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第129話(7月)(2)
「紅葉ー?」
「な、何…。」
「疲れてるとこ悪いんだけどさ?」
「う、うん…?」
久々の2人きりだし、夜のお誘いかな?とドキドキする紅葉。
「…ちょっと付き合わない?」
しかし凪が指差したのは、防音加工のされた2人の専用練習部屋だった。
その意外性に一瞬驚いたが、すぐにワクワクした気持ちでいっぱいになる紅葉。
「…うんっ!!
やりたい!」
「マジ、全然練習時間取れてないからさー。
え、何からやるー?」
「えっとねー…」
翌日
「ヤベぇ、眠い…。」
「ふぁーあ…。」
凪に続いて紅葉も欠伸をしている。
「…何ー?
実家から戻ってきて、久々の2人きりだし?
まさか朝までラブラブしてたの?」
「違う…。」
「練習してたんだよねー!」
久しぶりのセッション練習はめちゃくちゃ楽しく、夢中になり過ぎて本気になり、気付いたら朝だったらしい…。
2人をからかいっていたAoi(LIT Jボーカル)は若干引いていた。
今日は夏恒例の音楽フェスでLIVEだ。
凪はLINKSとLIT J2回も出番がある。
(因みに楽屋も2バンドでまとめられている)
「さすが!2人とも音楽バカだねー!(笑)」
「コーヒー飲む?
凪は出番2回もあるんだからとりあえず眠気覚ましなよー(笑)」
サスケとゆーじも加わりそんな話をしていると、LINKSのボーカルみながバタバタとやってきた。
「ごめん、時間ギリだね。」
「お疲れ。
愛樹(あんじゅ)大丈夫?」
彼女は片腕には愛娘、片腕には大きな荷物を抱えている。すぐに荷物を受け取る紅葉。
そのトートバッグが思ったより重くて一瞬よろける紅葉。赤ちゃん連れの外出の大変さを実感する。
「風邪だって。熱はそんなにないんだけど…病院混んでて検査に時間かかったら時間なくなって病児保育預けられなかった。」
愛樹は元気そうに歩き回りニコニコしている。
「大変だね。
出番30分くらいだし、LINKSの時はうち(LIT J)のメンバーで見てるよ。
あ、Ryuも出番終わったら来てもらおう。
うん、なんとかなるよ。」
LIT Jのリーダー、マツはそう伝えると愛樹を見て目を細めた。
「ありがと…、助かる。
凪、愛樹のごはんあげといてもらっていい?
あんま食べないかもだけど…あ、紅葉!
そこのバッグに入ってるから…宜しく。」
「了解ー。
こっちいいから。
お前着替えとメイク行って来いよ。」
「あ、みなちゃん、おはよう。
あんちゃん大丈夫?
えっと今日の段取りだけど…」
「誠ちゃんお待たせ!
…うん、メイクしながら聞く。」
愛娘に一度視線を向けたみなは誠一と打ち合わせに楽屋を出ていった。
LINKSはリーダーの光輝がイベント全体の調整で多忙なので、相棒の誠一がフォローに入っている。
一方、楽屋は小さなアイドルの登場に盛り上がっていた。
「姫ー!来たのかー!
うわっ、おっきくなったなぁー!」
「やっぱママ似の美人ちゃんだねー!
おじさんが何でも買ってあげるよ?
だから将来お友達紹介してね?(笑)
え、何がいい?何欲しい?」
「"CHANELのバッグー!"」
「こらこら、サスケもゆーじも遊ばない(苦笑)
パパ(光輝)にバレたら大変だよ(苦笑)」
「マツ面倒みなよー。
いい練習になるんじゃん?」
「そーだよ、もうすぐパパだもんねー?
あれ?男の子、女の子どっちだっけ?」
「いや、嫁さんが教えてくれなくてさ(苦笑)まぁ健康ならどっちでもいいんだけどね。」
第一子を授かったマツは愛樹と目線を合わせると優しく微笑んだ。
「あんちゃんー!ごはん食べるー?」
「んっ!あむー!
もぉー!」
「はいはい、こっちで食べようね。
あ…、凪くんマグある?」
「……あった。
おいで、愛樹。」
「なにぃー!」
「"凪"って言ってるんだよ。
僕は紅葉の"もー"(笑)」
「可愛っ!」
「なんて癒し!
えー、いいなぁ…。
俺もこんな可愛い娘が欲しい…。
ねぇ、愛樹ちゃん!
"サスケ"は?」
「……?」
ペチっ!
と可愛いビンタをされたサスケ。
もちろん愛樹はそんなつもりはない。
「ガーン…!
気の強いとこもママ似なんですね…(苦笑)」
「食べてんのにうるさいよな、愛樹ー。」
凪はそう呟くと愛樹の小さな口にスプーンを運んだ。
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