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第72話 (9月) (6) ※微R18
結局…
そのまま泣き疲れて眠ってしまった紅葉…
翌朝、起きてみれば身体はさっぱりしていたが、泣き過ぎた目は少し腫れていて、頭はいつも以上にボーっとしていた。
凪は一晩中寝ないで様子を見ていてくれたようだ。紅葉が目を覚ました瞬間からめちゃくちゃ心配してくれたし、たくさん謝ってくれた。
紅葉としても、もう玩具は使わないという約束さえして貰えれば良かったので改めてハグとキスで仲直りをした。
昨日とは違い、やはり凪の腕の中は安心する…。
紅葉は凪にしばらく抱き締めてもらい、またしてもそのまま眠ってしまったようだ。
再び目覚めた時には凪は仕事に出ていて、でも紅葉の好物を作り置きしてくれていた。
昨夜のことは忘れよう…と、愛犬たちと遊びながらゆっくり過ごした。
ヴァイオリンの練習をし、夕食は食べに行こうと凪にLINEで誘われて、慌てて外出着に着替えると外で待ち合わせた。
「お店ここ…?
え…、ドレスコード大丈夫かな?」
思わずそう呟いてしまったのは、お店の外観からしてドレスコードがありそうなくらい高級そうな雰囲気を感じたからだ。
「大丈夫。個室だし。
行こう?」
個室という単語にまた驚きつつ、差し出された凪の大きな手に自身の手を合わせて店へ向かった。
創作フレンチレストランで個室…
何かの記念日だったかな?と紅葉はハラハラしていた。
恐る恐る聞いてみれば、凪は一瞬顔を歪めて「昨夜のお詫び…」と言われた。
「そんな…! いいのに…!
ご飯…トマトのリゾット作ってくれてたでしょ?それで十分だし、元々僕が…」
「ストップ。」
凪は紅葉の言葉を遮った。
「凪くん…?」
「もう止めよ?
…昨夜は絶対全面的に俺が悪い。
その前の喧嘩も…忙しくて苛ついてたとか完全に言い訳だけど…
紅葉が嫌なこと、これからは絶対しないって約束する。
だから…なんて言うか…リスタート?
改めて宜しくってことで…。
え…っと、それでいい?」
「うん。分かった。
僕も凪くんが嫌な気持ちになるようなことはしないって約束する。
ねぇ…乾杯しよ?」
凪が選んでくれた甘口のワインはとても飲みやすくて、紅葉はようやく笑顔を見せた。
その笑顔を見て、凪もようやく安心したようだ。
メインのお肉が美味しくて大きな瞳が更に大きくなる紅葉と、絶妙なソースの配合が気になってあれこれ考える凪…
久しぶりの外食は2人のリスタートにも相応しく、またお互い良い気分転換にもなったようだ。
美味しいディナーとワインを楽しみ、帰宅後は2人で仲良く愛犬たちの散歩。
時折、手を繋いで「ワインも料理も美味しかった!」「あのソース、絶対隠し味に醤油入れてる」などと話ながら歩く。
多忙な時期があるのは仕方ないが、紅葉は寂しかったのだと改めて凪に告げることが出来た。
それだけで胸のつかえが少しラクになった気がした。
それから…日課のリズム練習と紅葉はヴァイオリンの練習も行った。2人の日常が戻った。
しかし実はカップルとしての問題はまだ解決していなかった。
昨夜のやり直しを…と言い出したのは紅葉の方だったが…
「身体平気?
もうちょっと休んだ方が良くない?」
凪は紅葉の身体を気遣って心配もしてくれた。
「優しく…、顔見ながらギュってしながらがいい…。
あとキスも…、いっぱい…。」
「分かった…。」
初心に戻って、ペースはゆっくりめで。
凪は紅葉の反応を丁寧に確認しながら進めた。
お互いのモノを合わせて一度達し、幸せそうにキスを交わす2人…。
次に進むために凪が指で紅葉の後ろを慣らしていこうとした時、紅葉に異変が起きた。
「っ!!」
僅かに紅葉の身体が強ばるのを凪は今日は見逃さなかった。
「紅葉?
…痛い?」
「……こ、わい。」
何でも思ったことを言っていいのだと、凪に言われて口にしたのは「怖い」という感情だった。
「……そっか。」
そりゃそうか…と、凪はそれ以上指を進めることはせず紅葉の髪にキスを落として抱き締めた。
「凪くん、ごめ…!」
紅葉は行為を中断させてしまったことを謝った。
「…ごめんはなし。
…無理しなくていい。
今日はここまでにしよう。
俺もちょっとワイン飲みすぎたし(苦笑)」
中断どころか中止になってしまって焦る紅葉。
しかし凪は優しい顔で紅葉の髪を撫でた。
「でも…っ!」
「焦んない方がいい…。
紅葉が大丈夫になるまで待つから。」
「…うん…。」
凪に優しくそう言われて頷いた紅葉。
それから凪は寝るには早いし、2人でゆっくりしようとベッドヘッドにクッションを当てて背中を預けた。
「紅葉、おいで。
映画でも観る?」
「……。」
「どーした?」
いつもなら凪の胸に背中を預けるのが2人のスタイルだ。
でも昨夜の感覚的になんとなく、顔が見えない体勢は避けたいと思ってしまった紅葉…。
「…その、隣でもいい?」
「…もちろん。」
頭の良い凪は勘づいていた。
お風呂も一緒に入ったが、湯に浸かる朱鷺も向かい合わせだったし、髪を乾かす時もビクっとなっていた紅葉…。
凪は完全に昨夜の行為でトラウマにしてしまったと反省していた。
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