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第100話 (1月) (5) ※R18

「凪くん…! 義くんと彼女さん…大丈夫かな?」 「ん? あぁ…さっきの話聞こえた?」 自室に戻った2人はベッドの上で寝る支度をしながら先ほどのことを話していた。 「うん…。 すごくいい人そうだけど、でもマイノリティについてはいろんな考えの人がいるし…特に日本の年配の方…例えばご両親とかは…受け入れるのは難しいよね?」 「まぁ、そうだな…。」 「みんな笑顔で過ごせますようにって、お願いしたのが…叶うといいんだけど…?」 「…叶うよ、きっと。 義くんはやる男だし! あと、万が一の事態になっても俺は絶対紅葉と離れないから。紅葉も絶対俺と離れないって約束して?」 「……万が一って? もうここに来れなくなったり、お父さんお母さんたちに会えなくなったとしても…ってこと?」 「…まぁ…簡単に言うと…そう。」 「…! ヤダ…! …けど、ん…。 …分かった。 約束する…!」 チュ…と凪の頬にキスを落とす紅葉。 凪はそのまま紅葉の後頭部を大きな手で押さえて深く口付けた。 「ん……、ふ…… 凪……っ!」 昼間、してきたのに… この部屋ではダメだと何度も伝えていたはずなのに… 何故だかイヤもダメも言葉に出来なくて、服を脱がしにかかっている凪の愛撫を受け入れる紅葉… 「凪く…、ん、声が……ッ!」 「なるべくキスしてる。 …俺の腕とか首噛んでいいから…」 「あ…義くんまだ下にいる? バレちゃったら…それこそ恥ずかしくて顔も見れないよ。」 「俺のせいにしていいから…! 紅葉…!」 「ん…、んん…ッ! 凪…っ!」 「紅葉… 好きだよ。」 「…! 僕も…! 好き、大好き…!」 顔を寄せ合って愛を囁く…。 幸せなのに何故か切なくて、愛おしくて…指を絡ませて手を繋いだ。 ゆっくりと繋がると溶け合うように気持ちが良くて幸福感で紅葉の瞳からは涙が溢れた。 それを舐め取った凪は優しくキスをして「愛してる」と呟いた。 「なぎ…っ! 僕も…愛してる…! …ずっと……こうしてたい…!」 「紅葉……」 凪は紅葉の身体を抱き締めながら何度も甘いキスを贈ったのだった。 翌日は帰京の日。 夜の出発で朝着いて、紅葉は午後からヴァイオリンのレッスンだし、凪も仕事だ。 昨夜のことがあってか、早苗にくっついてしくしくと涙を流す紅葉はまるでこどものようだった。 「あらあら…! 綺麗なお顔が台無しよ? 大丈夫? 昨夜も泣いてなかった? お部屋の前を通ったら泣き声が聞こえて心配してたの。もし凪に苛められたならすぐ言うのよ?」 「…ッ?! …うん、うんっ。」 もしかして行為の声が漏れてたのかと驚く紅葉… 泣いていることを理由に俯いて赤面した顔を隠し、なんとか平穏を装う。 「………。」 荷物を積みながら2人の会話を聞いていた凪は「ベッドの中で以外は泣かせてねーよ」と心の中だけで呟いていた。 「紅葉くん、これお菓子! 練習大変だと思うけど、お友達と食べてね!」 「わぁー! たくさん! ありがとう!」 「本番、見に行けそうだったら応援に行くわね。」 「ほんと?」 続く会話ではもう泣いていなかったので、安心する凪。 「凪くんこれ…半分持って帰って?」 義父の正が差し出したのはビール3ケース… 下戸なのに福引きで当り、2ケース分は成人してるスタッフに配ったり義が飲んでいるが、彼もあまり飲める方ではないのでまだ残っていて期限が今月中らしい。 紅葉といい、義父も福引き運がない。 他にも日本酒を数本引き取ることになった。 「ありがとう。 …さすがに飲みきれないから誠一にあげてもいい?」 彼なら喜んで消費してくれる。 「もちろん。 よろしくね。」 「今度はまたみんなで遊びに来なさいね。」 両親に挨拶を済ませて愛犬たちを車に乗せるとゆっくりと走りだした。 「寝てていーよ。 昨夜あんまり寝れてないでしょ?」 凪は朝の仕事のあと仮眠を取ったが、紅葉はいつも通りに起きて手伝いや早苗と買い物に出掛けていた。 「うん…、ありがと。 まだ起きてるけどそのうち寝ちゃうかも…! ねぇ、凪くん…?」 「んー?」 「帰ったらさ…、 ちゃんと…ラブラブしてくれる?」 どうやら昨夜は声を我慢することに気を配り過ぎて心は満たされたが、身体の熱はまだ燻っているようだ…。 「……ちゃんと…?(苦笑) あー、うん。もちろん。 ただ……お互いの時間と体力に余力があったらね?」 スケジュールは年明けからみっちりなのだ。 「はは…! そーだったぁ!」 紅葉は夜空を見上げてそう呟いたのだった。 END

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