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第125話(6月②)(7) ※微R18
紅葉が日課のおやつを食べて、ドッグランで愛犬たちを遊ばせながらヴァイオリンを奏で、曲を考えていた時…
「紅葉くーん!
悪いけど急ぎのお使いお願い!
明日お客様が見えるのにお茶菓子用意するの忘れちゃって…!お店18時までなのよ!
玄関にメモとお財布置いておくから!」
「…はぁーい!」
忙しい早苗は慌てた様子で用件を伝えると宿へ戻って行った。
「…平ちゃんたちも行く?
お店までお散歩にしようか。
ヴァイオリン置いてくるね。」
支度をして向かったのは近所の老舗和菓子店。歴史を感じる店構えと店内の美しい和菓子に紅葉は興味津々だ。
「あ…!」
「いらっしゃい。
あら…?この前の…!
その節はご親切にありがとうね。
膝が悪いから助かったわ。」
「いいえー!
僕もお饅頭ご馳走さまでした!
また会えて嬉しいです。」
店主のおばあちゃんは偶然にも先日駅で道案内をした相手だった。工事のため急な階段しかなく、紅葉が迂回路を探してあげたことをとても感謝してくれているようだ。
思わぬ再会に喜び合い、のんびり世間話をしながらいざお会計をしようとすると財布が見当たらない…。
どうやら作曲に意識が集中していた紅葉はスマホとメモとお散歩セットだけを持ってきてしまったらしい…。
「あの…、電子決済とか使えますか?」
「なんとかPay?うちはやってなくてねー!
勧められるんだけど、年寄りには難しくてねー。」
「…そうですよねー。」
この店にはめちゃくちゃアナログなレジしかないし、むしろおばあちゃんはレジじゃなくてそろばんを使っていた。
紅葉からしたら電子決済よりそろばんの方がよっぽど難しく見える。
曲の続きを考えながらのんびりお散歩してきた上に話し込んでしまったので閉店時間が迫っているが、ここは事情を話してお財布を取りに戻るしかなさそうだ…。
おばあちゃんはお代は後日でも大丈夫だ、むしろ先日のお礼に無料でいいとまで言ってくれるが、そういう訳にもいかない。
どうして肝心な時に失敗してしまうのかと自分を責めたくなるが、今は何より時間がないので急がないといけない。
「えっと…!」
紅葉が慌てていると手の中のスマホが鳴った。
「っ!」
驚いて画面を見てみると凪からだった。
「紅葉? 母さんに買い物行ったって聞いたけど…。あー、財布忘れてるけど、平気?」
「……平気じゃないです。」
通話から10分も経たないうちに車で財布を届けてくれた。
「ごめんなさいー!」
忙しい時間に余計な手間を増やしてしまい、店先で愛犬たちと待っていた紅葉は凪の腕におでこをくっつけ項垂れながら必死に謝る。
「いいよ(苦笑)
今日落ち着いてるし。」
凪は紅葉らしいと笑い、ポン…と頭を撫でると2人で和菓子店の中へ。
これはまたイケメンが来たと店主のおばあちゃんはご機嫌で紅葉お気に入りのお饅頭をおまけしてくれて無事にお使いを済ませることが出来た。
帰宅後…
少し落ち込んだ様子の紅葉を気にかける凪。
「そんな落ち込まなくても…(苦笑)」
「だって…!」
「…紅葉が一生懸命手伝ってくれてるのは母さんたちも分かってるし、結果的に何の問題もなかっただろ?」
「それは凪くんのおかげです…!」
「はは…っ!もう気にすんな。
そういえば曲考えてたって言ってたけど…だいぶ集中してた?
どんな感じ?」
データは?と聞かれて首を振る紅葉。
もう夜でヴァイオリンを弾ける時間でもないので、鼻歌で披露した。
「…なるほど。」
短くそう答えた凪はすぐに打ち込みでデータを作ってくれた。
「わぁお…!
すごいね!」
「すごいのはお前…。
いい曲になりそうだな。次は?
ってか、この作曲方法みなと光輝のとこもこんな感じだって言ってたなー(苦笑)」
2人はその後も集中して作業を進めた。
「眠い…?
もうこんな時間だもんな…。」
気付けば日付を越えそうな時間で、紅葉は少し眠そうだ。凪は今日はここで切り上げようとPCを閉じた。
「寝る?
それとも…一緒に貸切風呂行く?」
「っ!
お風呂っ!」
目が覚めたように元気良く答えた紅葉。
凪は笑いながらスマホで義に一報を入れた。
~貸切露天風呂~
「はぁ…、最高…っ!」
湯船に浸かる紅葉は至福の表情で両手で湯をすくった。旅館の仕事は体力仕事も多くて大変だが、温泉があれば疲れも取れるし、お肌もキレイになるし無敵だと紅葉は思っている。
「もう暑くない…?」
凪は半身だけ浸かり、夜風にあたっているようだ。
「気持ちいいよー!
ねぇ凪くん、冷えるからこっちきて。
あのね…、後ろからギュッてして欲しいからちょっとだけ一緒に入ろうよー!」
凪の元へ向かった紅葉は少し照れながら彼の手を引いて導いた。
「暑いって…(苦笑)」と、言いながらも紅葉の望み通りにバックハグで腕の中に閉じ込めて静かに2人きりの時間を楽しむ凪。
「…なんだかいい時間だね。」
紅葉がそう告げて後ろを振り向く。
凪は同意するように優しいキスで応えた。
「ん……っ、ふ……、っ…」
2人の唇と舌が合わさる度に息継ぎとお湯の跳ねる音が響く…。軟らかい湯の中で触れる紅葉の肌はいつも以上に滑らかで心地好い。
「ん…」
深く重なるキスに紅葉は堪らず凪の腕を掴む…
「っ、 ……あっつ!!」
先に限界がきたのは凪で、これ以上は逆上せるとストップをかけた。
紅葉も「あつい…」と呟いた。
でもそれはどちらかというと身体の中の熱の方なようだ。
「……こっちきて。」
凪は紅葉の手を引いた。
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