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第120話(6月②)(2)※R18
「夏休みになったらフィンが来るね!
凪くんとトレーニングするのをすっごい楽しみにしてるみたいだよ!」
「おー…。また大会出れるってスゲーよな。
スケジュール的に応援行けるかビミョーだけど、とりあえず何日かジム連れてこうと思って話してるから。」
「旅費が出るから良かったよ!
ほんと?僕も見にいくー!」
弟に会えるのが待ち遠しいとわくわくした笑顔で話す紅葉を見て和む凪。
タクシーの中だが思わずキスしたくなって顔を近付ける…
ぐー…きゅるる…!
唇が触れる寸前で紅葉のお腹が鳴った。
「っ!」
「…さすがだな(笑)」
二重の意味で恥ずかしくなり顔を赤くする紅葉と、漫画のようなお約束展開に笑う凪。
「お、お腹すいたの…っ!」
「じゃあたくさん食べて、それからだな。」
含みを持たせた彼の言い方に「もう…っ!」
と返しながらもそっと指先を繋いだ。
~翌朝~
「んー……、
あー…ヤベ…、飲み過ぎた。
…何時?」
珍しく飲み過ぎた自覚のある凪はダルそうに大きな身体を起こして昨夜の記憶を辿った。
美味しいドイツ料理とビール、ワインを楽しみ、馴染みの店主夫婦と笑い合いながら新作メニューの試食をしたり、お互いの昔話から近況までたくさん話をした。
楽しく酒に酔い、紅葉と2人本を抱えながらタクシーで帰宅したところまでは覚えている。
現状、隣で眠る紅葉の姿を見る限り…その後はだいぶ盛り上がったようだ。
ここ数日、仕事が詰まっていて寝不足だったとはいえもしかしたら紅葉に何のフォローもせずに寝落ちしてしまったかもしれないと凪は焦った。
「紅葉…!起きて?」
「…んー…?ん、な?」
「……身体平気?
ってか…昨夜…、俺なんかやらかしてねぇ?」
「んん?
…覚えてないの?」
目は開いてないが、会話してくれる紅葉。
ふふ、と笑っている辺り怒ってはなさそうだ。
「ビミョーに…(苦笑)
ごめん、マジで昨日は飲み過ぎた…(苦笑)
いや…だいぶイイ感じだったのは覚えてるけど、合ってる?」
「うん…っ!
すっごくイイ感じだったよ?
大丈夫。別に痛いことも怖いこともされてないよ?」
紅葉は照れ笑いをしながらベッドの上でゴロゴロ身体を揺らして答えた。
飲み過ぎたねー!と話す彼はアルコールの量はさほど飲めないが弱くはないらしく、二日酔いもなさそうだ。
甘く愛しあったのだろう、紅葉の身体には無数のキスマークが見える。
特に太ももの内側あたりが集中的で、凪は掌で紅い痕を撫で己の執着心に苦笑した。
次のモデルの仕事の日までに消えるだろうか…。
「んっ、ぁ、な…っ!あ、やだ…、」
不意に後ろに凪の指が触れて驚く紅葉。
彼の腕を掴む手がギュッと強ばる。
「……やっぱそのままか…。
ごめん。
とりあえず…掻き出さねーと…。
風呂入れてくるからちょっと待ってて。」
「っ!いい、大丈夫…!
自分で出来るよ…!」
「ダメ。」
きっぱりと言われて「恥ずかしいのに…」と返しつつも諦める紅葉…。
その結果…
「平九郎のカットと梅のシャンプー連れて行ってくるから、それ食べたら休んでて。」
気だるい感じでソファーに座る紅葉の前に雑炊を置いた凪。食べやすくて栄養価もあり、消化に良いお手製の雑炊は香りからしてもとても美味しそうだ。
「…はぁい。
平ちゃん、梅ちゃん、またあとでね。
行ってらっしゃい!
おやつ用意しとから頑張るんだよー!」
結局…バスルームでは洗うだけでは済まなかったのだ。
まだ熱の燻る身体は熱するまであっという間だった。
「んっ、は…ぁっ、あ…ッ!」
「…洗ってるんだから指締めたらダメだって…(苦笑)」
「だって…っ!ぁ、んー…っ!
や…。あ…! そこ…、ん…!あ、だめ…!
やだっ! …やめちゃ、だめ…っ!」
「……煽り過ぎ。
キャンプ行けなくなるよ?」
久々の休日。
今日から一泊でキャンプに行く予定なのだ。
もちろん愛犬たちも一緒に。
「あ、やだ…!
や、行く…!
ん、あ…、イク…!…いきたいよ…!」
「え、どっち…?(笑)」
「イジワル…!
…ねぇ、…してよ…!
凪の、だって…すっごく硬いよ?」
密着させた身体。
凪のモノに手を伸ばす紅葉はうっとりと呟いた。
「だから煽んなって…!
昨夜散々ヤってても、さすがにこんなエロいの見て反応しないほど枯れてねーよ(苦笑)」
「んっ…!あ…ッ!なぎ…っ!
んん…はっ、はぁ…ッ、きて?
…お願い…!」
「っ!…サイコーだな。」
妖艶に誘う紅葉の姿を前に凪はスイッチが入ったようだ。
その後はバタバタと時間に追われながら、紅葉は若干ふらふらの身体でキャンプへ向かったのだった。
その夜…
「星空見れなくて残念だねー。」
「まー、梅雨だからな…。
まぁ、平九郎と梅のリフレッシュには良かったんじゃねー?
帰ったらまたシャンプーだろうけど(苦笑)
…また梅雨明けしたら来るか。」
「そうだね!また来たいね!」
そんな話をしながら家とは違う狭いベッドの上でキスを交わしていると、凪のスマホに着信があった。
「タイミング悪…(苦笑)」
「お仕事?」
「……母さんだ。
はい?うん、…えっ?」
電話は凪の母親からで珍しく驚いた様子の凪を前に紅葉も心配そうな顔で様子を伺った。
しばらく真剣な表情で話す凪。
紅葉は彼の手を繋ぎ見守った。
「はぁ…。
あー、あのさ。
義父さんがヘルニアで入院と手術することになって、今料理人も足りないらしくて…
しばらく実家に帰ることになりそう。」
「っ!
お義父さん大丈夫なの?」
「命に関わる病気じゃないけど、腰に痛みがあってしばらく仕事出来ないんだ。
母さんと義くん(義弟)だけじゃ無理だから向こうに行こうかと…。
…すげー忙しくなる。
LINKSの曲作りとLIT JのレコーディングとLIVEもあるし…
スケジュールずらせないのも多い…。
そこにプラスして家業とかさ…どうやったらこなせるか分からない…、俺一人なら…。
だから…紅葉、お前も仕事の都合あるし悪いと思うけど…一緒に来てくれる?」
「…もちろんっ!」
ワンっ!
即答する紅葉と続くように返事をした愛犬を前に凪は少しだけホッとした顔を見せた。
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