見られてる貧相な身体だけどさ…せめて…葵に見られても気にならない、傷痕のない身体でいたい。」 そう話すユキは泣いていて、葵は肩を抱いて落ち着かせる。泣くだけでも身体の負担になると聞いているので心配だった。 しばらく時間をかけてユキを泣き止ませた葵はそんな風に思わせていたのは自分のせいだと後悔していた。 なんとか自分の気持ちを伝えようと言葉を探す。 歌詞を考えるより、何倍も難しかった。 「…ユキの気持ちは分かった。 けど…、俺は…雪人のことが好きだから…これからもずっと一緒にいて欲しい。出来るだけ長く一緒にいたいし、ずっと元気でいて欲しい。 SEXは無理しなくていーし。なんでだか、俺ユキとするといつも早いからさ…(苦笑)手短にもするし…。例え出来なくても…俺はもう他のやつとはしないって約束する。」 「な、んで?」 「え? だから、ユキが好きだからだってば!(笑)散々なことしてきて…説得力とかねーけど…! でも絶対…今までの分も大事にする! …俺と付き合って下さい。」 真剣な葵にユキは震える指で自身の頬をつねった。 「…え、…何してんの? 人が真剣に告白してんのに…(苦笑)」 「……夢かと思って…! 心臓止まりそう…!」 「…バカ…!変な冗談言うなよ。 俺の方がストレスでハゲる!」 「……そんな色にするからだよ…。」 2人は何気ない会話に笑った。 「え、で? 付き合ってくれるんだよな?」 「……んー…、どうしようかな…?」 葵に肩を寄せて悪戯っぽく笑うユキはとても幸せそうだった。 End

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