66 / 226

第64話 (8月) (3) ※微R18

結局、翔と珊瑚が降りてくるまで凪と紅葉は防音部屋に籠り真面目に自主練習をしていた。 誠一から大量に新曲が送られてきたので2人は夢中でリズム展開を考えている。 今までの経験と新しい挑戦、Linksらしさの追及のバランスを大切に共に音楽を造り上げていくこの時間が2人とも大好きだ。 真っ昼間からラブラブな翔たちのことも気にならないし、集中して練習が出来たので有意義な時間が過ごせて良かったと顔を見合せる。 「誠一くんが帰ってきたらみなちゃん宅のスタジオで本格的にバンドの練習出来るね。」 「あぁ。 みなの練習参加は愛樹のベビーシッター見つかってからって言ってたけど…珊瑚がいる間なら少し練習したいって話…。 ってか、向こうのスタジオの機材のバランスが微妙だから後で翔くんにも見てもらうよ。」 「そっかー。 楽しみだね! そういえば光輝くんが珊瑚に愛樹ちゃんの写真を撮ってもらいたいって言ってた!」 「え、光輝は自分でも1日1000枚くらい撮ってるってみなが引いてたのに?(苦笑)」 「ふふ。最近表情も出てきて益々可愛いもんねー!」 夕食は何か頼んでみんなでみなと光輝の家で食べよう、曲も出来た分だけ光輝とみなにも聴いてもらおうと盛り上がりながら防音部屋を出る2人。 するとシャワーを浴びたのか、半裸の翔と珊瑚がビールを飲んでいた。 「お疲れー! 好きに使っていいって言ってたから勝手にしてるよー。」 「日本のビール久々だな…。ん、うま…っ!」 「ホントに好きにしてるな…(苦笑) いや、いーんだけどさ。」 「珊瑚たちは向こう(ドイツ)でも昼間からお酒飲んでるの?」 「いや、そんなことねーよ? サチもいるし、急に病院連れてくってなったら大変だからな。 ここはみんないるからつい甘えて…悪いね。 あー、日本クソ暑いけど、SEXの後の一杯は最高。」 「珊瑚ー…! ダメって言われたばかりだし、内緒にしとこうって言ったのに…!(苦笑) ごめん…俺はノンアルにするから。 ってか、このラムネめっちゃ懐かしくてもらったよー。」 翔は昔からあるラムネ飲料を飲みながら今はガラスじゃなくてプラスチックなんだなぁと呟いている。 「美味しいよね!アッシュたちも気に入ってたからスーパーで箱買いしたんだよ。 僕が運転するから翔くんも凪くんも飲んでいいよ。」 「え、お前の運転? こえーよ(苦笑) 俺歩くわー。みなの家なら近いし。」 「 大丈夫だよ!安全運転だもん。 近いけど、歩くと暑いよ?」 「あ、よく考えたらこんくらい全然暑くねーよ。お前の運転で冷や汗かくなら歩いても同じじゃん?」 「失礼なっ!」 久々の双子のやり取りに翔も凪も笑った。 その晩はお寿司を取ったり、凪が何品か料理を作りみんなで賑やかに過ごした。 仕事終わりの光輝も帰宅し、スタッフのカナも来て、誠一に電話しながら料理と酒を摘まむ。まるでパーティーのようだった。 サチもレニも愛樹を妹のように可愛がってくれていて一生懸命お世話を手伝ってくれているらしい。 そしてサチは普段離れて暮らしているレニとずっと一緒にいられるのがとても嬉しい様子だ。 「お姉ちゃんが髪の毛可愛くしてくれたの! 見て、爪も! キラキラ! 素敵でしょ?」 細かな編み込みが施された髪はレニに、子供用のマニキュアはみなにやってもらったらしい。 小さなお姫様はご機嫌だ。 「おー、すごいね。 えー、難しそうだけど…練習しとくね(苦笑) いつも1つか2つ結びだけでごめんねー。」 服や持ち物はなるべく本人の希望をきいて可愛い物を買い与えているが、髪型だけは簡単なものしかやってあげられなくて翔は思わず謝罪した。 「カケは髪の毛伸ばさないの? 前は長かったのに… さっちゃんが三つ編みしてあげるよ?」 「え、俺?(笑)」 どうやらサチはお世話をしてあげたいブームのようだ。 和やかで楽しい時間はあっという間に過ぎた。

ともだちにシェアしよう!