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第112話 (4月) (3) ※微R18
「えっとねー…?
あ、それ!…ん?その下かな?」
「ここ?」
スマホの映像を見ながら指示を出す紅葉。
電話の相手は双子の片割れの珊瑚だ。
「うん。
あった?」
「ねーよ…。
あ、あった。
奥に…!これ、分かんねーよ!(苦笑)
あ、あとアレってどこー?」
「ごめーん。
でも良かった!
それをあげてくれる?
カップ2杯だよ。
あれは…パントリーの2段目かな?」
あれ、それで話が通じるのは双子ならではなのか…普段離れて暮らしていて久々の再会でも支障はないようだ。
「平ちゃんたち元気?
映してー!」
「了解ー。
おー元気、元気ー!
なぁ、部屋どんな感じ?
ちょっと見せろよ。
…うわ…っ!
スゲー……
めちゃくちゃいい雰囲気でヤれそうだなー?」
オーナー(翔の父親)の配慮でグレードアップされた部屋は確かに広くて豪華だ。綺麗な夜景も眺めることが出来る。
「もうっ!珊瑚ー…っ!(苦笑)」
「じゃあ新婚初夜、お前も少しは積極的に頑張れよー!
あ、家の前マスコミ来てるから明日もいるか知らねーけど、帰り気をつけろよ。」
珊瑚には平九郎と梅の世話を頼んできたのだが、餌の在庫が分からなくて連絡してきたのだ。
カメラをONにしたスピーカーモードで通話していたので、先ほどの珊瑚の発言が恥ずかしくて凪の顔が見られない紅葉……。
「餌あったって?
相変わらずだなぁ(笑)」
凪はため息をつきながら笑っていた。
気まずい…と思いながらも紅葉も笑って誤魔化した。
そろそろお願いしていた“あるもの”が届く時間だ。
「あ、来た…!」
他愛ない話で間を持たせていると、タイミング良く部屋のインターフォンが鳴った。
「何か頼んだのか?」
「ふふふ…!」
紅葉が「サプライズだよ!」と笑顔を見せる。
カートには小振りのケーキ
“Happy Birthday 凪”のプレートが乗っている。
パーン!と、クラッカーまで鳴らす紅葉。
「凪くん、28歳のお誕生日おめでとう!
シャンパンもあるよ!」
「……ありがとう。
えーっと…うん。なるほど?」
「??
嬉しくなかった?
お腹いっぱい?」
なんだか困惑している凪に首を傾げる紅葉。
「いや、嬉しいよ。
サプライズ…ありがとう、紅葉。
あー…、でも…」
「ん?」
その時、再びインターフォンが鳴った。
ホテルマンが少し困惑しながら別のカートを差し出した。
「えっ?」
カートにはデジャビュのように小振りのケーキとシャンパンが乗っていて驚く紅葉。
こちらのケーキには“HappyWedding”のプレート…
凪からのサプライズだ。
結婚式のあとの食事会でもウェディングケーキを用意していたのだが、小麦(凪の実家の愛犬)が突っ込んでほとんど食べられるところがなくなってしまったので改めて用意してくれたようだ。
「ごめん、カブったな……」
「うん……」
2つのケーキと2本のシャンパンを前に顔を見合せ爆笑する2人…
「あー、ウケる!
こんなことあるんだな。」
「ホントだねー!」
「サプライズだけど、ちょっとこれは…相談するべきだったな…(苦笑)」
ケーキを運んでくれたホテルのスタッフも困惑していたはずだ。
「ありがとう。
“HappyWedding”かぁ…!
嬉しい!」
「あと…まぁ、これはオマケ。
…結婚してくれてありがと。
これからもよろしく。」
凪はそう言って薔薇の花束を差し出した。
「っ!」
小さめの花束だが、品のある深紅の薔薇はとても美しくて紅葉は感動で瞳を潤ませた。
「ありがと…っ!
嬉しい…!
あの…、僕はカードを書いたんだよ。
はい……。」
「ありがとう。」
凪に手渡したカードには“凪くんと結婚出来て幸せです。末永くよろしくお願いします。”と書かれていた。
2人は微笑み合ってキスを交わした。
「ふふ…。」
「で。
…ケーキどーする?(笑)」
「ねー…、どーしよ?(笑)」
再び笑いながらせっかくだからとケーキとシャンパンを並べて2人で写真を撮った。
小振りとはいえ流石に食後に2つのケーキは食べきれないので、1つは冷蔵庫で保管して持ち帰ることにした。
もちろんシャンパンも。
乾杯して仲良くケーキを食べて、夜景を眺めながらお風呂に入る。
「なんか…緊張するね?」
「“新婚初夜”だから?
心配しなくても明日からツアーリハだし、あー、その前にフィンの試合も観に行かないとな。だから…まぁ、そんな激しいことにはなんないよ?…多分。」
今回来日したのは珊瑚と弟のフィン。
2人ともサプライズで結婚式に駆け付けてくれた。
珊瑚は光輝が親族兼カメラマンとして呼んでくれて、予定していなかった結婚式の写真をたくさん撮ってくれた。
フィンは凪の影響で習い始めた空手頑張っていて、日本の大会に出場出来ることになり、スケジュールを調整して式にも顔を出してくれた。明日の大会には珊瑚と3人で応援に行く約束をしている。
「そうだね。
えー? 多分なの?(笑)
……ん、優しいのがいいな。」
「…了解。」
凪は優しく唇を合わせた。
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