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第71話 (9月) (5) ※R18

いつもより少し強引で性急に行為が進められていた。 それでも凪の手は暖かく優しかった。 久しぶりだし、求めてもらえることが嬉しくて紅葉は必死についていく。 「あ、あっ、ダメ…っ! 待って…!」 「待たない。 あと今日はダメ禁止。」 「ぁ、そんな…! ん、ふ、ぁ…ッ、あぁ…! ぁ…! そこ、イイ…! んー…っ、いく、いく…っ!」 「いーよ。」 「んんッ! あ、イク…ッ!凪…!」 達したばかりの紅葉は脱力しながらはぁはぁと呼吸を整える。 凪は何やらゴソゴソとチェストを探っていた。 ゴムとローションかな?と思った紅葉はあまり気にしていなかったが、凪の手には見慣れない物が… 「な、に?」 「あぁ、これ? ローター。 珊瑚が置いてった。 間違って初心者用買ったらしいよ。」 「え?」 大人のオモチャだと言われて驚く紅葉。 凪との行為でも、もちろん1人でも使ったことはない。 「大丈夫、未使用だから。 ちょっと試してみよっかー。」 「む、無理…!」 どう使う物なのかイマイチ分からないが、人工的なそれには抵抗があって紅葉は首を振った。 「大丈夫、気持ち良くするだけだって。」 困惑する紅葉とは対照的になんだか少しわくわくしているような凪。 最終的にそれで凪の気が収まるのならと紅葉は頷いた。 今回の喧嘩の原因について負い目もあったのだ。 「それ…痛くない?」 「平気。 当てるだけ。 ほら、振動して…気持ち良くなれるよ? カワイくイクとこ俺に見せてよ。」 「…っ!」 大好きな凪に低音のセクシーな声でそう言われたら期待に応えたくなった。 「あ、あーッ! んぅ、っ!ァ、イ、イク!イクぅ…! も、いっちゃうよ…!」 前にローターを当てられてその刺激に悶える紅葉。思ったよりも強烈な快感が一気に襲ってくる感じがして驚いた。 加えて凪が胸を口に含んで転がせたり、後ろに指を入れてきて中からも良いところを擽ったのですぐに達してしまった。 「あ、また…? あ、だめぇ…! また…出ちゃうよ…!」 「そんなにイイの?」 「ん、だめ、これ強すぎる…! 無理…!」 「ダメも無理もなしだって。 …もう少し加減するから。 ほら、もう一回。」 「ーっ!」 立て続けにイカされて、疲労困憊の紅葉。 もう休みたかったが、まだ凪自身は満足してないと思い出し、必死に目蓋を開けた。 「凪く…ん!」 彼が挿れやすいように、彼の好きな背後位をとる紅葉。腰を上げて、恥ずかしいけど、目線でもう欲しいのだとおねだりした。 そんな紅葉に凪はあと1つと言った。 「紅葉…、コレ…挿れてみてもいい?」 「え…? それ…?」 オモチャのローターを手に凪は紅葉を見つめた。 紅葉は只でさえ達したばかりで敏感になっている中に機械を入れるのは少し怖くて、でも断って雰囲気が悪くなってしまったり、また凪の機嫌を損ねたくなくて困惑していた。 「じゃあコレ挿れたら終わりにするから。」 「…本当?」 「あぁ。」 「…い、挿れるだけ…? 痛くない?」 「挿れるだけ…。痛くないでしょ? 小さいし、何なら指より細いよ?」 「……それしたら…許してくれる?」 「……いいよ。 いつまでもこんな状態良くないよな? バンドもあるし。 この後はフツーに抱き合って…仲直りしよ。」 その言葉に嬉しくなった紅葉は“うん”と頷いた。 凪は優しく丁寧にローションを追加し、腕で紅葉の腰を支えながらゆっくりと指に乗せた小さなローターを挿入した。 枕にしがみつきながら慣れない感覚に耐える紅葉。 確かに痛くはなくて、凪の「痛くない?」の確認にも「大丈夫」だと答えた。 でも、人工的な違和感が物凄くて次第に不安になっていた。 凪に促されて自身の指を挿入したことはある。 あとは凪の指や、舌、そして凪自身しか受け入れたことはない。 温かさを持たないオモチャの存在が実際の大きさの何倍にも感じてしまい、紅葉は思わず“イヤだ”“無理…”と否定的な言葉を口にしようとした。 でも仲直りしたい…。 それで凪と心から抱き合いたかった。 途中で止めたら約束は無効になるのだろうか? 考えているうちに更に恐くなり、もう止めたくて、逃げ出したかった。 どうしたらいいのか分からなくて溢れてくる涙。平気だと、あと少しで終わるのだと自分に言い聞かせて、涙を必死で隠してなんとか耐えようとする紅葉。 凪はまだ紅葉の異変には気付かない…。 「平気そうだな…。 ちょっとスイッチ入れるよー?」 「っ!」 身体の中から振動を感じて、紅葉は驚いた。 気持ちいいとか、悪いじゃなくてビックリして、その強すぎる感覚に怯える。 元々敏感なので、ローターの強すぎる快感は苦痛でしかなかった。 「…ッ! ぅ…、ぁ…っ!」 しがみつく枕の先に凪の左手が見えた。 震えながら、ギュっとその手を掴む。 少しでも凪に触れて安心したかった。 「紅葉…? 平気…?」 「…っ、ぅ…ぇ、…っ、 ごめ、ん、なさ…い…!」 紅葉がようやく口にした言葉は謝罪だった。 凪は紅葉の異変に気付き、スイッチを切る。 「…っ! 紅葉…っ! ごめん、今抜くから…!」 「えっぐ……!ふ…っ、え…! 凪く…、ごめ…んなさい…! …こ、わい…っ!」 やっと怖いのだと伝えることが出来て、紅葉は涙が止まらなくなった。 「紅葉…! 分かった。 ほんとごめん…! …ちょっと力抜ける? 今取るから…! 紅葉…?」 パニック状態で泣いている紅葉には凪の指示が上手く届かないようだ。 震えながら泣きだした恋人を前に焦るのは凪も同じだった。 「紅葉…!」 凪は紅葉を正面から抱き止めて身体を支えながら膝立ちさせると、キスで唇をふさいだ。 息継ぎのために紅葉の唇が離れ、深呼吸をするタイミングを見計らってローターを引き抜いた。 「っ!!」 しばらく震えながら泣き続ける紅葉を凪は抱き締めることしか出来なかった。

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