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第103話 (2月) (3) ※微R18
凪からもらった花束の中から…ずっと持ち歩いていたせいか少し傷みが出てしまったものを一輪だけ選んで花びらを湯船に浮かべた。
「はぁー…!
気持ちいい…。
なんだか王様にでもなった気分…!」
お湯に浸かり、花びらを両手に掬う紅葉。
酷使した肩や腕、手を凪にマッサージしてもらい、そんなことを呟いて彼を笑わせた。
因みに髪も身体も凪に丁寧に洗ってもらい、髪にはトリートメントまで施してもらった。
まさに至れり尽くせりな状況に贅沢だなぁとご機嫌だ。
「王様…?(笑)
いや、やっぱ王子じゃね?
今日の紅葉、凛としててさ…。
すげー綺麗だなって…
冗談じゃなくて、俺ずっと見惚れてたよ?」
「ほんと…っ?
嬉しい…!
僕、頑張った甲斐があったよ!」
「紅葉のご両親もお祖母ちゃんも喜んでると思うよ。
俺も…こんなスゴい人が自分の恋人なんだって思うとめちゃくちゃ誇らしいし、自分も負けずに頑張らないと…って改めて思った。」
「凪くんはずっと頑張ってるよ?
次はまた2人でステージに立とうねっ!
いろいろ迷惑かけたのに…サポートしてくれて本当にありがとう。」
紅葉は改めてお礼を述べた。
年明けからは本当に練習漬けで、疲れきって日常生活にボロが出ていたはずだ。
確か、靴のまま家に上がったり、ソファーで寝落ちしたり、冷蔵庫に皿をしまい、食器棚におかずをしまうという間違えをしたり…。
多分その他にもいろいろやらかしていただろうけど、凪から咎められたことは1度もなかった。
紅葉は感謝の気持ちを込めて背中から抱き締めてくれている彼の頬にキスをした。
「いーえ。
…そうだな、またコラボしよう。
あー、そうそう…!
ご褒美、何がいい?」
「ご褒美? いいのっ?!
…んー…? 焼き肉!」
「やっぱりな(笑)
光輝がいい店押さえてくれるらしいよ?
みんなでお祝いしようって。」
「わぁーい!」
「あとは?」
「唐揚げと肉じゃがとお魚を甘じょっぱく煮たやつ!
作ってくれる?」
ご褒美の希望が全部食べ物で思わず吹き出す凪。
コンクール直前は緊張感から食も細くなり、年始に太ったと言っていた分以上に痩せてしまった紅葉。
終わった途端に食欲も復活したようだ。
「はは…っ!(笑)
もちろん作るけど…食い物以外は?
…俺からも何かあげたいなぁって思うんだけど…!恋人として。」
「っ!!
じゃあ……じゃあね、
僕だけの王子様になってキスしてくれる?」
「…もちろん。」
優しく唇を奪われた。
凪の唇が離れる瞬間、舌先で下唇を舐められて紅葉は身体をビクン…っと震わせた。
「…キスだけでいい?」
色気の溢れる凪に聞かれた紅葉は恍惚とした表情で首を横に振った。身体を反転させて手を伸ばす。
「もっと……!」
凪はフッと笑って再び紅葉に口付けた。
お風呂を出て、着替えとドライヤー、水分補給を済ませる。
平九郎と梅におやすみを伝えて、手を繋いで寝室に向かった。もちろん、紅葉は左手薬指に指輪を嵌めて。
ドアを閉めると同時に2人の距離はなくなる。
ゆっくりとキスをされて、すぐに絡み合う舌…
お互いの身体に触れ合いながら何度もキスを繋ぐ…
「なんか…熱くね?」
「…ん?」
「いや…、紅葉の身体…!
少し熱い気がする。
もしかして熱出てない?」
凪がいつもより僅かに高い恋人の体温に気が付いて心配そうに身体を離した。
「平気だよ…?
寒気とかもないし…。
お風呂で少し逆上せたのかも?」
「…疲れが出たのかもしれないぞ…?
待ってろ、今体温計持ってくる…!」
「あ…っ! 待って!」
紅葉は部屋を出ようとする凪の腕を掴んだ。
「行かないで。
大丈夫だから…!」
「でも…!」
戸惑う凪を見つめる、紅葉は続けた。
「凪くんのおかげで…今日まで頑張れた。
何て言うか…もし凪くんと出逢ってなかったらコンクールに挑戦することもなかったと思う…。
…すごく緊張したけど、ずっと凪くんが支えてくれたから…実力以上のものを出せたんだと思う。…ありがとう。
本当に大好き…!
僕を…、愛してくれる?」
彼の手を握りながらそう訊ねる紅葉。
真っ直ぐな想いに凪の心も動かされる。
「……そんなこと…言われたら俺も歯止め利かなくなるよ?
だって…俺の方がありがとうだよ…?
紅葉と出逢って一緒に音楽やり始めてからどんどん可能性が広がって…夢中になれる。
それがスゲー幸せなんだよ。
もちろん、こうして一緒にいる時間も。
…一生、愛し続ける。
俺には紅葉だけだ。」
「凪くん…っ!」
紅葉は目を潤ませ、凪の胸に飛び込んだ。
ギューっとしばらくの間2人で抱き締め合う…。
幾つものキスを交わして、控えめにつけたエアコンで室内が暖まる頃、紅葉はゆっくりと部屋着を脱がされた。
「寒くない?」
「うん…。
でもすっごいドキドキしてる…!」
「…ほんとだ。
心臓の音すごいな…。
緊張してる?」
「…緊張と…、期待?」
「それは…、十分に応えないとね?」
ふふ、と笑い合ってキスをする。
深くなるキスの間に手を繋がれて、凪がその手を自分の口元に寄せると優しい顔で指輪にもキスをした。
その様子があまりにも素敵で紅葉は“やっぱり凪くんが自分の王子様だ…!”と想いながら赤面していた。
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