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第67話 (9月) (1)
「「「「おかえりー!」」」」
あと数日で9月を迎えるとある日…
凪、紅葉、光輝とみなは愛娘の愛樹も連れて成田空港へ来ていた。
こんな派手なメンバーで行動すればめちゃくちゃ目立つのだが、もういっそうの事目立てばいいのだと“おかえり!”とデカデカと書いたポスターまで用意して開き直っていた。
今日はメンバーの誠一がアメリカから帰国するのだ。
到着ロビーに現れた誠一はかなり驚いた表情を見せた。
「ただいま。
まさかメンバー全員で迎えにきてくれるなんて…!僕って愛されてるね。」
「誠一くんおかえりなさーいっ!」
勢いのままハグをしようとする紅葉。
嫉妬深い恋人に首根っこを掴まれた。
「何俺の前で他の男に抱きつこうとしてんの?」
「ハグだよ? 誠一くんだよ?
駄目なの?
…じゃあ凪くんをギュっとしとく!」
「よろしい。
…お疲れ、誠一。」
「はは…!
相変わらずラブラブだね?
愛樹ちゃん? わー、初めましてー!
この前チャットした時より大きくなってる!
でもちっちゃい!可愛いねー!」
「そうだろっ?
愛樹は世界一可愛い!
特にこの瞳が…」
父親である光輝は自慢気に愛娘の可愛さを語った。
「愛樹、誠ちゃんだよ。
よろしくねって。
後で抱っこしてあげてね。
…よし、じゃあ行こっか!」
「あ、荷物持つよ。
ギター買ったの?」
光輝はギターの入ったケースが増えているのを見付けると興味津々に聞いた。
「ありがと。
あ、うん。すごいいい音でさー。
え? ところでどこ行くの?」
「どこって…スタジオだよ?
Linksの。まぁ、家だね。」
「誠一くん初めてだよね?
すごいんだよー!
機材も揃ったし、休憩スペースのソファーもすごーく座り心地がいいんだよ!」
光輝はさも当たり前のように言っているが、特に約束していた訳ではない…。
紅葉はスタジオの素晴らしさを熱く語る。
「え? このまま?(苦笑)
ちょっと…家に寄ったり、研究室にも顔出したいんだけど…!日本食も食べたいし…」
「明日でいいよね?
とりあえずギターとその身体さえあれば大丈夫だから。」
みなの台詞に思わず苦笑する誠一。
後ろを歩く凪はなんだかほっそりとした彼を見て心配そうに呟いた。
「誠一やつれたんじゃね?」
「あ、うん…。
食べ物合わなくてさー(苦笑)」
「安心しろ、晩飯は日本食作ってやるから。」
「ありがとう…楽しみ。
え? えっ?
あれ?なんか迎えにきたって言うより連行しにきた感じ?(苦笑)」
気付けばメンバーが誠一の周りを囲むように歩いていた。
「誠ちゃんと紅葉が悪いんだよ?
あんなにたんまり曲のデータ送ってきちゃって、うっかり紅葉が“アルバム3つ分だねー!”なんて言うから!
みんな気付いてても言わなかったのに!」
「……なるほど。」
いろいろ察した誠一はそれ以上何も言わずに車に乗り込んだ。
夜…
夕食を食べながら誠一の話を聞く。
「へぇー…。
じゃあほとんど家、大学の往復だったんだ?」
「そうだね…。チャットでも話したけど、かなり忙しくて、授業もついていくのに必死だったから…。
凪、肉じゃがもっとある?
本当に美味しい。
服とか向こうで買えばいっかーって日本のツアーの時の感覚で思ってたけど、サイズが合わないから持って行けってカナちゃんに言われて…結果、持って行って正解でした。
食料とか日用品のお店もカナちゃんに調べてもらったとこで必要な物買えたし、日常生活で使いそうな英会話の一覧もすごい助かったし…。
あ、食べ物が合わなくてお腹痛くなった時とか、薬どれ買えばいいのかとかすぐ教えてくれて…」
「つまりお前が生きて帰って来れたのはカナのおかげだな。
ほら、おかわり。
他のおかずもタッパーに詰めるから持って帰れよ?」
「すごいね、カナちゃん!」
「誠ちゃんカナへのお土産…まさかブランド物のバッグとか買ってないよね?」
みなはそれをやったら2人の発展はないと言った。
「いや、それも考えたよ?
お世話になりっぱなしだからね?
でも何がいいか聞いたら“Linksのために曲を作って下さい”って言うから…!
ほんとハッとなって…そこからひたすら曲書いて、勉強して、観測しながらギター弾いて…って感じ。
お土産は手帳のカバーにしたよ…。
うぅ、ご飯が美味しい…!」
「…もうさ…結婚すれば?(笑)」
「そうだよ!
ん! 誠一くん、このお菓子美味しいよ!」
「あ、ほんと? 良かった。
紅葉くん好きそうだなって思って…
いや…カナちゃんにも選ぶ権利あるからさ…(苦笑)
はぁ…。
…愛樹ちゃん可愛い。
見てるだけですごい癒される。
永遠に見てられる。」
「食べ終わったら抱っこしてみる?」
「えー、大丈夫かなぁ?」
「よし!
仮のスケジュール出来た!
集合ー!」
光輝の掛け声でメンバーが集まる。
中心にいるのが愛樹で、皆で愛らしい寝顔を眺めながら小さめの声でミーティングを進めた。
いよいよLinksの再始動が始まる。
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