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第63話 (8月) (2) ※微R18

翌週… 紅葉の双子の兄である珊瑚、その夫で凪のドラムの先輩である翔、紅葉と珊瑚の妹で医者を目指して親戚宅に下宿中のレニ、そして末の妹で心臓にハンデのあるサチが来日。 サチの体力を考えて成田で1泊した彼等とは翌日再会した。 因みにそのホテルは翔の一族が経営しているホテルだ。 珊瑚は夫の実家がお金持ちであることを初めて知ったらしい…。 翔の両親と豪華な食事を囲み、慣れない環境と緊張で疲労困憊だとお怒りだったそうだ。 翔自身は「三男だから好き勝手させてもらってるだけで、俺自身はお金持ちじゃないよー!ごめんねー」と軽く流していた。 そして東京に着いて早々にレニとサチはみなの家に行ってしまった。 すぐに愛樹に夢中になり、女子会ー!と盛り上がる彼女たちに家主である光輝は追い出されて、留学中の誠一の部屋で仕事をしているらしい。 誠一ももうすぐ帰国予定なので、ついでに部屋の掃除をしてあげるらしい。 またしても自分の仕事を増やしてしまう光輝には苦笑した。 凪は翔と久々の対面だ。 「ヤッホー! 久しぶり! 日本めっちゃ暑いね! こんなに暑かったー? 凪は相変わらずイケメンだね! まぁ…俺の次に、だけど!」 相変わらず飄々としたノリの翔に懐かしさを感じた。 今回、日本で翔と現LiT Jのセッションの話もあったのだが、翔の契約上の問題でそれは叶わず… でも個人的にスタジオで一緒に演奏する約束や、もちろんLiT Jのメンバーを始めとする音楽仲間との飲み会も予定されている。 「サスケがキャバ行こうってしつこいんだけど…」 翔はスマホを眺めながら凪に愚痴る。 「あー、お気に入りの子がいるらしいよ?」 「懲りないねぇ…(苦笑) あ! 珊瑚!大丈夫だよ! 俺、そーいう店にはもう行かないよ。」 「…別に行ってきてもいいけど? 俺もホストクラブ行きてぇなぁー。」 珊瑚も相変わらずで夫(翔)を前にそんなことを言う。一緒に行こうと誘われた紅葉は全力で首を横に振っている。以前の“おしおき”が身に染みているようだ。 「ダメダメっ! ダメだからね、珊瑚! あ、凪からも断っておいてよ。 俺、“次浮気したら去勢します”って誓約書にサインしちゃったみたいなんだよね。」 「珊瑚……っ!(苦笑)」 紅葉は思わず珊瑚の行動に苦笑した。 「よく読まずにサインする翔も悪い。」 「もー! 俺の気を引きたくてそういうことするんだからっ! 可愛いでしょー?」 「あーあ、暑さで頭イカれたのか…。」 「…ホントに相変わらずだな、2人とも…(苦笑)」 凪は思わずため息をついた。 珊瑚は来日中、みなの娘の子守りの合間に撮影に出るらしい。売れっ子のフォトグラファーは忙しいそうだ。翔はレニとサチを観光に連れていき、何度かは音楽仲間と飲みに行くそうだ。 「え、2人は別行動でいいの? ハネムーンじゃないの?」 紅葉の台詞に噎せる珊瑚… 「アホ…っ!」 「テキトーに2人で遊び行くから大丈夫だよー!」 「何度も言うけどこの家でヤるなよ? 俺たちいる時は絶対ダメだからな?」 「「………分かった。」」 「いや、間が長ぇからっ!(苦笑)」 案の定、凪と紅葉が自宅でお土産を開けたり食事の支度をしているとシャワーを浴びて荷物の整理をしているはずの彼等の部屋からガタガタと物音が響いてきた。 「……。はぁ…。」 凪はすぐに勘づいたが、さすがに今止めに行く勇気はない。 「あ、さっちゃんたちの服…みなちゃんのとこに持って行かないとね。」 紅葉が客室に取りに行こうとするのを止める凪…。 「…?」 「多分、お取り込み中…!」 「っ! …もうっ! まだお昼なのにっ…!」 「…仕方ねーよ。 普段向こうはこどもたちいるしさー。」 どちらかが家にいて子どもたちと一緒にいるように配慮していて、翔と珊瑚はすれ違いが多いようだ。 「……そっか…。」 「俺たちもしとくー?(笑)」 凪は冗談でそんなことを呟いた。 「…そんな! 恥ずかしいよ…!」 「あはは…!」 「……これだけね?」 そう言うと紅葉は凪の頬にキスをした。 「どうせならこっちがいいかなぁー」 ご機嫌な凪は恋人の細い腰を抱いて優しく口付けた。

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