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第95話 (12月) (2)

「お疲れ様ー! すごく良かったよー!」 「紅葉! カッコ良かったよ!」 「みんなノリノリだったの見た?」 次々に声をかけてくれるメンバーやスタッフにお礼を言いながら袖に下がる。 反対側からやってきた凪と顔を合わせると自然とハグを交わした。 「…やっぱお前最高ッ! こんな気持ちイイLIVE初めてだ。」 彼からの賛辞に微笑む紅葉。 練習も曲作りも大変だったが、パートナーと最高のステージを創ることが出来て本当に幸せだと感じていた。 このアンコール公演も終演後にとても話題になった。特に凪のドラムと紅葉のヴァイオリンのコラボはネットニュースでも取り上げられて、音楽業界内でも評判を呼んだ。 2人のプライベートの仲を面白半分で噂する人たちもあの演奏とパフォーマンスを見た後は誰もが自然と納得して大きく頷き、受け入れてくれているように感じている。 紅葉はこれからはもっと自信を持って凪の隣を歩いていこうと決心したのだった。 アンコールLIVEから2日後… 打ち上げも忘年会も辞退し、 紅葉はヴァイオリンコンクールのためにレッスン室に籠っていた。 「はい、もう一度。 姿勢を崩さずに。 華々しい舞台でのご活躍も素敵ですが、基本は大事ですよ。」 「はい…。」 「さぁ、ここからが正念場ですから頑張りましょうね。 このままではお正月休みもなくなってしまいますからね。」 「先生っ! それだけは…っ!!」 クリスマスも年末も関係なく、朝から晩まで練習漬けである。 LinksのLIVEでのヴァイオリンパフォーマンスを知った先生は大胆なアレンジに驚いていて、その出来映えは褒めてくれた。 でも、コンクールはクラシックだから…1度リセットしようね、と優しく紅葉を諭した。 優しい言葉とは裏腹に練習はキツイし、ツラいのだが、頑張ってるのは自分だけではない。 「凪くんもLIVE頑張ってるから僕も頑張らないと…!ここを乗り越えて…お正月はお義母さんたちに会いたいよー!」 忙しくて全然会えていない京都に暮らす凪の家族。 優しい義母と犬好きの義父、気さくな義弟が恋しい……。 帰省したらみんなですき焼き鍋を囲み、デザートには苺を食べる約束をしている。 紅葉は気合いを入れた。 大晦日… 「なんだ、これから帰省するのか…! そりゃあ大変だな。」 ビールを煽りながらそう話すのは凪と紅葉の隣人である池波氏。 「まぁね…。 渋滞なきゃラクなんだけど…。 今年は車の中で年越しだな…(苦笑)」 もちろん凪と紅葉はノンアルコールだ。 建て替え工事を終えて平屋建ての新居が完成したのがつい先週、今日は3人で新居完成祝いと忘年会だ。 段差もなく、バリアフリーの室内はキレイで広々としている。 トイレには手摺りなども取り付けられていて、廊下も台所や風呂場も寒くない。 家具の一部は前の家から引き継いで使っていて、奥さんの愛用していたの箪笥もしっかり耐震グッズをつけて取り付けられている。 池波氏の一番の自慢は介護用にも適応できる高級ベッドだ。 今後歳を重ねても老人ホームには入らず、ヘルパーなどをつけてこの家で暮らす予定なのだ。 そのきっかけとなったのが紅葉だ。 「必要な物とか大丈夫? 帰ったらお片付けとお買い物手伝うね。」 「気にせんで良い。 何でもネットで頼める時代だからな…。 紅葉はコンクールとやらで忙しいんだってな。…少しやつれたんじゃないか? ほら、もっと肉を食いなさい。」 年越しそばだけでは足りないだろうと、池波氏はステーキ肉を買ってくれた。 2人の活躍は船旅の間もチェックしてくれていたらしく、再会するや否や新居のことより2人が頑張っていることを褒めてくれた。 蕎麦と天ぷらとステーキ… もちろん凪が調理担当。 有り合わせの野菜でいくつか小鉢もつけた。 池波氏の新居で3人で食べる。 久しぶりの団欒に紅葉も凪も笑顔を見せた。 池波氏は終始上機嫌でガハハと笑っている。 「ありがとうー! おじいちゃんは相変わらず元気そうで安心したよ。新しいお家暖かいけど、風邪ひかないようにね。」 池波氏は紅葉にみかんを持たせて京都へ向かう2人(と愛犬たち)を見送ってくれた。 「よし、行くか…!」 「うん! 楽しみ、楽しみ、楽しみー!」 紅葉はテンション高く帰省を楽しみにしている。 「あー、着いたらしばらくダラダラしよ(笑)」 凪はゆっくりしたいようだが…果たしてどんなお正月になるのだろうか…。 END

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