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第97話 (1月) (2) ※微R18
三が日を過ぎて少し人が引いてから凪と紅葉は初詣に出掛けることにした。
凪は手袋の上から紅葉と手を繋いでゆっくりと歩く。
今日は昼間でも一段と冷え込むが、こうして2人で穏やかな時間を過ごせれば気にならなかった。
「ありがとね…。」
「ん? 何が??」
凪からのお礼の言葉に首を傾げる紅葉。
「…いろいろ手伝ってくれてるんだって?
ゆっくりしてていーのに…(苦笑)」
元旦は休んだが、翌朝から凪は厨房に立ち手伝いをしていた。
まだ疲れているはずなのに、1日休んだから平気だと黙々と働く恋人を尊敬している紅葉。
自分も少しでも手伝いを…と紅葉は凪には内緒であまり人目につかないような仕事をさせてもらっていた。
でも誰かからその事を聞いたらしい。
「え?
あぁ! 全然!
大したことしてないよー。」
「でも、掃除とかゴミ纏めたりもしてくれてるって。正月から働かせて悪いけど、スタッフも足りないから助かるって言ってた。
あ、客室の折り紙も…見た。
苦手だったのに…スゲーキレイに折れるようになったんだな。」
凪が頭をポンと撫でると紅葉は本当に嬉しそうに微笑んだ。
「ふふ…、役に立ててるなら良かったぁ。
凪くんが一生懸命働いてるの見てカッコイイなって思ったから、僕も真似したくなっただけだよ!
鶴の折り紙はやっと合格点もらえるようになったから嬉しくて…まだまだいっぱい作るからね!
あ、着いた!
何お願いしようかなぁ。」
ごく自然にそう話す紅葉に凪は惹かれている。きっと実家の家族やスタッフも同じだろう。
「…コンクール優勝じゃねーの?」
「あ、そういうのでもいいの?
じゃあ…家族みんなと凪くんとユキくんと池波のおじいちゃんの健康と、アッシュがレギュラー選手になれますようにと、フィンの空手の試合がいい結果出ますようにと、レニの勉強が…」
「待て待て(苦笑)
多すぎ…!」
握り締めているお賽銭5円でいったいいくつ願うつもりなのかと笑う凪。
でもやはり、自分のことより家族や友人を想う紅葉は誰よりも優しいと思った。
「結局何を願ったんだ?」
「“みんな笑顔で一年過ごせますように!”」
「…いいね。」
結局シンプルなお願いにしたようだ。
「凪くんは?」
「んー?
“いつも紅葉の笑顔を見られますように”かな。」
「っ!
何それ…!うれしー…!
そんなこと言われたらずーっと顔がにやけちゃうよ…っ!
あ…、おみくじ引こうー!」
おみくじの結果は仲良く小吉だった2人。
「地道に精進しろってことねー。
まぁ、いいや。」
「おみくじの日本語ってすごく難しいね…。
後で調べて分からなかったらお義父さんに聞こう…!
あ、“恋愛、良き縁有り”だって!」
「へぇー…。結婚は?
“遠からず” 同じだな。
紅葉は“学業、怠るべからず”
…サボるなだって。(笑)」
「サボってないよ!」
わいわいと盛り上がり、神社を後にした。
駐車場に停めた車内で温かなコーヒーを飲みながら交渉を始める凪。因みに紅葉はココアの缶をフーフーしている。
「なぁー…
…ホテル行こ?」
ハンドルに手を置いたままに、紅葉の顔を見て聞く凪。
「っ?! アッチぃ!
え、…や、だ…!
帰ってからじゃダメ…ですか?」
ココアを吹き出し、何故か敬語の紅葉に苦笑する凪。
真っ昼間だし、抵抗があるのは理解出来るが、朝も夕方~夜も手伝いがあるので自由時間はどうしても昼間になってしまう。
貸し切り風呂の温泉に2人で入ったり、まぁその延長でイチャイチャくらいはあるが、実家の2人の部屋だと絶対最後まではさせてくれないし…
ここ数日間、不完全燃焼の状態に凪は痺れを切らしていた。
「まだ2日あるし、帰ったら即仕事だしさー。
ダメ?
…あー、分かった。
紅葉がイヤならいーよ。
帰ろ。」
シュンとした顔で凪にそう言われると弱い。
「………。
あ、…待って。」
実家へ向けて走りだそうとした凪を止めた。
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