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第106話 (3月) (1) ※微R18
珍しく紅葉の方からデートの誘いがあり、凪は行き先を知らされないまま彼の愛車(軽自動車)の助手席に乗り込んだ。
平均身長を越える凪には少し狭い車内だが、その分2人の距離も近くてなんだか新鮮だ。
凪はせっかくなので、たまにはハンドルを握る恋人の横顔と助手席からの景色を楽しむことにした。
3月に入ったとはいえ、まだ体感温度的には真冬の夜中…
2人が向かった先はイルミネーションを展望出来る広場だった。
テレビやSNSで話題の有名な観光名所というわけではないのでそこまで混んでいなかった。これならゆっくり見て回れそうだ。
派手さはないが、逆にレトロな感じが良いと、穴場スポットとして人気らしい。
青色を中心に一面に輝く光…
「さみぃけど、幻想的で綺麗だな。」
「うん。キレイだねー!
今日までみたいだから見に来れて良かったぁ。」
同じ経験を共有出来る喜びを感じながら紅葉は凪を見つめた。
「そっか…。
紅葉、少し歩こうか。」
手を差し出されて、少し迷ったが、凪の左手に自らの右手を重ねた。
周りのカップルたちもイルミネーションと隣の恋人に夢中だから、くっついて歩いていれば男同士で手を繋いでいても目立つことはなさそうだ。
必要以上に人目を気にすることはないが、有名人だからとデート中に騒がれるのは嫌だった。
「行こ?」
「うん…っ!」
これから先の未来を共に歩むことを決めた2人は堂々と歩き始めた。
しばらく歩き、紅葉は辺りを見渡してから凪の袖を引いた。
「凪くん…!
少し屈んで?」
「ん?」
顔を寄せた凪の頬にキスを落とす紅葉。
「ふ…っ。
可愛いことするね。
…せっかくだし、写真撮ろう。」
「うん!
映えるねー!」
「映え、ね…(苦笑)
……もうちょいこっち向いて?
…ん、…はい、撮れた。」
「っ!!
これ、映えてるけど…、でもインスタには載せれないよ。」
凪のイタズラでキス写真を撮られてしまい、あたふたする紅葉。
「デートでここに来てキスしないなんてもったいないだろ?」
「もう…ッ!」
その後、普通のツーショトも撮ってから車へ戻った。
「寒かったね。
あ! 珈琲持ってきたんだよ。飲む?」
「おー、マジ? もらう。
さすが。 気が効くね。」
「だって僕が誘ったデートだもん!」
紅葉は得意気にそう話し、水筒に用意してきた温かい珈琲をキャンプ用のマグに注いだ。
「美味しい?」
自分用にミルクと砂糖を足した紅葉はふぅ…と息を吹き掛けながら凪に聞いた。
「あぁ。 ありがと、暖まる。
紅葉、大丈夫? 鼻赤いぞ?(笑)
身体冷えてない?」
「うん、平気ー。
…でもやっぱり寒いからお家に帰ったらお風呂に入ろう? …一緒に…。」
「……一緒に…? 風呂に…入るだけ?」
凪が含みを持たせて聞く。
声が明るいのはご機嫌な証。
「…あ、えっと…。
明日、スケジュール変更になって……。
打ち合わせだけだから……その…!」
「へぇー……。
じゃあ…、早く帰ろうか。」
「…うん。」
十分伝わったらしく、凪は紅葉のマグを受け取ると髪にキスを落とした。
帰宅後のバスルーム…
「……なんも見えねぇ…。
これ、入浴剤入れすぎてない?」
「ん…っ!
そんなことないよ…?
こういう色なんだって…。
あ…っ、だ、め…!」
雰囲気を出すための入浴剤とバスルーム用のランタンの演出をしたのは紅葉…。
しかし恋人の裸体が見えないと凪は少し不満のようだ。
お湯の中、手探りで紅葉の身体に触れる凪の大きな手は明らかにそういう目的を持って動いている。
紅葉は逆上せるから…と、そっと止めるのだが、重なるキスを拒むことは出来なかった。
「…ぁ…んっ!
や…凪…ッ!
ダメ……!あ…ッ!」
「…可愛いな。
こっちおいで?」
先ずはキスに集中したくて、凪は紅葉を向かい合わせに変えると自らの膝上に乗せた。
「ん、んん…っ!
凪…っ!
あ、そこは…待って…ッ!
…お湯、入るのヤダぁ…!」
キスの合間に凪の手が下肢と、後ろにも及んできて身を捩って焦る紅葉はそう訴えた。
「んー? そっか…、ごめん。
久々でガッツいたわ(苦笑)
ぁー、うん。 …上がるか。
逆上せるか…湯冷めしそうだし。」
「ん。」
「…準備、手伝う?」
「っ! 大丈夫…っ!
恥ずかしいから先行ってて…。」
凪は了解…と、紅葉の頬にキスを贈るとバスルームを後にしたのだった。
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